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観光と特産品 1

「観光……名所……ですか?」


俺の言葉に、クリム以外の皆が首を傾げる。


ここには俺とアンジェ、クリムとリズ、そしてカミーラと言った俺のハーレムメンバーと、メイドのフリーシャとマリーナ、そして村の取りまとめ役をしてもらっている宿屋兼食堂の看板娘のアイシャと村唯一の商店の看板娘のミルカが集まっている。


まぁ、実質このメンバーで色々なことを決めて実行しているので、村の幹部と言って差し支えがない。


メンバーが女の子ばかりなのは、村の男女比率から言っても仕方がない事ではあるが、それでも、村の取りまとめ役というのが、クリムやリズとそう変わらない年頃の娘さんというのはどうかと思う。


俺がそういうと、アンジェは困った顔で、言葉を濁していたので、俺が知らない方がいい何かがあるのだろうと思い、気にしないことにした。


「そう観光名所だ。」


「あの、その観光名所というのはどういうものなんでしょうか?」


リズが皆を代表して聞いてくる。


「観光名所というのはな……。」


俺は観光名所を説明しようとして言葉に詰まる。


普段何気なく使っていたし、当たり前のように存在していたから、いざ説明しようとすると難しいということに思い当たる。


「んっと、まぁ、例えば、珍しい景色だとか、奇麗な風景だとか、面白い遊び場だとか、温泉だとか、そこに行かないと体験できないようなそんな場所のことだ。」


俺はそれでもなんとかそれらしい理屈をつけて説明する。


「はぁ。それでその観光名所とやらがどうしたんですか?」


今度はカミーラが聞いてくる。


「いや、な。今度祭りをやろうって企画が持ち上がってるだろ?祭りともなれば人がたくさん来るじゃないか。だったら、ここの観光名所を紹介して、継続的に訪ねてもらって、お金を落としていってもらおうってわけだ。」


ここに拠点を構え、曲がりなりにも村と呼べるような施設が出来てから一年余り。当初はとにかく暮らしていけるようにすることで精一杯だったが、ある程度落ち着いた今、新たな問題が発生していた。


そう、お金がないのだ。


国に所属しているわけではないので、税金というものは取られない……しいて言えば、マヴロスに献上する酒とヤギが税金みたいなものだ。


今までは、とりあえず、作物を育て、狩りをして、必要な素材を回収して……と暮らしていくのに必要なものを村全体で行い、足りないものは代用品で我慢してきた。


だが、ある程度軌道に乗った今、他の村や町と交流を持ち、交易をしていくべきではないかと考えたのだった。


物流があれば人も流れる、そしてその流れが出来れば、流れてくるのは物や人だけではなく、お金は当然として情報も流れるようになるのだ。


それらの流れが次第に大きくなって、村を発展させていく。これから何不自由なく安心して暮らしていくためには、経済を潤すことが大事なのだ。


しかし、そのためにはまず先立つものが必要になる。


幸いにも、今までは閉鎖された空間であったために、通貨などなくても問題なかったが、これからはそうも言ってられなくなるだろう。


それに何より、この村で取れない金属類や食物などが欲しければ、村の外から買うしかなく、そのためにはやはりお金が必要になる。


ぶっちゃけて言おう。俺は非常に玉子が食べたい……というか玉子かけご飯が食べたいのだ。


この村で酪農を始めているが、乳製品用の牛とヤギだけで精一杯で、養鶏まで手を出すには、人も知識も技術も足り無さ過ぎた。


だからこの地で玉子を食べたいと思ったら、購入するしかないのだが、他の村や町との繋がりが無さ過ぎて、どの村で何が売っているのかさえわからないのが現状なのだ。


コメはないが代わりに麦がある。醤油はないが似たような調味料は存在する。そして玉子があれば、とりあえず玉子かけご飯を食べることが出来るのだ。


さらに言えば、各地から人が来るようになれば、玉子だけでなく、しょうゆやコメなどの情報が手に入る可能性だってある。


だから、俺はこの村を発展させる次の段階として物流を考えている。とはいってもできたばかりのこの村に特産品なんてものはないので、手っ取り早く人を集めるために、観光名所はどうか?ということなのだ。


