ハーレム王、魔族領へ行く1
モフモフ……モフモフ……。
……これはたまらん。
柔らかな毛並みをモフり続ける俺とクリム。
成すがままにモフられ、真っ赤になりながら身悶えする獣人の女の子たち。
ここは天国かっ!
「……そろそろいい加減にしたら?」
そんな俺達を呆れた目で見つめるアンジェとカミーラ。
「あら、御姉様、嫉妬ですか?ヤキモチ焼くぐらいなら、御姉様も交わればよろしいんですのよ?ほら、予備はまだありますし。」
そう言ってケモミミセットを差し出す少女。
俺の腕に抱えられ、尻尾をモフられている彼女の名は「ハルナ」鬼人族の姫巫女だ。
彼女は一応俺の婚約者、という事になっている。女神の呪いが解けたら正妻として迎える約束になっていて、それを条件に、鬼人族、オーガ族は俺に協力をしてくれている。
実は、以前にハルナに迫られたことがある。女神の呪いなんて気にしないから今すぐ妻にしてくれ、と。
いくら説明しても理解してくれないので、俺は実際に体験したほうが早いだろうと、彼女と事に及んだ。
そして、十分睦あい、彼女も蕩け切って、いざ本番という段階になって、それは起きた。
ゴブリン族の襲撃だ。ゴブリン族如き、オーガ族の前には塵芥も同然とハルナは最初笑っていたものの、その数数万と聞いて顔を青ざめさせる。
それからは、とにかくゴブリン族を薙ぎ払う作業の連続であり、そこで一番目立つ活躍をしたのは、実は俺だったりする。
というか、ハルナと事に及ぶ前、鬼人族に伝わる秘薬、というものを飲まされていたのだ。要は精力剤で、以前カミーラに飲まされたものとは成分が違うらしく、我を忘れることは無かったが、とにかく収まりがつかなかった。
だから俺は八つ当たり君にゴブリン共を屠り続け、気付けば「凶暴化」という新しい能力を手に入れていた。
そして、俺の猛りが収まり、ゴブリン共を殲滅した時には、すでに三日が過ぎていた。
その事が有ってから「あんなお預けをされるぐらいなら……」と、正式に娶るのは女神の呪いが解けてから、という事に納得してもらっている。
そんなハルナが、何をやっているのかというと、俺とクリムが獣人の女の子を集めて、モフモフパーティを始めたのを聞いて、自分も参加……モフる側じゃなくモフられる側で……すると言い出し、ハイエルフたちが総力を挙げて作り出した、ケモミミセット(尻尾付き)を装着して潜り込んできたのだ。
ハイエルフの技術の粋を極め作成したものだけに、そのモフり心地は本物と……いや、場合によっては本物以上に俺の琴線を刺激した。
また、ハルナの体つきは、俺が抱きしめるのにちょうどいいサイズという事もあって、正面から抱きしめる。そして、足りない部分をリナとラナが補う事により、俺はこうしてモフモフ天国の真っただ中にいるという訳だ。
「はぁ、誰が嫉妬してるっていうのよ。そうじゃなくて、ビャクレンが戻って来てるわよ。放っておいていいの?」
「ビャクレンが?……ソーマ。お遊びはここまでです。報告をまとめますので、半刻後に執務室へお願いします。」
ハルナの顔が愛玩動物のそれから、しっかりとした指揮官のものへと変わり俺の前から姿を消す。
「ハイハイ、、ソーマも準備する。」
「えー、もっとモフモフ……。」
「そういうのはクリムに任せておいて仕事しなさい。それともこのまま賢者になるの?」
アンジェの言葉に、一瞬それでもいいかも?と思ってしまったが、突き刺さるようなアンジェとカミーラの視線に、俺は抵抗を諦める。
半刻後……。
「で、何か分かったのか?」
しっかりと身だしなみを整えた俺は、目の前のハルナとビャクレンに問いかける。
「ハイ、結論から報告いたしますと、南西の遺跡と北の遺跡の2か所で祭壇らしき存在を確認しております。探索は続けておりますので、主様が到着する頃には祭壇前までの道が開けていると思われます。」
「そうか、じゃざ、すぐ出発しようか……アンジェ、南西と北どっちから行けばいいと思う?」
「南西ね。」
俺の問いかけにアンジェは躊躇することなく答える。
「理由を聞いてもいいか?」
「理由って程でもないんだけどね、南西の方が近い事と、南西に向かえば、このルートを使えるから無駄が省けるわ。逆に北を先にすると、逆ルートからココは通れないから、一度この集落に戻る事になるの。そうしたらこの集落でまた数日潰れるでしょうから、結果として攻略まで倍近い日数がかかると予測されるわ。」
「成程、俺の行動迄先読みした結果、という訳か。……よし、南西から回る。アンジェはリズと共に行程のスケジュールを、カミーラとハルナは旅の準備、ビャクレンは引き続き攻略隊との連絡を頼む。
「クリムはどうするの?」
「あいつだけ天国に置いとくわけにはいかん。俺と一緒にハムの村に行ってくる。遺跡への出発は明日の朝な。」
