発展拡大する村
「ンっ……アッ……。」
俺が手を動かすたびに、小さな声が漏れる。
寝ているはずだが、やはり敏感なところは感じるのだろうか?
俺は起こさないように少女の頭をなでる……やはり触り心地がよい。
すると、足元から黒い毛玉が間に割り込んできて、自分を撫でろ、とすり寄ってくる。
飼い猫のクロだ。
本当はイリーガル何とかっていう魔獣らしいのだが、クロはクロであって、うちの大事な飼い猫であることには変わりがない。
しかも、体長が1mぐらいあるので、抱き枕にしたりモフったりするのに、ちょうどいいサイズだったりする。
そして、俺を挟み込むようにして寝ている二人の少女。名をラナとレナという双子の姉妹だ。
少女の頭には可愛らしい三角お耳が、お尻の付け根からはモフるのに丁度いいしっぽが生えている……つまり、獣人だ。
この少女たちは、あの、俺とクリムが出会うきっかけとなった、獣人奴隷誘拐事件の時の獣人の村出身で、今は俺の身の回りの世話……と言うかぶっちゃけ、愛人というかペットというか、そんな扱いだ。
俺がアンジェ達と結婚してから2年が過ぎたが、俺は未だ童貞のままである。
あの女神の呪いが強力過ぎて、最後まで至れないのである。
最近では、アンジェ達も諦めて、女の子同士仲良くしている……嫁同士仲がいいのは結構なのだが、なんか仲間外れにされているようで、ちょっとじぇらしぃ。
だからこの子たちに対しても、こうして悪戯するだけで、最後まで致してはいない。
この2年、平和ではあったが色々な事が起きた。当然、色々な事が起きれば、村もそのままでいられるはずもなく、かなり様変わりをし、今では、村というより街と言ったほうがいいぐらいの規模まで発展している。
大きく変わった事の一つとして、村の住人が増えた。
まずは、山脈を隔てた向う側にある獣人の集落。こちら側にある人族の村を納めているのが俺だと知って、庇護を求めてきたのだ。
山脈の向こうは魔族の領域、しかも獣人の集落のある北部は、定まった統治者もおらず、半分ほど無法地帯と化している。そのような場所では、如何に力のある獣人と言っても、無事平穏に暮らせるわけもなく、日々、他勢力の侵攻に怯えながら暮らしているのだという。
そこに流れてきた噂。かって、この集落の危機を救ってくれた人族が収める村が山脈の向こう側にある。しかも、あの暗黒龍マヴロスと対等に渡り合い、今では協力関係にあると聞く。だったら、その庇護下に入るのが、獣人たち一族の安寧につながるのではないか?という事だった。
そうと決まれば、獣人達の行動は早かった。使節団が編成され、俺の村へ辿り着くまでに、それからひと月もかからなかったのだ。
「我々の集落を是非とも貴殿の庇護下においていただきたく。」
「いや、庇護下って言われても……ねぇ。」
庇護下に置くのは構わないが、獣人の集落とはお隣同士ではあるが、間に険しい山脈が立ち塞がっている。これでは何かあった場合すぐに動くというのは難しいのではないか?
俺がそう言うと、向こうもそのことは懸念していたらしく、言葉に詰まってしまった。
「だったらトンネル掘ればいいじゃない?あ、お代はネコ耳少女でね。」
俺達の悩みをクリムが一言で解決する。しかもクリム自身が魔法を使って、力技で山脈の真ん中に穴を穿ち掘り進むというサービス付きで。
……そんなにネコ耳少女が欲しいのか……まぁ、俺も欲しいけど。
途中、面白がったマヴロスも参加したため、トンネルは10日程で完成し、この村と獣人の集落はトンネルを使えば1日と掛からずに行き来が可能となった。
さらに言えば、トンネルを掘っている途中にレアメタルの鉱脈が見つかり、その噂をどこからか聞きつけたドワーフたちが獣人の集落に住み着くようになり、現在では獣人達と一緒になって採掘、鍛冶、細工などを行ってくれている。
これによって、村では今までほとんど目にしなかった金属製の道具が行き渡る様になり、俺達の生活レベルも一段上がることになった。
新たに住み着いたのはドワーフたちだけではなかった。
この村に来れば飢えることは無い、と同胞たちに聞いて、各地に散らばっていたハイエルフ族、ヴァンパイア族、サキュバス族が、続々と集まってきて、今ではハイエルフ40人、ヴァンパイア20人、サキュバス35人と、それぞれの種族が元からいた人間族の人数を凌駕していた。
勿論、いい事ばかりではない。
この村で、よそでは見た事のない酒や作物が取れると知った、メルクリアの南方の領主……まぁお隣さんの領主が、兵を集めて攻め込んできたこともあった。