「えーと村長の言うことは理解できました。ただ……。」


アイシャが、どういえばいいのかと、ミルカと視線を交わす。


「ん?何か問題があるのか?構わないから遠慮せずに言ってくれ。」


「はい、村長のお考えはわかりましたが、この村に人が来ることはないかと。お祭りも、この村内だけのものとして考えていましたし。」


「人が来ない?何でだ?普段ならともかく祭ともなれば大勢の人で賑わうものだろ?」


「それは普通の街での話ですね。そもそも村の規模でのお祭りで外部から人が来ることは少ないですし、何よりここは、龍の狩り場ですから。」


ミルカの話では、村の祭りというものは、収穫祭など、村内で細々とやるのが普通で、しかも内容が内容だけに時期も被るので、他の村から人が訪れるということはあまりなく、行商人が普段より少しだけ贅沢品を多めに運んで来るくらいだとか。


そして何より、この悪名高い『暗黒竜の狩り場』に村があるなんてことは周知されておらず、また知っていたとしても、「その地に足を踏み入れたもの、その命を諦めよ」とまで言われているこの場所に訪れるものが果たしてどれだけ居るのだろうか?とミルカ達は言う。


……うん、観光資源とか特産品とか以前の問題だった。


「でも、まぁ、面白そうだわね。」


しかし、アンジェのその一言で、その場にいた者達が口々に思うところを話し出し、その場が大いに盛り上がった。


俺はそんな話を聞きながら、少し真面目に特産品について考えてみる。


この村の主な産業?は畑と酪農であり、今この地で作っている作物は、小麦、大麦、ジャガ、ビーン、そして試作的に栽培している山葡萄だ。


酪農に関して言えば、牛とヤギを2対3の割合で育てている。


ヤギが多いのはマヴロスへの供物のためだが、こうしてみると、作物では特産品と呼べるものはない。


だとすれば、やはり加工品となるが………。


「やっぱワインかなぁ……。」


「ソーマ様、ワインというのは何でしょう?」


リズが聞いてくる。


「え?俺今声に出してた?」


「はい、しっかりと。」


リズは笑いながらそう答える。


「……まぁいいか。ワインというのはお酒の一種で……。」


「「「「「ワイン作れるんですかっ!」」」」」


俺がリズに説明しようとしたところで、ヴァンパイア娘たちが俺を取り囲む。


「ワイン、くださいっ。」


「幻のワインを主様がっ!」


「私を好きにしていいので、ぜひワインをっ。」


「早く、早く出してぇ。」


「ワイン、ワイン、あぁ、ワイン……。」


ヴァンパイア娘たちが、熱に浮かされた様に口々にわけのわからないことを呟きながら迫ってくる。後、そこの娘さんは、服を脱がないように。


「アンジェ、これは一体……。」


困ったときのアンジェさんである。俺はアンジェに助けを求めたが、そこにカミーラが割って入ってくる。


「主様、本当にワインが作れるのですか?」


ヴァンパイア娘共々期待に満ちた視線を向けてくる。


「あー、取り敢えず作ってみないことには何とも言えないが、たぶんできると思うぞ?」


俺がそういうと、カミーラと、ヴァンパイア娘たちは、喜びのあまり踊り出す始末。


「アンジェ……説明を頼む。」


「説明はいいけど、本当に作れるの?これで出来ませんって言ったら暴動が起きるわよ?」


「そんなこと言われてもなぁ。って言うか、なんでそこまでワインが欲しいんだよ?」


「えっと、ソーマは多分知らないのだとおもぅけど、ワインというのは、はるか太古に存在したという幻のお酒なの。」


「はぁ?……マジか?」


俺は周りを見ると、フリーシャやアイシャたちまでもがウンウンと頷いている。


「……一応確認しておくけど、ワインというのは、葡萄とかから作れる果実酒の一種で間違いないよな?」


「ブドウから作るの?どうやって?」


俺の言葉にアンジェが驚く。


……話をすり合わせてみると。俺の知っているワインで間違いないみたいだが、何分アンジェ達は伝聞でしか知らないので、本当にそれであっているかどうかの確認が取れない。


これで、実は違いました、何ていったらマジで暴動が起きるかもな。


俺はちらりとヴァンパイアたちを見る。


「あぁ、伝説のワインがもうすぐこの手に……。」


「カミーラ様、ワインと言うのは血の色をしていて血よりも芳醇でコクがあるって本当ですか?」


「ワインを飲めば、吸血の必要がないと言いますが、本当のところはどうなんでしょう?」



……ヴァンパイアたちは、すでにワインが飲めることを前提に盛り上がっている。


これはすぐに出来るものじゃない、とは言えない雰囲気だな。


取りあえず、明日、実際にワインを作ろうという事でこの場は収まったのだが、何かトラブルが起きるような気がしてならない。


俺の悪い予感はよく当たるんだよ。






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