表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/137

女神の祝福3

「まずね、王様が治める土地には「王玉」と呼ばれる特殊な魔石が存在するの。」


アンジェの話はそんな言葉から始まった。


「王玉にはね、一定のエリアを管理する力が込められているのよ。だけどどこでもいいってわけじゃないの。」


アンジェによると、各国の王宮の地下には太古の祭壇があり、そこには王玉と呼ばれる特別な魔石が祭られているそうだ。


「この王玉には、そのエリア一帯の気象コントロール、魔力障壁、土壌生成、あと、多少であれば地形を変えたりすることも出来るのよ。」


つまり、この魔石の力があれば、水源の位置や作物が育ちやすい土壌、恵みをたたえた森の生成、それに雨や風、暑さや寒さなど、好みに合わせて自在にコントロールすることが出来るってことだ。


「だから、王様のもともとの役割は、この王玉に魔力を注ぐこと。そして現在の王が魔力を注げなくなったら代替わりする。代替わりする次期国王は当然、王玉に注ぐだけの魔力を持っていなければならない。そして、その王が魔力を注げなくなった場合は……。というように考えて決められたのが王位継承権って訳なの。だから次の王は必ずしも直系でなければならないなんてことはないわ。魔力が注げるならだれでもいいのよ。だから王様が継承権を定めたものが次の国王になるの。」


まぁ、そのまま血族で受け継がれていくのは、こんな秘密をおいそれと他に話したくないからだろうなぁ。


「でも、その王玉が支配するエリアっていうのはどれくらいなんだ?」


いくらなんでも無限に広がるってことはないだろう。しかしそうするとエリア外はどうなるんだ?


いくら考えても疑問は尽きず、俺はそのままアンジェの説明を待つことにした。


「王玉の効果範囲は、その質と込められた魔力量にもよるけど、大体これくらいよ。」


アンジェはそういって、机の上に広げた地図に円を描く。


「大きな町が大体3つはいるぐらいか……広いと言えば広いけど、国として考えるなら狭すぎるな。」


「そうね、ここで重要になってくるのが領主の存在ね。王玉にはもう一つ能力があって、それがエリアストーンの生成と、統制・支配することなの。」


「エリアストーンって?」


「うーん、エリアストーンにはね、「ナイトストーン」とか「ジェネラルストーン」といったようにいくつか種類があるんだけど、簡単に言えば王玉の簡易限定版みたいなものなの。その石の格によって差はあるけど、簡単な気候操作や防御壁を張ることが出来るのよ。そして何より大事なのがその役割……王玉の補佐をすること。具体的に言えば、王玉の力を中継、増幅することによってその有効範囲を広げることが出来るの。そうね、もっと具体的に言うなら……。」


アンジェは地図に色違いの円を描き、それぞれの円の中央を濃く塗りつぶす。


「メルクリア王国を例に挙げるとね、王宮がここで、王玉の効果範囲が大体これだけでしょ。で、ココとココとココとココ……この辺りもかな?……これらがエリアストーンを配置した場所とすると、王玉の効果範囲がこんな感じになるのよ。」


アンジェが指し示した場所は、見事に各領地の領都を示しており、それらの円の範囲を見ると、すっぽりとメルクリア王国が入っている。


「待てよ、今メルクリアのこの領地がガイスト王国に、こっちの領地はミストラル帝国に占拠されているだろ?その場合はどうなるんだ?そもそも、メルクリアの王族ってリズ以外いないんじゃないか?でもリズは確か王位継承権はないって言ってたよな?」


俺がリズのに視線を向けると、リズはウンウンと大きく頷く。


「魔力を注ぐべき王がいなくて継承権を持つ者もいない……その場合はどうなるんだ?」


「そんなにいっぺんに言わないで。とりあえず順番に説明するから落ち着いて。」


やや興奮気味だった俺をアンジェが苦笑しながら宥める。


「まず、占領されたエリアストーンの扱いだけど、いくつかのパターンがあるわ。」


アンジェはそういって指をたてる。


「まず一つ目は、そのエリアストーンを破棄して、自国のエリアストーンに置き換える場合ね。この場合は、即座に自国の環境に切り替えることが出来るし、管理者を設定するだけでいいからすごく楽なの。だけど、王玉が新たなエリアストーンを生成しようとするとかなりの魔力が必要になるから、新しく設置する余裕はあまりないのが普通よ。」


通常、何年もかけて、余剰魔力を使ってエリアストーンを生成するらしく、そう、おいそれとは領地を広げることも出来ないのだそうだ。


「二つ目は、既存のエリアストーンを書き換える方法。戦争なんかで領地を奪った場合、こちらの方法を取るのが一般的よ。」


すでにあるエリアストーンの支配設定を初期化して、自国の王玉と繋ぐことによって、既存のエリアストーンをそのまま使用することが出来るらしい。


ただ、この場合、完全に切り替わるまでに数年の時間を要するらしく、その間は、エリアストーンの機能は最低限しか利用できないとのことだった。


「そして3つ目は、そのエリアストーンを領地から取り除いて破棄するの。祭壇から取り除かれたエリアストーンはその機能を失うけど、その土地への加護も即座に消滅するからね。まぁ、よほどの劣悪環境じゃない限り、普通に暮らしていくのには問題ないから占領下の領地では、そういう場合もあるわ。」


