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クーデター 2

「ええぃっ!王族はまだ見つからぬのかっ!」


「ハッ、それが街中迄逃げたところまでは追えたのですが、そこから先が……。」


「いいから、探すんだっ!急げッ!」


「ハッ!」


慌てて駆け出す兵士。


「意外と、あれでも市井の間では人気が高かったからですなぁ、あの王様は。」


「それは、俺だってわかっているさ。だからこそっ、逃げずに後処理をしていただきたかったのに。」


どこか可笑しそうに話す、王の元側近に対し、苦々しげに言う将軍。


「いやいや、そのままいたら殺されるかも知れないでしょうに。自らの死刑執行書にサインをするバカはいないですよ。」


元側近の言葉に、将軍は答えない。それが答えだという事を知り、はぁ、とため息を吐く、元側近。


「まぁ、逃げた王族の事はともかく、あなたがこの国を治めるというのであれば、やっていただくことが山とありますので、お頼み申しますぞ。」


そう言って、元側近は将軍を執務室へと案内する。……この将軍がネをあげませんように、と願いながら……。



「う、うぅ。ハーレムには入りますけど、エッチな事はダメですからねっ!」


俺の膝の上にちょこんと座り、顔を真っ赤にしながらそんな事を言うリズ。


今は国境傍の街から少し離れたところで休憩中だ。


で、何故リズが膝の上に載っているかというと、右側をクリムが、左側をアンジェが陣取っているため、他に場所がない、という理由からだった。


無理に傍に来なくてもいいのに、というと、リズは「ハーレムに入ったからには、お傍でご奉仕するのが当たり前です。でもエッチな事はダメですっ!」と言い張って譲らなかったからだ。


「いや、そもそも、ハーレムって言うのは、俺がこういう事をしたいがために……。」


俺は、衣服の上からではあるがリズの胸を軽く揉もうとする……が、その時殺気が放たれる。


右隣と前方からのこれ以上ないくらいの殺気。前方はリズの護衛であるカエラ、そして、右隣は……クリムだ。


「ねぇ、ソーマ。彼女の私を差し置いて浮気?浮気なの?」


「いや、浮気とかそんなんじゃ……。そもそもハーレムというのは……。」


「うっさい、黙れっ!大体ソーマは彼女の私を蔑ろにし過ぎなのっ。この前だって、私を差し置いてリズちゃんとデートしたでしょっ。私だってデートしたことないのに、デートしたことないのにっ!」


「いや、だからね、クリム。俺はハーレムの女性全てを均等に愛して……。」


俺はなんとか言い訳を試みるが、クリムの耳には届いてない。


おかしい……ハーレムって言ったらアレだろ?女の子みんなが俺の事大好きで、俺もみんなが大好きで、イチャイチャし放題。そしてイチャイチャの中には、大人の関係も含まれて……。


