ハーレム王の夜の生活!?その2 クリム編
「ソーマ、後でね。」
夕食が終わった後、クリムは、俺にそう耳打ちすると、顔が赤くなっているのを隠すように、そそくさと食堂から出て行った。
……そう、今夜はクリムとの初夜なのだ。昨晩は余計な邪魔が入ったせいでアンジェとはお預けのままだったからなぁ。今夜こそ……。
ちなみに、あのワイバーンは、アンジェを始めとしたサキュバスヴァンパイア連合軍によってボコボコにされた。
流石のワイバーンも、魔眼で動きを拘束され、ドレインでマナや生命エネルギーを吸いつくされては、成す術もなくやられるがままで、途中悲痛な叫び声を聞きつけて、慌ててマヴロスが飛んでくるほどだった。
ただ、ワイバーンの助命嘆願もむなしく、怒りに狂ったアンジェを前に、マヴロスはあっさりとワイバーンを見捨てて白旗を上げた。
まぁ、あの状態のアンジェを見たら、俺だって逃げ出すに違いない。
結局、ワイバーンの首は村の入り口でさらし首に、胴体は素材を剝ぎ取られ、肉は保存食へと回された。
しかし同情はしない、俺だって怒っているんだからな。ちなみにマヴロスは、今夜、アンジェ達に尋問という名の酒宴に招待されている。
……まぁ、健闘を祈る。
◇
コンコン。
俺はクリムの部屋のドアを軽くノックする。
「はーい。ソーマ?入っていいわよ。」
中からクリムの声が聞こえる。俺はお言葉に甘えて、ドアを開けて中へと入る。
「いらっしゃーい。」
クリムがベットの脇のサイドテーブルに用意したワイングラスをもって待ち構えていた。
「昨晩も、アンジェがワインを用意していたんだが、何かしきたりみたいなものがあるのか?」
「ぶっぶー。ソーマ女心がわかってないっ!」
いきなりダメ出しをされた……が、一言言わせてもらいたい。
何度も言うが、女心なんてものがわかっていれば、この年まで童貞ってことはないんだよ。
そんな俺の心の叫びを無視してクリムが言う。
「旦那様が来ました、即ベッドイン、じゃムードも何もないじゃない。どうせ朝まで長いんだし、ゆっくりとした時間を過ごしたいのよ。それと、せっかく作ったワインがどんな味か試してみたいじゃない?」
クリムがそういう。後、ワインについては、本音としては村人がみんな早く飲みたくて仕方がないのだが、村長である俺を差し置いて口をつけるわけにはいかず、せっかく結婚という口実があるのだから、まずは村長が奥様方と味わってから村人に解禁、という事になったそうだ。
だから、俺は明日も明後日も、このワインを味わうことになる。……正直なところ、ワインの熟成具合はかろうじてお酒、と言ったところで、飲むにはまだまだ早いと思う。
これは、蒸留酒とか色々なお酒を造って広めた方がいいかもな。
俺はワインに口を付けながら、考えていたことをクリムに相談する。
「んー、私向こうでは未成年だったからお酒飲んだことないんだよね。だから、味がどうのとか言われてもわかんないよ。」
「ま、それもそうか。でも、ここの酒ってリカの実を溶かし込んだものだけだろ?村人たちの反応からすれば、色んなお酒が出来れば、いい特産品になると思うんだよ。」
リカの実というのは、ある一定条件化で育つ『リカの樹木』のうろに溜まった樹液が固まったもので、凝縮されたアルコールの塊みたいなものだ。親指ぐらいの大きさの塊で大樽一杯の水を高濃度のエールに変える。勿論そのままでは濃すぎるので、酒場で出される酒は、その樽から得られるエールは10倍程度薄めたものだ。まぁ、酒場によってはさらに薄めているところもあるらしいが。
そして、このリカの実によって作られるエールだが、リカの実の生育環境によって味に違いが出るが、それでも大きく分類すればエールという1種類のお酒でしかない。
だからこそ、ワインという新たなお酒に、村人たちはあれほど目の色を変えるのだ。
「もぅ……お酒の話なんかどうでもいいよ。それより……きて?」
少し酔っているのか、顔を赤らめたクリムの誘いに応じ、俺はクリムを抱きしめ、そのままベッドに押し倒す。
「アン……。しゅごぃ……。ソーマ……ソーマぁ……。」
俺の指先によって乱れるクリムがとても愛おしい。更にクリムを悦ばせるべく、俺は激しく攻め立てる。
クリムの嬌声が部屋に響き渡る……隣に聞こえやしないかと、一瞬そんな事を考えるが、可愛いいクリムを見たら、そんなことはどうでもよくなった。
もっと悦ばせたい、もっと可愛い声をあげるクリムが見たい……そんな考えが頭の中一杯を占め、攻める手が激しくなる。
俺が覚えているのはそこまでだった……。
◇
チュンチュン……。
……ん、朝か?