最初は、サキュバスたちの協力で、兵士たちの士気を下げ、穏便にお帰り願ったのだが、それがどうもいけなかったらしい。
兵たちに大きな被害がない事を見ると、領主は再度兵を編成して攻めてくる。
その都度撃退をしているのだが、相手は中々諦めない。いい加減嫌になって、マヴロスに登場してもらった。
結果、その領主は態度を改め、俺達と友好的に付き合っていきたいと申し出てきたので、俺は、様々な条件を付けて、快く応じてやった。
なのに、何故か相手の顔が青ざめていたのが解せなかったけど。
まぁ、そんな感じで近隣の人間族も気軽にこの村に訪ねてくるようになり、また、裏の森や山の中には、ハイポーションや万能薬などに必要な高級素材が取れることもあって、冒険者ギルドが支部を置かせてほしいと言ってきた。
恐ろしい魔獣もいるので、すべては自己責任という事で許可すると、その魔獣目当ての冒険者が一気に増えた。まぁ、倒すことが出来ればかなりの儲けになるし、獲物が見つからなかったり倒せなかったりしても、帰りがけに素材を採集していけば、日当ぐらいは十分に稼げるため、新しい人気スポットになっていた。
まぁ、たまに暇つぶしにマヴロスが現れては冒険者たちを瀕死に追いやるので、余程腕に自信のある者しか山に踏み込むことは無くなったけどな。
加えて、魔族領で行き場を失った者達が、安住の地を求め、噂を聞きつけて獣人の集落を訪れるようになり、気付けば獣人の集落側も住居スペースが広がって大きな街となっていた。
で、現在、獣人の集落側に、獣人族、リザードマンを始めとした竜人族、鬼人族及びオーガ族、ドワーフ族にノッカー族など合わせて200人近くが一つの集落を作っている。
人間族側では、冒険者や商人がそのまま村に住み着くようになったものもいたりして、魔族、亜人、人間合わせて、やはり200人程度の住民がいて、更に冒険者や商人などが多数出入りしている為、村には常時300人程度の人口がいたりする。
流石にこの規模になれば、村というのは烏滸がましいと、周りから言われ、街という事になったのだが、ここで街の名前がないと不便だという問題が持ち上がった。
別に「街」でいいじゃんと言ったがそれは却下されたので、俺はこの街を「ハーレム王の街」と名付けた。もちろん、ハーレム王たる俺が治める街だからだ。
現在、嫁はアンジェ、クリム、リズ、カミーラ、セレーナの5人。それに加えて側室がメイドのフリーシャとミランダ、ハイエルフのアリゼとマミナ。そして村人代表だったアイシャとミルカの6人。さらには愛人・愛玩枠としてハイエルフのローナに、この猫耳獣人の姉妹、リナとラナの他数人がいる。
正直、嫁と側室の差は何となくわかるのだが、側室と愛人の差がよくわからなかったので、アンジェに聞いてみた。
アンジェによると、嫁……いわゆる正妻は当然のごとく、正式な妻としての地位があり、内外問わず、俺の嫁として扱われる。
側室については、対外的には正式な妻とは認められないが、内部的には事実上の妻として、正妻に近い扱われ方をするのだそうだ。
それに対し、愛人というのは、要は俺が気に入って側に置いている女性というだけで、地位も何もない。ただ、俺のお気に入りという事だけあって無下には扱われないとのことだった。
尚、側室や愛人が男児を出産した場合、その時の状況によっては正妻や側室へ格上げされることもあるという。
まぁ、そんな状況ではあるが、何が言いたいかというと、これだけ女性を侍らせているのだから、ハーレム王を名乗ってもいいではないのか?という事だ……童貞だけどね。
因みに、その事をアンジェやクリムに力説したら、何故か街の名前が「ハムの街」になっていた。
俺が理由を聞くと……。
「だって「ハーレム王の街」じゃ、恥ずかしい……じゃなくて、ダサい……でも無くて、長くて面倒でしょ?だから略して「ハムの街」なのよ。」
「ソーマ知らないの?最近では略して短い名前にするのが流行りなんだよ?」
と、アンジェとクリムからそう言われた。何か納得いかないが、まぁ、みんなでそう決めたのなら、それでいいだろう。
かくして、名もなき村からハムの街へと発展した我が街の一日が、喧騒に包まれながら始まるのを、俺はベッドの中で微睡みながら感じていたのだった。
説明回になってしまいました。
次回から新展開にな……る予定です。
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