小さな村の……4 サキュバスとヴァンパイア
「あらぁ。もう効いて来たの?すごく力が漲ってきてるのがわかる……わ……って…なんなのこれっ!」
今まで餌とばかり思っていた男に、簡単に組み伏せられ、衣類を引きちぎられる。
「い、いやっ、何、やめてっ……。」
叫び抵抗するが、その圧倒的な力の前に成す術もなく、荒々しく、胸元を弄られ、下腹部にまで手が伸びてくる。
「い、いやっ……やめて……。は、初めてなの……こんなのいやぁぁぁぁっ!」
抵抗むなしく、あっさりと貫かれてしまう。
「い、痛いっ……いやっ……いやっ。」
身体を身じろぎさせるが、抑え込まれていては全く抵抗が出来ない。
その絶妙な指使い、舌遣いに、何度も何度も絶頂に達し、その都度身体の中から力が奪われていくのがわかる。
……なんで?何で私の精気が吸い取られていくの?
ハーフヴァンパイアの少女、カミーラはもう何が何だかわからなかった。
そして、自分の中で、相手の男が爆ぜる。
すると、一気に生体エネルギーが自分の中に注ぎ込まれる。
ホッと一息ついたのもつかの間、また責め苦が始まり、何度も何度もイかされてはエネルギーを吸い取られ、彼がイクその度に生命エネルギーが注ぎ込まれる……数回も繰り返せば、もうしばらくは食事をしなくても活動できるぐらいのエネルギーが溜まっていくのは分かるのだが、ちっとも嬉しくない。それどころか、何度も力を奪われ、補充されてを繰り返すので、もうおかしくなりそうだった。
「も、もぅ許して……。」
すでに何度目になるかわからないエネルギーの供給を受けて、カミーラは、ついに心が折れてしまう。この責め苦が終わるのであれば、何をしてもいいと、それこそ、この男の言いなりになろうと、思っていた。
ふっと、身体の上にあった重みが無くなる。
気づけば、男が自分から離れていくのが見えた。
助かった……と思った矢先に、別の女の悲鳴が上がる。
男は自分から離れた後、漢の放つエネルギーに気圧されて動けなくなっていたサキュバスたちを毒牙にかけ始めたのだ。
……いけない……みんなが……。
ヴァンパイアの強靭な再生能力を持つ自分だからこそ、あれだけの責め苦に耐えられたのだ。
普通のサキュバスたちがそんなに持つわけがない。
そう思い、助けに行こうとするが、身体に力が入らず動けそうにもなかった。
その間にも、漢の犠牲になったサキュバスたちが、一人、また一人と倒れていく。
全てのサキュバスたちが動かなくなったところで、漢がまた自分に近づいてくるのがわかり、その身体をぎゅっと縮こませる。
……無理、あんなの無理よ。おかしくなっちゃうっ!
ヴァンパイア由来の再生能力を持つ自分なら死ぬことはないだろう。だけどそれ故に、死ぬことも許されずにあの責め苦を延々と味わうのだ。
「い、いやっ……、許して……。何でも言うこと聞くからっ!お願いだからっ……。た、助けて。助けてよぉ、アンジェェェ……。」
自分で足止めをしておいたくせに、虫のいい話だ、とは思う。だけど、いつでも自分のピンチに駆けつけてくれた親友の名をつい読んでしまうほどに、カミーラは追い詰められていたのだった。
「もう、下手に手を出すからよ。これは貸しだからね。」
カミーラと男の間に立つサキュバスの少女。
「あ、アンジェ。何で……。」
「あんなので、この私を縛れると思ったら大間違いよ。それより、アンタソーマに何したの?」
「あ、うん、体力がないって言うから魔界の精力剤を少々……。」
「それでアレですかぁ……。でも、これなら最後まで出来る?」
「だ、ダメよアンジェ。あいつは精気を吸い取るの。いくらアンジェでも、吸い取る前に吸い尽くされちゃうわよ。」
「マジ?どこまで人間やめてるのよ、ソーマ。」
ケダモノのように動くソーマを見ながらアンジェも覚悟を決める。
「まぁ、とにかくやってみないと収まらないようだし、それに……親友に先を越されたのも癪だしね。」
アンジェはそう呟くと、ソーマの前に立ち塞がり、その唇を奪う。
そのままエナジーを吸い取るが、逆に吸い取られていく感覚に陥る。
……マジ?本当にドレイン能力に目覚めたの?
