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小さな村の……10 襲撃!

「クッ!……クリム、土壁で右側を遮断。左側には風の魔法をっ!」


「うん、アースウォール!……からのぉっ、エア・バーストッ!」


クリムの魔法によって、右側から周り込もうとした敵は、突然現れた土壁によって、動きが阻害され、左側から進攻していた敵は、突然の突風により、バランスを崩す。


その隙を突いて、俺は背後から忍び寄り、相手の鎧の隙間からナイフを突きさす。


また、肌の露出している部分に手を当て、ドレインで生体エネルギーを吸い取る。


共に、すれ違いざまの一瞬での出来事であり、ナイフは深く刺さらず、意識不明になるまで生体エネルギーを吸いとれる訳ではない。


それでも、戦闘を続けるには厳しい状態にはなるので、その場で崩れ落ちた兵士を抱えて味方の陣へ戻る姿がちらほらと見える。


「ソーマぁ。いつまで続けるのぉ?」


「もうお終いだよ。足元に、いくつか適当に土壁を作ったら、そのままB地点まで下がるぞ。」


「了解だよ。」


「アンジェは、カミーラの下に行って伝令を頼む。「ファイナルプラン実行」ってな。伝えたらそのままカミーラの手伝いを頼む。時間は一晩もないからな。」


「了解。落ち合う場所はX地点でOK?」


「OKだ。気を付けてな。」


「それはこっちのセリフだわ。無理しないようにね。」


アンジェはそう言って俺に軽く口づけると飛び立っていった。


「ソーマ、こっちもOKだよ。」


「よし、じゃぁ、引くぞ。」


俺はクリムの手を取って、あらかじめ決めておいた場所まで駆け抜けていった。




「……ふぅ。クリム、大丈夫か?」


「うん、まだ平気。」


「まったく、予想通りにいかないもんだなぁ。」


「作戦に無理があったってことでしょ?」


「いや、そもそも、50人からの兵士を相手にするのが間違いなんだよ。」


俺はそう呟く。


今回の作戦は、とにかく罠を駆使して敵を足止めにする一点に尽きた。


その為に色々用意したのだけど、俺が考えているほど効果を発揮しなかったのは完全に計算外だった。


まず、川の反乱。ダメージはそれほど与えられないだろうけど、進軍を鈍らせる位にはなるだろうと思っていたのだが、実際には思ったほどの勢いがなく、水辺付近に陣を張っていた兵士たちの身体を濡らしただけに終わった。


だから、特に警戒されることもなく、普通に休憩を取り終えた後、そのまま進軍する相手に対し、計画を大幅に変更することを余儀なくされたのだった。


そしてもう一つの誤算は、相手が帝国の兵士だったこと。


メルクリア王国の西側に位置するミストラル帝国。この帝国が、メルクリア王国内部の混乱を機に攻め込もうとしていて、威力偵察を兼ねた先遣隊が、情報を集めながら荒らしまわっているという事だった。


