表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/137

女神の祝福 4

「えっと、つまりどうすればいいの?」


今まで大人しくしていたクリムがアンジェに問いかける。


よく見れば、よだれを拭った跡がある……。大人しくしてたんじゃなくて、寝てたんだな。


まぁ難しい話だったから無理もないか、と思いつつ、クリムがだんだんおバカな子になっていくようで少しだけ不安が残る。


見ると、アンジェも、クリムがろくに説明を聞いていなかったことを見て取ったのか、どう説明しようかと思案気な顔をしている。


「えっとね、クリムは黙って私かソーマの言うことに従ってれば問題ないってことよ。」


あ、アンジェも説明を諦めた。……ってか、そんな答えでクリムが納得するのか?


「つまり、難しいことはソーマとアンジェに任せればいい、そういう事ね。」


あ、納得した。


「うんうん、そういう事よ。なんなら、メイドさんたちと遊んできてもいいわよ。私とソーマでもう少し話を詰めておくから。」


「うーん、じゃぁ後任せるね。リズ、いこ?」


余程アンジェの説明に飽きが来てたのか、クリムは反論することもなく、リズを誘って出ていこうとする。


「えっと、私は後学のために、もう少し……。」


「リズ、いくよ?」


「……はぃ・・・・・・。」


リズは残ろうとしていたのだが、再度のクリムの呼びかけに、あえなく白旗を上げて、クリムの後について部屋を出て行った。


俺たちはその姿を見送ると、改めて話を再開する。


「で、具体的にはどう動くのがいいんだ?」


王になるためには、王玉と、支配する土地が必要なのはわかったが、具体的にどうこうとなると、今一つ良い案が浮かばない。


「とにかく王玉を手に入れることが最優先ね。これには三つの方法があるわ。」


「三つか。」


「ソーマの持っているナイトストーンを王玉まで育て上げるか、すでに稼働している王玉を奪うか、手つかずの王玉を探し出すか……。この三つね。」


「なんか、問題だらけって気がするのは、俺の気のせいか?」


「あら、問題がない訳ないじゃない?」


アンジェはにっこりと微笑みながらそう言った。


「まず、ソーマの持つエリアストーン……ナイトストーンを王玉まで進化させる。これが一番手っ取り早く、安全かつ確実な方法ね。」


「でも問題があるんだろ?」


俺がそういうとアンジェは頷くいて言葉をつづける。


「一番の問題は時間ね。エリアストーンを進化させるためには、他の影響を受けない祭壇に設置して魔力を注ぎ続ける必要があるの。半年以内で祭壇を見つけたとして、それから魔力を注いで……いくら規格外のソーマの魔力量でも、4~5年はかかるわね。」


「最短で4年……祭壇を探すことも考えると、ギリギリか。」


「あくまでも間に合う可能性があるというだけで、実際には98%間に合わないわよ。」


「……可能性が0じゃない辺り質がわりぃぜ。」


「ほんとにね。」


アンジェも思わずため息をつく。


これで、確実に間に合わないってことが分かっていれば諦めも付くのだが、なまじ()()()()()()()()()()、というあたりに悪意を感じる。


「ちなみにほかの方法だと?」


「そうね。次に確実なのは、すでにある王玉を奪う事なんだけど……。」


アンジェの歯切れが悪い。何か気になることがあるのだろうか?


「あのね、ソーマ、怒らずに聞いてね。……私ね、さっきリズの親族が生きているってことを告げた時、激しく後悔したのよ。」


「……なんとなく想像がついたけど、理由は?」


「想像がついたのならわかるでしょ?……ソーマのためなら、リズに知らせるべきじゃなかったから、よ。」


……そうだよな。俺のことだけを考えるのであれば、リズに知られない方が色々と都合がいいことは、俺にもわかる……分かってしまった。


俺が王になるのに必要なもの……王玉とそれを設置する祭壇のある土地……。わざわざ時間と手間をかけて探さなくても、それは目の前に転がっていた。


つまり、メルクリアの王玉だ。


マスターを失って休眠している王玉、これに魔力を注いでマスター登録さえしてしまえば、俺はそれで王になれる。


王都にクーデター軍が居座って入るが、王玉の力を得てしまえば、そんなのはどうとでもなるし、そもそも、俺の目的は王になることであって、国を支配したいわけじゃない。


一度王になって、女神の祝福(のろい)を破棄できれば、あとはどうなっても構わないのだ。クーデター軍が望むのであれば、国政を任せたっていいし、それこそ、リズを女王として君臨させてもいい。


王玉を探し出すのに手間が多少かかるだろうが、現実、これが一番確実な方法なのは間違いなかった。


しかし、王位継承者が残っているとなれば話が変わってくる。


王位継承者が生きて、魔力を注いでいるのならば、王玉は休眠していない……つまり、マスター登録ができないということになってしまう。


この場合、俺を王とするためには、現在のマスターになっている王位継承者を探し出し、俺に王位を譲る手続きをさせなければいけないのだが、それがそう簡単にいくとは思えない。


まず、状況的に見て、その王位継承者は、どこかの領都にあるエリアストーンを通じて魔力を王玉へ注いでいる。つまり、その土地の領主は、その王位継承者の存在を知っていて、協力しているということになる。


しかし、この情勢下において、何の見返りもなく協力しているとは考えられない。協力することによって得られるメリットがあるはずだ。そのメリットを捨てて、俺が王になるのを黙ってみている道理はなく、まず確実に邪魔が入るはずだ。


そして、そんな面倒なことをするぐらいであれば、その元凶を取り除いた方が速い……そう考えてしまうのは仕方がないことだろう。


でも、俺としては出来るだけそういう手段はとりたくないし、リズが知った今となっては、たとえ、それが純然たる事故であったとしても、俺たちに対する疑念が残ってしまうことは間違いない。


つまり、リズを失いたくなければ、メルクリアの王玉に手を出すわけにはいかなくなった、ということだ。



「まぁ、今回のことは仕方がない。リズの笑顔が見れただけで良しとするさ。でもそうなると……。」


「残るのは、手つかずの王玉を探し出すこと……ね。」


三つの手段のうち、一番可能性が低いものが残った。


「とはいっても、現実には、王玉を探しながら他の二つの手段も併用するってことになりそうね。」


アンジェの話では、手つかずの王玉が残っている可能性は非常に低い。だから、まず祭壇を探し、俺の持つエリアストーンを設置することを第一優先とする。


その際、運が良ければ、見つけた祭壇に王玉があるかもしれない……可能性はゼロじゃないのだ。


王玉でなくとも、独立したエリアストーンでもあれば、もっと話は早くなる。


独立しているエリアストーンは、場合によっては膨大な魔力をため込んでいる場合もあり、そのようなエリアストーンであれば、マスター登録後、王玉までの進化が速い場合もあるらしい。少なくとも、俺のエリアストーンより、早く進化することは間違いないだろうとのことだった。


「あとは、そうね……小国を襲って国を奪うのもいいし、逆に助けて、平和的に王位を譲渡してもらうのもアリだわ。」


「つまり、魔族領に行け……と、そういうことだな。」


アンジェの言う条件に合う場所は、魔族領……それも、混乱激しい北部に行く以外にあり得なかった。


「そういう事よ。とりあえず、獣人集落にいる魔族たちから情報を集めることから始めましょ。」


こうして、俺の魔族領行きが決まったのだった。

ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