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ゴブリンキラー

「ギョムッ……。」


声を上げようとしたゴブリンの口を塞ぎ、首を掻き切る。


その体がビクッと跳ねかけ、すぐに動かなくなる。


俺はその死体をまさぐり、何も持っていないことを確認すると、素早くその場から立ち去る。



「ふぅ、今日の稼ぎはこれだけか。」


俺は新たに拠点とした洞穴に戻ると、革袋の中身を床にぶちまけ、検分する。


「おっ、これは思わぬ拾い物だな。」


俺は今回の稼ぎに満足する。


革袋の中から出てきたのは、相も変わらず、光モノのガラクタばかりだったが、俺が注目したのはその中身ではない。出てきた量だ。


床に散らばったガラクタは、どう見ても、今手にしている革袋の容量を超えている。


特に、この壊れた盾なんかは、一見して革袋に入らない大きさがある。


つまり、この革袋自体が、多数の物を入れることができるマジックアイテムってことだ。


「多分、冒険者の持ち物を奪ったのだろうけど、ゴブリンごときが持つには過ぎたシロモノだよ。」


俺はそうつぶやくと、マジックアイテムの方の革袋に、俺のなけなしの持ち物を詰め替えていく。


これさえあれば、拠点を捨てて移動するのも楽になる。


拠点を利用している理由の一つに確保した食料の保管というものがあるからだ。


いくら何でも、食材を常に抱えて移動するのは大変だから、決めた場所に保管して、食事の際はそこに戻るほうが効率がいい。


その代わり、活動範囲が、その拠点を中心にせざるを得なくなるというデメリットも抱えているが。



ゴブリンに復讐を誓ったあの日から、大体一か月が過ぎようとしていた。


拠点を定めて行動するようになって、食料問題は何とかなったが、上記の理由により、遠くへの散策がむつかしくなり、いまだに人里への道は見つかっていない。その代わり、ゴブリンを倒す腕はそれなりに上がり、現在までで40匹ぐらいのゴブリンを屠っている。


まぁ、こちらに被害がなく倒せるようになったのはごく最近で、最初のころは、1匹倒すのに手間取り、応援を呼ばれて、返り討ち、というのもよくあった。すでに10回以上死んでいるのではないだろうか?


殺されるたびに折れそうになる心を、ギリギリのところで支えたのは、あの女性の無残な死にざまだった。


あの女性は俺のハーレム1号になるはずだったんだ。ゴブリンのせいで……俺に力がないせいで……。

そう思う度に怒りが沸き上がり、ゴブリンへの憎しみの炎が燃え上がる。


しかし、何度も殺されたおかげで、死なない立ち回り、というのを覚えることができた。


また、何度も死んだおかげで、この俺の能力についても、少し理解が深まった。


まず、これは能力に関係あるかどうかわからないが、状態異常……例えば毒などで死んだ場合、その異常に対しての耐性が付くらしい。


毒を身体に慣らすためにあえて毒物を取り入れて耐性をつける、ということもあるらしいので、俺の能力とは関係ないかもしれないが、致死量の毒を受けて耐性をつけることができるのは、やはり生き返れる、ということが大きいかもしれない。


そしてこれは状態異常に限らず、物理攻撃などにも適応されるっぽい。


ゴブリンとの戦いで、俺が死ぬのは、大抵が攻撃を受けきれなくなって出来た切り傷が原因なのだが、最近では、同じように切りつけられても、以前よりダメージが少なくなっている気がする。そして何より、傷が浅いので、ゴブリンに切り付けられたことが原因で死ぬことは殆どなくなっている。とはいっても、数の暴力で来られた日には、その限りではないが。


もう一つ、死んでから復活するまでの時間が大体予想できるようになったことと、少しであれば、その時間を調整できるようになった。


死んでから復活するまでの時間は、死ぬ時に受けたダメージ及び、身体の損耗度によって左右されるらしい。


だから、最初のように、肉片になるまで切り刻まれると、復活するまでには、それなりの時間を要するが、ある程度の耐性を得た今では、ぶっちゃけ、切り殺されたぐらいであれば、1時間もかからずに復活が可能だ。


そして、身体の復活前に意識のほうが覚醒するため、復活する条件が整っていれば、覚醒した意識が、復活と念じるだけで即蘇生可能になる。


つまり、ある程度であれば、意識が覚醒し、肉体は死んだまま、周りの状況を確認することができるということだ。


もちろん、死体から離れることができるわけじゃないので、死体のある周辺のみに限定されるが、蘇生時に回りが安全かどうかが分かるのは、結構なメリットがある。


また、使い方次第では相手の虚を突くことも出来、実際、俺を殺して安心しきったゴブリンが、油断して背を向けている隙に、復活、刺殺というコンボで倒したことだってある。


そんなことができるのも、何度も殺され蘇生をすることを繰り返すことができたからだ。やっぱり経験って大事だよね。


そんなことを考えていると、ふいに、近づいてくる気配を感じる……この気配は、もはや馴染みとなったゴブリンのものだ。


俺はそっと気配を消して、近くの樹木の陰に潜みながら様子を窺う。


敵はどうやら三匹のようだ。

 

1匹づつを確実に仕留めるために、俺は気配を殺したまま、ゴブリンの動きを注視する。


他の2匹から遅れがちの、ゴブリン委狙いを定め、背後にそっと忍び寄る。


そして、声を上げられないように素早く口を塞ぎ、その喉をナイフで切り裂く。


ナイフには毒が塗ってあるので、万が一、その場から逃げられても、すぐに毒が回り死に至る、というわけだ。


まだ正面切って戦うだけの力はないので、こうして1匹づつ確実に仕留めていく。相手が三匹であればなんとかなるとは思うが、近くにほかの群れがいないとは限らないのだ。


大体、奴らは数の暴力で攻めてくるのだから、数の上で劣勢な俺が奇襲をかけるのを、卑怯とか言われる筋合いもない。


しばらくしてゴブリンの1匹が戻ってくる。大方、先度々殺したゴブリンを探しに来たのだろう。


俺はそのゴブリンをやり過ごすと、先に行っているはずのゴブリンを追いかける。


探しに行った相方を待っているのか、ぼーっとしている奴の背後に回り込み、後ろの首から喉へと小剣を突き刺す。


倒れたゴブリンをそのままに、その場に身を潜めてしばらく待つと、慌てた様子のゴブリンが戻ってくる。


殺されたゴブリンを見つけてパニックになったのだろう。「ぎゃぎゃっ」とわめいているが、当然何を言っているかわからない。多分、殺されているとか、逃げるぞとか言っているのだろうか?


そして、相棒の姿が見えずにきょろきょろと辺りを見回すゴブリン。


すぐに、足元に倒れている変わり果てた相棒の姿を見て呆然となる。


そんな無防備なスキを見逃してやる理由もなく、俺はそのまま忍び寄ると、その首を掻き切ってやった。


こんな感じで、ゴブリンどもを見つけ次第惨殺。群れで行動している場合は、はぐれたものから仕留める、を繰り返して、確実にその数を減らしていっているわけだが、おかげで、もう一つの目的だった「ゴブリンが人里へ向かうのを確認する」ができなくなっているのは皮肉なものである。



そんなことを繰り返しつつ、ゴブリンそのものの数が減ってきたのか、中々ゴブリンと遭遇しなくなったある日のこと、俺は大きな転機を迎える。


久しぶりに遭遇した、ゴブリン。その数5匹。


そいつらが女の子を取り囲んで、いまにも襲い掛かろうとしていたのだった。






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