それなのに、現実は……。


アンジェ……ハーレム1号。大人の関係に非常に近しいながらも、最後まで至らず。


クリム……ハーレム2号。キスまでしたものの、その関係性は小~中学生レベル。その先は長く果てしない。


リズ……ハーレム3号。手を繋ぐところまで。以下、クリムと同じ。ただ、クーデター軍を破って国を取り戻せばワンチャンありそう……って無理だよ。


俺の、脱童貞への道は、まだまだ遥か先のようだった。



「さて、そろそろ移動しようか。」


「そうね。次の場所で今日は休むんでしょ?」


アンジェの問いかけに俺は頷く。


「じゃぁ、私は、予定通り行ってくるわね。」


「あぁ、今日も頼んだ。」


俺が頷くと、アンジェは空高く飛び上がり、街へ目指して飛んでいった。


「ねぇ、ソーマ様。そろそろ教えてくれてもいいと思うんだけど?」


飛び去るアンジェを見送りながらリズが聞いてくる。


俺達がベスパの街を逃げ出してから、すでに10日が過ぎている。


その間、俺たちはずっと街の中には入らず、こうして、近くの森の中を移動して、人目を避け続けてきたのだ。リズが疑問に思うのも無理はなかった。


「まぁ、次の休憩場所に移動するまで暇だろうからな。馬車の中で教えるよ。」


俺とクリム、リズが馬車に乗り込むと、御者台に護衛騎士のケーラが座り馬車を動かす。


馬車の両脇を囲むように、カエラとキーラが乗る馬が速度を合わせて歩みを進める。……ここ数日で、自然と出来たフォーメーションだった。


「えっと、それでなんだっけ?」


「何で、街に入らず、この辺りをうろうろしてるか?ってことです。」


「あ、それ私も聞きたいな。ソーマの事だから、何か深い考えがるんでしょ?」


クリムが目を輝かせてそう言ってくる。しかし、残念だが、そんな深い考えはない。


「うーん、これはひょっとしたら見当違いの事をしてるかもしれない。それをまず念頭に置いといてくれよ。」


「「うんうん。」」


「俺達が逃げ出すことになった、あの屋敷の襲撃、その原因は何だった?」


「えっと、敵が攻めてきたから?」


「そうだな。じゃぁ、その『敵』ってなんだ?」


「えーっと、えっと……クーデター軍?」


クリムが頭をひねりながらそう言う。


「リズはどう思う?」


「ん~。私もクリムと一緒……だけど、その顔は違うのかな?」


「人の顔色を判断材料にするのは悪くないけどな。今回の判断は正しいかな。そもそも、クーデター軍がベスパの街にいるわけがない。」


「どうして?」


クリムが不思議そうに聞いてくる。


「俺達でさえ、噂を聞いた程度だぞ。実際ベスパの街では、その噂ですらほとんど回ってなかった。それなのにクーデター軍があの街にいるって言うのは無理があるだろ?」


元来、噂というのは、街から街を巡る旅商人や吟遊詩人によってもたらされる。中には、貴族の暗部が裏から敢えて噂をバラまくという場合もあるが、どの場合にしても噂より先に軍が辿り着くことはあり得ない。


「じゃぁ、あの敵は?」


「まぁ、貴族の私兵だろう。推測だけど、クーデターによって王族が破れたことを噂で知った貴族が、リズを捕らえてクーデター軍に恩を売ろうと考えたんだろうな。」


「なるほど。じゃぁ、追いかけてきてるのはその貴族の私兵ってこと?」


「そうだ……と言いたいが、実は兵が追ってきているかどうかも怪しいんだよな。」


「「え、どういうこと?」」


「辺境の街にいる貴族だ。リズは飛び込んできた美味しい餌かも知れないが、ベスパという街から得られる利益と天秤にかけるまでもないだろう。ここでリズに無駄に関わるより、クーデター軍に対して何らかの対策を取ることの方が重要と考えるだろうな。」


「じゃぁ、なんで、こんな逃げるような真似を?」


「一つには、リズを捕らえる事が出来ればラッキー、と考えて少数の部隊を動かしている可能性を捨てきれない事。もう一つは、何らかの手段で、ベスパの街にリズがいたという情報を得たクーデター軍が捜索に来ている可能性がある事。とりあえず、この辺りをはっきりさせないまま、街中でリズの姿を見せるのは避けたいってことだ。」


俺の言葉に、クリムとリズは大きく頷く。


「でも、それなら、いつまでこうしているの?」


「それなんだよなぁ。ここからはやってみない事には結果がわからん……まったく厄介なトラブルに巻き込んでくれて……しかもその報酬に手が出せないって……クソ、タダ働き同然じゃないかよ……。」


俺がブツブツ文句を言ってると、リズは困ったような表情をする。


「それで、ソーマの考えは?私は何すればいいの?」


クリムが聞いてくる。


「今回、クリムはリズの護衛かな?と言ってもやる事は殆どないだろうけどな。」


「そなの?」


「あぁ。普通に考えて、追われている者がこの辺境の街まで来た場合、その者はどうすると思う?」


「えっと、国境を抜けて隣国に逃げ込む?」


「そうですね。隣国に入りさえすれば、クーデター軍にしても貴族の私兵にしても手が出せないですわ。そんなことすれば戦争になりますのもの。」


「そういう事だな。そして、そう思わせるために、アンジェが「森を抜けて隣国に行った人を見た」などという噂をさり気なく街で流している。後は兵が引き上げるのを確認するまで、逃げ隠れすればいいってことだ。」


「そうなんだね。あ、でも、本当に国境を越えないのはなぜなの?」


「隣国に入ったら、亡命ってことになるし、今後色々動きに制限されるかも知れないからな。この国に留まるのも、隣国に行くのも、すべてはリズの選択次第。だから、それしか方法がない、という状況じゃなく、どの道も選べる、という状況にしてから、リズには選んでもらいたいんだよ。」


ソーマのその言葉は、リズにとって、先日のデートで自らがソーマに問いかけた質問に対する、一つの回答にも思えたのだった。








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