アンジェは、吸い取られないように吸引力を上げる。
しかし、キスに夢中になるあまり、簡単に組み伏せられ、体中を責められる。
……あぁ、こういう所はいつものソーマなのに。
「あっ、そこ、ダメェ……。」
いつもの弱いところを責められ、つい気が緩み、そこを突かれて一気に攻め立てられる。
「あっ、ダメっ、ダメっ、だめぇぇぇ……。」
そのまま一気に絶頂まで昇りつめ、イクと同時に身体中の力が抜ける。精気を根こそぎ持っていかれた感覚だ。
……これはマズいかも?
「こんな形で、ソーマと初めてを迎えるのは不本意なんだからね。後で責任取ってもらうわよ。」
アンジェは覚悟を決め、ソーマを迎え入れることにする。
荒々しく襲い掛かるソーマ。それを優しく受け止めるアンジェ。
ソーマがアンジェを貫き、痛みをこらえつつ、ソーマから生気を吸い取るアンジェ……今回に限り、遠慮は無用だ。
何度も何度も貫かれ、エネルギーを吸われながらも、その倍以上の勢いでソーマをイかせてエネルギーを吸い取っていく。
これ以上吸い取れないという頃になって、ようやくソーマの瞳に正気の光が戻り始める。
「あ、アンジェ……何……で……。」
ソーマが正気に戻った気がしたがそれを確かめる術はアンジェにはなかった。
「ハァハァハァ……ソーマっ、何してるのかなぁ?」
なぜなら、ソーマの背後にハイライトを失った瞳で見つめているクリムの姿があったからだ。
「浮気はダメって言ったよねぇ?」
クリムがソーマの身体をナイフでグサグサと突き刺す。
しかしソーマの悲鳴も聞こえず、その身体から血が流れることもなかった。
ソーマの身体は、すでにクリムによって凍らされていた。そして、クリムがナイフを振るうたびに、ザクザクとかき氷のように削られていく。
「何でわかんないかなぁ?こんな可愛いクリムちゃんという彼女がいながらぁ。」
ザクザク……ザクザク……。
「ソーマの彼女さんはだぁれ?」
ザクザク……ザクザク……。
「お嫁さんは一人って言ったよねぇ?」
ザクザク……ザクザク……。
「ハーレムだなんて、そんな夢まだ見てるのぉ?」
ザクザク……ザクザク……。
「私だけを見て、私の事だけ考えてっていつも言ってるのにぃ……。何でわかんないかなぁ?」
ザクザク……ザクザク……。
ザクザク……ザクザク……。
「……えっとアンジェ……あれなに?……怖いよぉ。」
ようやく動けるようになったカミーラがアンジェの陰に隠れ、震えながら聞いてくる。
「アレがアンタが敵に回したものの正体よ。ソーマが言うには「ヤンデレ」って言うらしいんだけど。」
「わ、私、ヴァンパイアの子たちに、あの子の足止めお願いしたんだけど……。」
「……アンタバカなの?ヴァンパイアと言えども、今頃どうなってるか……。相対した時のクリムがまともだったことを祈るわ。」
アンジェは、クリムを刺激しないように、そっと立ち上がり、周りで倒れているサキュバスたちの様子を窺う。
皆、力を奪われてはいるものの、命には別条ないみたいだ。
「はぁ……精力剤をそのまま使うのは危険ってことね。何か別の方法を考えなきゃいけないわね。」
アンジェは、サキュバスたちをクリムの目の付かないところまで移動させるように、カミーラに指示をして、後で謝罪に来るように言い含めて開放する。どちらにしても、今の状態では、双方ともに何も出来ないからだ。
そして、カミーラたちを見送ってからクリムへと近づいていく。
クリムは気づかずに、ソーマだった氷像を粉々に切り刻むのに夢中だった。
「あんまり気は進まないんだけど……。『眠れ』!」
アンジェはクリムの肩に手を置き、振り向かせたところで精神操作の力を使う。
普段であれば、高い抵抗力で弾き返されるところなのだが、気がすべてソーマに向けられているため、アッサリとアンジェの術にハマるクリム。
クタッと倒れ込むクリムを抱え、粉々になったソーマの氷像の欠片を拾い集める。
「もぅ、こんなに手間かけさせて。クリムもソーマも、貸しだからねっ。」
アンジェは、誰にともなくそう叫び、想い足を引きずりながら廃村へと帰るのだった。
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