そして帝国は戦争を繰り返して大きくなった国なので、その兵士たちの練度も高い。


だから俺が仕掛けた罠など、いとも容易く見破って回避しながら移動していたため、計算では3~4日程足止め出来るところだったのを、半日しか稼げてないのだ。


結局、相手の被害は重傷者2~3名、軽傷者十数名と言ったところなので、相手の指揮官は、被害は皆無、作戦に支障なし、と判断しているだろう。


これが、この半日、俺とクリムが精一杯相手をした結果だった。


そして、クリムの魔法がなければ、とうにこの場所を突破されていたことも間違いはない。


「戦いは数だよアニキ!」


「いや、その通りなんだけどな。なんでそんな古いネタを知ってる?」


「えー「いつか言ってみたいセリフランキング」のトップテンに入ってるんだよ?」」



「そんなランキングはない!それよりクリム、顔色悪いぞ。」


俺はそう言ってクリムを引き寄せ、横にして脚の上に頭を載せてやる。


別にイチャつきたいわけではない。クリムの顔色が悪いので、少しでも休ませてやりたいだけなのだ。


ただでさえ色白なのに、今は血の気を失って、さらにひどい状態になっている。明らかに魔力の使い過ぎだ。


「んーそこは『顔が悪いぞ』と、ボケるところじゃないかなぁ?」


「黙って寝てろ。それにクリムの顔は最高に可愛い。」


そう答えると、クリムは、顔を真っ赤にして、小さな声で「うぅ~」と唸る。


俺はそんな彼女の額に手を当てて、手のひらから彼女に向けてマナを送り込む。


ドレインの応用だ。まだ慣れていないので、効率も悪く、あまり送ることは出来ないけど、それでも何もしないよりマシだろう。


「まだクリムにはもう一働きしてもらわないと困るからな。今は休んどけ。」


「まだまだ大丈夫だよぉ。それに魔力が切れて倒れたら、ソーマに抱っこしてもらうしぃ。」


「やだよ。重いから。」


「ぶぅ~、重くないモン。ソーマはそゆこと言うからモテないんだゾ。」


「いや、しかしだなぁ……。」


クリムは小柄なので一般平均よりは軽いのだろうが、それでも女の子一人の体重は30〜40kgはあるだろう。


実際にスーパーなどで10kgのお米を3〜4袋持って貰えば、かなりの重量だと言うのが分かってもらえるだろう。


「ぶ~ぶ~ぶ〜!そんなんじゃ、結婚式のときに、バージンロードをお姫様抱っこして歩けないぞ。」


「いや、歩かないから。」


何でそんな公開処刑みたいなことしなきゃならんのだ。


「ぶ〜!ソーマは乙女心がわかってなぁい!」


「ハイハイ、わかってたら29まで童貞じゃなかったよ。とにかく大人しくしとけ。」


俺は自虐ネタでクリムを無理やり黙らせる。冗談抜きでこのあとはクリムの魔法が頼りなのだから。


クリムはその後もブツブツ言っていたが、そのうち、すぅすぅと穏やかな寝息をたてて眠ってしまった。


俺は、クリムを起こさないように気をつけながら、その頭を撫でるのだった。



「兵達の様子はどうだ?」


「ハッ!重傷者を除いて、今すぐでも動ける状態にあります。皆士気はあがっていますのでこのまま進軍するのがいいかと。」


指揮官の質問に、様子を見て戻ってきた副官が答える。


「そうか。では、斥候隊を先行させよ。本隊は半刻の後に移動する。それまでに各自装備の点検、水の補給など準備を怠るな。重傷者はここへ置いていく。警備を兼ねた付き添いを3人選んでおけ。」


「ハッ!」


指令を受けた副官はそのまま踵を返して天幕を出ていく。


「フム……実際の所どう見る?」


指揮官は隣りにいる参謀に声をかける。


「進軍で問題はないでしょう。あがっている士気をわざわざ下げる必要はないですしね。それより敵の正体ですが……。」


「何かわかったのか?」


「いえ、わかったというわけではありませんが、行動から見たところ数はかなり少ないと思われます。多くても3人ほどかと。」


「3人だと!?そのような僅かな敵に我軍が翻弄されているというのか?」


「そのとおりです。そしてその原因はおそらく魔法かと。」


「魔法だと!では敵は魔族だというのか?」


「恐らくは。」


「ヌゥ、なぜ魔族がここにいるのだ。」


今の時代、ごく一部の微弱な魔法を除いて、魔法が使える人間はいない。


代わりに、魔法と似たようなことができる魔導具というものがあるのだが、戦いに使えるような魔導具は、遺跡などから発掘される聖遺物ぐらいしかなく、大抵は王室で厳重に管理されている。帝国でも、ほとんどの聖遺物は王族管理の元、功績のあった将軍など一部のものに貸与される程度だ。


だから、このようなところで使われるというのはまずありえないとすれば、先程までの攻撃は、魔法によるものとなり、魔法を使うということであれば、その術者は魔族だろうと推測されるのだ。


「わかりませんが、このような辺境であることと、人数が少ない事から推測するとすれば、ハグレの魔族の縄張りだったのではないかと。」


「ふむ……。どちらにしても魔族と事を構えるのは厄介だな。今回は仕方が無いが本国にはできるだけ刺激しないような進軍ルートを提出しておけ。後、出来れば生かしたまま捉えるように兵達には申し付けておこう。うまく交渉できれば力になってくれるかも知れぬ。」


ハグレの魔族というのは、何らかの理由によって、魔族領に住めなくなったものが多い。


敵に回すと厄介ではあるが、そういう理由から、利害が一致すれば、心強い味方になってくれるかもしれないのだ。


今回の場合、この森が魔族の縄張りであったのなら、今後もここに住むことを許すかわりに、我軍に都合の良い様に動いてもらうこともできるかもしれない。


その為にも、出来るだけ相手に悪感情を与えないようにしたほうがいいのだが、今後のことを考えると、ある程度こちらの強さを見せつける必要がある。


このあたりの匙加減が難しのだよ、と指揮官は密かにほくそ笑むのだった。



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