祭壇から取り除かれたエリアストーンは、機能を完全に失うそうだが、王玉のそばにおいて魔力を注ぐことで、新たなエリアストーンとして再利用が可能になるらしい。


ただ、再利用可能になるのに2~3年かかるので、あくまでも後日に備えてということになり、あまり重要でない場所以外で、このパターンを取られることはないとのこと。


そして、ガイスト王国とミストラル帝国が、それぞれ奪った領地のエリアストーンをどうしているかまでは、現状ではわからないとのことだった。


「普通に考えれば、自国様に切り替えている途中なんでしょうけどね。」


「まぁ、そうだろうなぁ。」


アンジェの言葉に、俺はもっともだと頷く。


「それから、メルクリアの王玉が今どうなっているかについてだけど、その前に王玉と王の関係について説明するわね。」


アンジェが、そう前置きをしてから話をつづける。


「まず、王が亡くなった、もしくは何らかの理由により魔力を注げなくなった場合、40日の猶予期間があるわ。というより、王玉には最低でも30日ごとに一定量の魔力を注ぐ必要があるのよ。で、前回の魔力供給から30日過ぎても魔力が供給されなかった場合、第一王位継承者に自動的に王位継承が行われるの。と言っても猶予期間があるから、10日の間に元々の王が魔力を供給できればその王位継承は取り消されるわ。逆に、王位継承を受けた第一王位継承者は、その10日の間に魔力を注いだうえで新たに設定しなおす必要があるの。」


「設定?」


「加護をどうするのかとか、新たな王位継承権の序列を決めるとか、そんなところよ。」


「なるほどな。」


「問題なのは、その10日の間に、元の王もしくは第一王位継承者からの魔力供給がなかった場合よ。その場合は10日を過ぎた時点で、王玉は休眠状態に入り、次の王位継承者へ自動的に王位継承が行われ、魔力供給がない限り、5日毎に次の継承者へと切り替わっていくの。休眠状態に入った王玉はその機能を止めて、現状を魔力が続く限り維持してくれるんだけど、設定できる王位継承者は最大5人までだから、最後の継承者からの魔力供給も期限内になければ、王玉はその力を失い、新たなマスターが設定されるまで、機能を回復することはないの。」 


「ってことは、今のメルクリア王国は、王玉が機能を失い加護がない状態ってわけか。」


「そうとも限らないわ。」


俺の言葉をアンジェが否定する。


「どういうことだ?」


「例の領主の領地だけど、今日まで特に大きな変化はなかったでしょ?」


「そういえばそうだな。」


「王玉が力を失えば、当然支配下にあるエリアストーンも力を失うはず。この辺り一帯は王玉の加護が無くなればもっと気温が上がる場所に位置するから、作物とかに影響が出るはずなの。だけどその兆候が一切見られない……ってことは、エリアストーンが正常に機能していることになるわ。」


「……つまり、どういうことだ?」


「王玉は力を失ってない……つまり王位継承権を持つ誰かが生きている。しかも、王宮もしくはどこかの領都にいるってこと。そして状況から考えると、王宮にいる可能性は低いから、残った領地5つのうちのどこかにいるってことになるわね。一応エリアストーンを通じて王玉に魔力供給することも可能だからね。……その場合は機能を維持する最低限のことしかできないけど。」


「お母様か、兄様たちが生きてる……。」


アンジェの言葉を聞いてリズがポロポロと涙を流す。


今の今まで、自分以外の王遺族が生きている可能性はほとんどないと思っていたのだから、無理もないだろう。


俺は、足元に力が入らなくなったリズを支える。


「確か、第一王位継承者は皇太子のアズール王子で、第二位が第二皇子のビルマ王子……だったか?」


「えぇ、そして第三位継承者が王妃様であり、アズール兄様のお母様でもあらせられる、ヒスメリア王妃殿下、第四位がお父様の側室の子で近衛隊長を務める、騎士バラン。そして最後の第五位継承者が、お母様……アメリア妃殿下です。」


以前にも聞いたことがあるメルクリア王家の王位継承者の名前。他にも王の子供はいるにも拘らずこのメンバーなのは少し不思議に思っていたが、アンジェの説明を聞いた今ならわかる。つまりは魔力量の関係なのだろう。


「どうする?各領地を探してみるか?」


俺はリズにそう聞くと、リズはフルフルと首を振る。


「誰かが生きていることが分かっただけで十分です。それに今私が顔を出すと無用なトラブルに巻き込まれかねませんし、そんなことで時間を使うより、ソーマ様の問題を何とかする方が大事です。」


「リズがそれでいいならいいが……。」


俺は躊躇いがちにリズを見るが、その表情からは、絶対に譲らないという固い決意が見て取れる。


「俺の問題ねぇ。王玉のことは理解したけど、つまり、俺はどうすればいいんだ?」


アンジェがせっかく説明してくれたが、それと俺の問題にどういう関係があるのかが今一つ理解できない。


意見を求めようと、周りを見ると、クリムは完全に理解することを放棄して、居眠りをしているし、カミーラは俺と視線が合うと慌てて逸らす。……アレは理解していないって顔だ。


俺は仕方がなく視線をアンジェに戻し訊ねる。


「簡単なことよ。ソーマが王になるには王玉を手に入れてどこかの拠点に設置すればいいの。そしてソーマが王玉に自分を王として設定すれば、その瞬間からそのエリア一帯はソーマの支配下に入る……ソーマ王国の出来上がりよ。」


アンジェはそう言って俺に微笑みかけるのだった。



ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