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観光と特産品 2

「さて、ワインを作るぞ。」


村の広場には、ほぼ全員と言っていいほどの村の住人が集まっていた。


俺がワインを作るという事が、アイシャとミルカの口からあっという間に広がって、みんな「幻の酒」に興味があるのか、ただ単に飲みたいだけなのか、とにかく、俺の挙動をじっと見ている。……はっきり言って凄くやりにくい。


……今日は適当にごまかして作るのやめようかなぁ。


……よし、やめよう。


「あー、ワインを作ろうと思ったが、よく考えたら、原料のブドウをまだ収穫してなかったよな。あ~残念だけど、また今度だな。」


「ぶどうってアレですよね、少しだけお待ちをっ!」


ミルカが威勢の良い声をあげると村中の人々が葡萄畑へと駆け出していく。


そして、一刻後には、俺の目の前に収穫されたブドウが積み上げられていた。


「これで大丈夫ですよね?」


やりきった感を出してミルカが小さな胸を張る。


「あぁ。これでいい。」


周りの期待に満ちた視線の中、俺はそう答えるしかなかった。


しかし、まだだ。まだ終わらんよ。


「あー、残念だなぁ。折角収穫してもらったのに、樽がないなぁ。」


さも残念そうに言ってみる。


流石に、容れ物がなければ作ることは出来まい。


「あ、樽ならこちらに。」


その俺の思惑を裏切るかのように、アイシャがずらりと並んだ酒樽を指差す。


「お酒を創るなら必要だと思って用意しておきました。」


オワタ……アイシャ、とても出来る子だった。


「じゃぁ、葡萄を樽に詰めて……うん半分ぐらいで。」


俺は半分諦めて、指示を始める。



暫くして全部のブドウが樽に詰込まれる。試作だったのに意外と量があり、ブドウの入った樽は全部で12個。村人みんなが興味津々という様子で次の行程を待っている。


……仕方がないな。


「よし、じゃぁ、女の子、服を脱いで樽の中に入るように。」


これから葡萄踏みをするのだが、誰がむさい男どもが踏んだワインを喜ぶというん男だ。


女子高生の口噛み酒はギリ許容できても、おっさんの口噛み酒はNG……つまりそういう事だ。


「ん?どうした?」


見ると女の子たちが泣きそうな顔でオロオロしている。


「樽の中ってことはやっぱり生贄ですか。」


「ワインの色は血の色……って比喩表現じゃなかったんですね。」


「まさか生贄だなんて……やはり処女(おとめ)じゃないといけないのかしら?」


「やっぱり主様は人間じゃないのかも。こうも容易く生贄を要求するなんて……。」


「……クスン。村の発展のために、私が生贄に。」


「おかぁさん、ごめんなさい。私これから穢されちゃいます……。」


「ソーマ、流石に引くわー。」


……なんか、話がおかしな方に進んでいる。


その間にも、村娘が、一人、また一人と、泣きながら衣服を脱ぎだしている。


「ストォーップっ!お前らなに勘違いしてるんだよっ!俺は、「これから樽の中に入ってブドウを踏むから、汚れてもいいように薄着になれ」と言ったんだ。全部脱がなくてもいい、というか脱ぐな。」