小鳥のさえずりで意識が覚醒していく。……そうか、これが噂の「朝チュン」ってやつだな。
しかし……と俺は周りを見る。
朝チュンであれば、そこには可愛いい相手がいるはず。なのに、いる筈の人がいない……そう、俺はクリムのベッドに一人で寝ていた。
「あー、フリーシャ。クリムを知らないか?」
俺はメイドのフリーシャを呼び出してクリムの行方を聞く。
すると、フリーシャは、なぜか顔を赤らめ、顔を背けたまま答える。
「えー、クリム様は、大変お怒りで、今、戦争の準備をしていまして、それを皆が必死になって止めております。」
「戦争?クリムが?」
俺はなんでそんなことになっているのかわからず首を傾げる。
だって、クリムは、昨晩あんなに……あんなに…………あれ?途中から記憶がないぞ?
「フリーシャ、何か知っているのか?」
「……えぇ、その、なんと申し上げましょうか……。」
口ごもるフリーシャから、何とか聞き出したところによると、昨日のワインにある薬剤が仕込まれていたそうだ。
その薬剤は別に体に害はなく、マズいお酒の味をマシにするために調合され、エルフの間では普通に出回っているモノなんだそうだ。
そう、エルフの間では……。
ちなみに、エルフには何の影響も与えない薬剤だが、人間の体質と合わないのか、人間族が口にすると、抗えない睡魔に襲われ、死んだように眠ってしまうという副作用がある。
これは体質が関係するため状態異常と認識されず、睡眠の耐性をもってしても抗うことは出来ないらしい。まぁ、耐性があれば、眠っている時間は多少短くなるらしいので、ないよりはあった方がマシ、という程度だ。
「えっと、つまり、昨日のワインにエルフの薬剤が仕込まれていた、という事だな。」
「そういう事です。そしてそんな薬剤を持っているのは……。」
「エルフしかいない、そう言うわけだな。」
「……はい。」
俺はフリーシャの返事を言効くと館と飛び出す。
クリムはどこだ?と探そうとするが、探すまでもなく、中にはにクリムがいた。
そしてそのクリムを羽交い絞めにして押さえているアンジェ達と、目の前にぐるぐる巻きになって縛られ、転がされているハイエルフのローナ。
「あ、村長さん、助けてくださいよぉ。」
そのローナと目が合うなり、ローナは助けを求めてくる。
「あ、でも、いくら乙女のピンチにさっそうと現れ助けたからと言って、それで惚れるほど安い女じゃないですゴメンナサイ。でもピンチなのは事実なので、早く助けてください、というか助けるべきです。この可愛いローナちゃんを助けることが出来るなんて凄いご褒美ですよ。でも、そのお礼にデートは勘弁してください。そういうのは「ただし、イケメンに限る」ですよ、」
そして、何も言ってないのに、フラれ、ディスられる……最近お決まりのパターンだ。
「ソーマ、止める気?」
俺に気づいたクリムが殺気を交えながら聞いてくる。
……うん、気持ちはわかるんだけど、今は少し押さえてね。
「いや、その前にこいつに一つだけ質問させてくれ。」
俺はそう言ってローナの前にしゃがみ、彼女と視線を合わせながら問いかける。
「お前が仕込んだ薬剤なぁ、人間族にどういう効果があるのか知っているのか?」
「当たり前でしょ?知らずに変な薬仕込んで、万が一のことがあったら大変じゃない。どう?よく眠れたでしょ?知ってるのよ、最近忙しくて寝る暇もないんでしょ?そんな村長に、日頃の感謝の気持ちを込めて、私からの細やかなプレゼントよ。まぁ、村長はイケメンじゃないけど、色々役に立ちそうだし、ここらで恩を売っておくのも悪くないかなって。あ、でも勘違いしないでね。感謝の気持ちはあるけど惚れたわけじゃないんだからね。もう少し、イケメンだったら考えてもいいけど。だからお付き合いは無理ですゴメンナサイ。」
そう捲し立てるローナ。
「つまり、あくまでも感謝の気持ちであって、他意はない、と。」
「そう、そうなのよ。だからこれは冤罪なのよ。早く助けて。」
「もう一つだけ聞かせろ。お前は、昨晩、俺とクリムが、その……なんだ、一緒に寝ることを知っていたのか?」
「当たり前よ。だから二人まとめて、一緒に眠れるように量を調整したのよ。結構微妙な調整が必要で大変だったんだから。」
「よし分かった。」
俺は立ちあがり、ローナだけでなくクリム達にも聞こえるように告げる。
「有罪」と……。
その後、ローナがどうなったのかは知らないが、近々、マヴロスを通じてハイエルフの使節団がこの村にやってくるので、対応をお願いされた。
そのことを伝えに来たマリーナは、いつもの陽気さはなく、ただ蒼褪めて震えていた。
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