俺はそう告げて、天国からクリムを引きずり下ろすために、寝室へと向かうのだった。
「ぶぅ……今夜の食事ソーマのおごりだからね。」
「分かったから、早くしてくれ。」
クリムをこちら側に引き戻すのに大分時間を使ってしまった。
クリムの仕掛ける非情な罠を何とか突破して今に至る……俺は頑張った。って言うか、ラナとリナにあの格好であの眼をさせるのは、さすがに卑怯じゃないか。
「ぶぅ……、クリエイトゴーレム。」
クリムがブー垂れながら、魔法を放つと、そこには2頭?の馬?が出来上がり自ら馬車へと向かう。
普通の馬を使わないのは、俺もクリムも御者が出来ない事と、食事や休憩の必要のないゴーレム、しかもクリムの創ったゴーレムであれば、この集落からハムの街まで1刻もあれば着くからだ。
◇
ハムの街……。数年前まで、ここには何もなく、俺達が辿り着いた当初は名もなき小さな村でしかなかったのに、いつの間にかこんな大きな街に。
俺は街に着くと屋敷へと駆け戻り、セレーナを呼び出す。
俺の留守の間、この街の全権はセレーナに預けてある。ちなみに獣人の集落側はハルナが管理している。
俺と共に常に一緒にいるのは、アンジェ、クリム、リズの3人で、カミーラは使い勝手が良すぎて、連絡係として常に飛び回っている。……今度労わってやらないとな。
何故、アンジェとクリムとリズの三人なのか?
当初から一緒にいたという事も大きいが、俺の参謀としてアンジェは手放せないし、同じ理由で用心棒とアしてクリムは傍にいて貰いたい。リズは、俺達に足りない一般常識を補ってくれる役割もあるが、それ以上に、置いていくとあの護衛三人衆が何を企むか分からないので、下手に放置できないというのが大きい。
だから必然と、長い間ハイエルフのリーダーをしていて、統率力もあるセレーナに俺の代行を任せることが多くなる。ハルナも、セレーナと同じ理由だが、彼女は、魔族領側に詳しいので、必然と、魔族領関連はハルナ、人間領関連はセレーナという住みわけが出来ていた。
閑話休題
「ソーマ様、お早いお帰りですね。何かありましたか?」
セレーナが驚いたように駆けつけてくる。
俺達が出発したのは三日前の事だから、セレーナが驚くのも無理はないだろう。
「あぁ、魔族領側で祭壇が見つかった。この後詳しい調査に行くことになる。」
「もう見つかったのですか?」
早いですね、とセレーナは言う。
「そうだな、魔族領側には手つかずの遺跡がゴロゴロしているらしい。だからしばらくは遺跡巡り打何打で、魔族領側に長くいることになる。そして、もし、王玉が見つかれば、拠点の中心をそこへ移すことになる。」
「分かりました。では私は、いつでも動けるように、移動の準備、人員の配備、この街を任せる代官の早期育成などをしていればいいですか?」
「話が早くて助かる。後は、俺の長期不在を狙って動き出すバカがいるかもしれないから、警戒レベルを上げるとともに、対処にあたってくれ。」
「分かりました。あと移住希望者が現れた場合、いかが対処いたしましょうか?」
「そうだな……亜人・魔族であれば獣人の集落へ送ってハルナに判断させてくれ。人間族ならば一旦保留にして、俺に連絡。戻り次第面接を行おう。」
「承知いたしました。ではそのように取り計らいます。」
「あ、後、危険が迫るようであれば、セレーナ自身とセレーナが守りたい同胞の安全を第一に考えて行動するんだ。最悪、トンネルに入って入り口を崩落させれば追ってくることは出来ないからな。街の人を守ろうなんて考えなくていい。場合によっては街の人々が犠牲になっている間に逃げることを考えるように。」
「クスッ。ご期待に応えて見せますわ。愛しの旦那さま。」
セレーナはそう言って俺にキスをすると、言われた行動を起こすために離れて行った。
「ホント、ムリしないようにな。」
俺はその消えゆく背中にそう声をかけるのだった。
その後、幾つかの用事を済ませ、クリムと共に、魔族領へと戻る。
セレーナを始めとした、この街に残っているハイエルフたちとサキュバスたちが、俺達を見送ってくれる。
「ソーマ、淋しい?」
トンネルをくぐり、見えなくなったいまでも後ろを気にしている俺を見て、クリムが揶揄ってくる。
「そりゃぁな。なんて言っても俺の嫁たちが数多く残っているからな。」
「そうね、でも大丈夫よ、何かあればマヴロスが助けてくれるから。そう交渉してきたから、安心してね。」
どうやらクリムはクリムで、街の事を考えて行動していたらしい。
「ありがとな。よく出来た嫁を持って、俺は幸せだよ。」
「ウム、感謝するがよい。そして態度に示すがよい。」
おどけて偉そうに言うクリムに口づけをし、それから集落に着くまでの一刻の間、俺達は馬車の中でイチャイチャするのだった。
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