「「「「「「えっ……。」」」」」」


下着に手をかけていた少女たちが真っ赤になり、恥ずかしいのか身体を隠すようにしゃがみ込む。


そんな少女たちに、クリムが作業しやすいミニのワンピースを渡して回る。


ってか、用意してあるなら先にわたせやっ。


「やっぱり、主様はお優しいですわ。」


「私は主様のこと信じておりましたわ。」


「生贄……処女(おとめ)の血が入ったワイン……。」


……ヴァンパイア娘さん達や、全部聞こえてるからね。後、そことそこのキミ、今夜お仕置き決定ね。



「あとは歌を歌いながら、回るんだよね?」


クリムが嬉しそうにそういうが……。


「歌なぞ知らん。適当に踏んでればいいだろ?」


「えーダメだよぉ。ここはやっぱり歌いながら踏んで回らないと。それが様式美ってものだよ。」


「だったらクリム、お前はその歌知ってるのか?」


「私が外国の古い歌なんて知るわけないじゃん?」


……ダメだコイツ。


「歌ならこ奴が知っておるぞ?」


そこに不意に声がかかる。


振り返ると、一人の女の子を引きずっているマヴロスの姿があった。


「相変わらず、突然だな。」


「あぁ、何やらお主が面白いことをやるって聞いたものでな、鷲尾も一つ協力してやろうと、飛んできたのよ。」


「それはいいが……その娘は何だ?」


俺はマヴロスに引きずられている娘に視線を向ける。


「あぁ、こやつはな……。」


「はっ、ここはどこ?」


マヴロスが説明をしようとしたところで少女が起き上がり周りを見回す。


そして俺と目が合うと……。


「ごめんなさい。お付き合いできません。私があまりにも可愛くてセクシーだからって拉致って来たのでしょうけど、そういう人とのおつきあいは考えさせてください。あと、顔がダメです。好みじゃないです。イケメン成分が不足してます。だからゴメンナサイ。お付き合いは勘弁してください。」


俺やマヴロスが何かを言う間もなく、少女が捲くし立てる。


……ってか、俺、初対面でディスられて振られたんだけど?


「黙れっ。うざい。」


マヴロスが少女の後ろ頭をはたく。


「こ奴は、最近巣の周りをウロチョロし始めたエルフだ。奴隷でもなんでもいいからこき使ってやってくれ。一族の者にも話は通してある。」


マヴロスの話によると、この少女は、マヴロスの縄張りの山奥に住むハイエルフの一族の者らしい。


その昔……大体300年ほど前に、ハイエルフが住むところを失って、彷徨い、辿り着いた場所が今の地で、そのころからの長い付き合いらしく、ハイエルフ達はお酒や獲物を、マヴロスは、その地の安全確保や珍しい素材などを分け与えるといった感じで共存していた。


ただ、最近、マヴロスが留守の間にちょろちょろと巣の傍に来る若いハイエルフ……この娘のことだ……が少々うざくなってきたところで、今回の酒造りの話を耳にしたので、ちょうどいいから押し付けてしまえ、と連れてきたらしい。


なお、ワインの作り方は人間族などの間では失伝しているものの、長命種であるハイエルフの間では、しっかりと伝わっているらしいので、この機に色々と聞くがいい、とのことだった。


「……とりあえず、そいつ脱がせろ。」


俺の指示に従って、サキュバスたちがエルフの少女を取り押さえる。


「きゃぁぁ、何するのよっ離して、いやぁぁぁ。初めてはイケメンがいいのぉぉぉぉぉぉ~~~~~。」


泣き叫ぶエルフの衣類を容赦なく脱がせるサキュバスたち。そして……。


「くすん。私穢されちゃった。汚れちゃったよぉ。」


「汚れるのはこれからだ、バカ。」


俺が合図すると、サキュバスたちは作業用のワンピースに着替えさせたエルフ娘を樽の中に放り込む。


「えっ、何?どゆこと?」


「今からブドウ踏みをするんだよ。」


俺が言うと、クリムがその後に続ける。


「エルフちゃんは歌を知ってるんだよね?歌って。」


エルフ娘は、ようやく理解したのか、なるほどなるほど、とつぶやいている。


「私の力が必要ってわけね。でも、ただじゃ働かないわ……よ……。いえ何でもないです。さぁ、みんな私に続くのよっ!」


何かを言いかけたエルフ娘だったが、マヴロスと目が合った途端、急に態度を変え、歌いだした。


他の少女たちも、それに合わせるようにゆっくりと樽の中のブドウを踏みしめながら動き出す。


最初は恐る恐るな動きだったのが、エルフの歌う曲調とその軽やかな動きにつられて、いつしか、みんなの顔に笑顔が生まれ、歌に合わせて踊るような軽やかな動きで樽の中で楽しそうに回っていた。


そんな笑顔を見て、俺は、きっとおいしいワインが出来るということを確信した。……と同時に、すぐに飲めないということを、どう教えたものかと、頭を悩ませるのだった。

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