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クーデター 1

「……報酬は私です。私の身も心もソーマ様に捧げましょう。それでは不服ですか?」


思いもかけなかったリズの言葉に、俺たちは顔を見合わせ、そして同時に言葉を発する。


「「「チェンジで!」」」


「な、なんでっ!、私お姫様っ!お姫様の私のすべてを捧げるって言ってるのよっ!何が不満なのよっ!」


先程迄の取り作ったような喋り方が、一気に崩れて、普段の言葉使いが戻ってくるリズ。隣ではカエラさんが片手で額を押さえている。


「何が不満だってのっ!さぁ、言ってごらんなさいよ!」


バンバンと机を叩きながら猛り狂ったように喚くリズ。


うん、いつものリズに戻ったみたいで何よりだ。



リズとデートをした翌日、俺たちはリズに、この場所……どこかの屋敷の一室に呼ばれた。


そして、顔を合わせたリズに開口一番、こう言われたのだ。


『この私、リーズレット=フォン=メルクリアに力を貸してほしい。私と共にこの国を取り戻す手助けをしてほしい』と。


そして、その報酬として差し出されたのが、冒頭の『身も心も差し出す』というものだったのだが……。


リーズレット=フォン=メルクリア……そう、()()()()()だ。


この国の名と同じ家名を持つ少女……つまりは、そういう事だ。


「不満って言ってもなぁ。誰が好き好んでトラブルに首を突っ込みたがるって言うんだよ?」


「一国の王女を好きにしたいなら、それぐらいのトラブルはご褒美でしょうが。」


「ないないない。」


……いや、それは、ごく一部のヘンタイさんたちの理屈ですから。


「そうですよぉ。ソーマさんは私の彼氏なんですから、横取りはメッ!ですよ。」


クリムが俺の腕を取り、リズに見せつけるようにしながら言う。


「そうね。ソーマのハーレムに入りたいなら、ちゃんと手順を踏んでもらわないとね。取りあえずは奴隷扱いから、かしらね?」


アンジェが、逆サイドの腕を取り、ニヤリと、挑発するように嗤う。


……おぃおぃ、挑発すんなよな。ほら、カエラたちが、腰の剣に手をかけようとしてるじゃないですか。


今にも剣を抜きそうな勢いのカエラたちを、リズが制する。


「色々誤解があるようですし、堅苦しい言葉もやめてお互い本音で話しませんか?」


堅苦しい言葉なんて使ってたっけ?などと思いながらも、俺はその言葉に頷く。


すると、リズは肩の力を抜き、一度軽く目を閉じる。


そして、軽く息を吐いた後、俺の前までやってくるなり捲し立てる。


「何でよぉっ。何でリズのいう事聞いてくれないわけっ?力になってくれるって言ったじゃないっ。私の何が不満なのっ、私の事嫌いなのっ!それとも、おっぱい?おっぱいがないとダメなのっ?私まだ成長期だから期待してもいいんだよっ!」


……堅苦しい言葉って、リズの方の事かよ。



「あー、取りあえず事実確認からしていこうか?」


詰め寄るリズを押し戻して、仕切り直すことにする。


「う……そうですね。」


リズも、一息大きく息を吸って、少し落ち着く。


「まず、噂で流れている、クーデターで王国軍が敗北したって言うのは事実なんだろ?」


「うっ、どうしてそれを……。」


「自分で言ってたじゃないか。『国を取り戻すのを手伝え』って。つまり、国が取られたって事だろ?」


「くぅっ!流石はソーマさん。些細なことから真実を暴き出すその能力!是非とも力を貸していただけませんか?」


「いやいやいや、誰でもわかる事だろうが。とにかく、今現在、リズ達はお尋ね者ってことだ。一緒にいるだけでもマズいのに、力を貸すってなったら俺たちもお尋ね者ってことになるだろうが?そこまでのリスクを冒す必要性もないし、メリットもない。断るだけで、突き出さないだけでも感謝してほしいところだ。」


突き出す、と言ったところで、カエラさんが剣を抜く。


「力づくってか?スマートじゃないな。」


俺が侮蔑に満ちた声でそう呟く。


「カエラ、下がりなさいっ!」


「しかし、姫様っ。」


「下がりなさいと言ってるのが聞こえませんか?これ以上、私に恥をかかせる気ですか?」


「……。」


リズのキツイ言葉を受けて、カエラが剣を仕舞い一歩下がる。


「部下が大変失礼をおかけいたしました。」


リズが俺に対し頭を下げる。


「いや、わかってくれればいいんだが。」


俺はさり気なく、掴んでいたクリムの腕を離す。


さっきのは凄くヤバかった。リズがあそこで止めなければ、クリムの魔力が暴走していたところだ。


アンジェの話では、クリムの魔力は尋常な量ではなく、暴走した時のクリムは初級魔法でも上級並みの破壊力があるという。


こんなところで、上級魔法並みの魔法を使われた日には、大惨事になる事が目に見えている。


「でも、話を戻すけど、反乱が起きたって事は、リズちゃんの御父さんにも非があるんじゃないの?いくら何でも王様に対して反乱を起こそうなんて、余程のことだよね?」


クリムがそういう。口調に棘が有るのは、先程のカエラに対する意趣返しなのだろう。


「お父様は悪くないわ。」


リズはそういうが、王様なんてもんは、何をやってもどこかで恨みを買う商売なんだから、全く悪くないってことはないだろう。


「大体お父様は何もしていないのよ。大臣の悪事が露見した時も、混乱を招かないようにスルーしたし、将軍が手柄を立てた時だって、余計な嫉妬を買わないようにって、やっぱりスルーしてたし……。」


「「「余計悪いわっ!」」」


俺たちの声がハモる。

手柄を立てようが悪事の限りを尽くそうが何もしないって、どんだけ愚鈍なんだよ。


それでは、悪人はやりたい放題じゃねぇか。何といっても何をやっても処罰されないんだし。それに手柄を立ててもスルーされるなら、真面目にやってる奴がバカを見る。そんなんではまともな人材が残るわけがない。


「そうなると、クーデター軍はまともな人物が指揮を執ってるよな……お手上げだな。」


「えっと、何でまともってわかるの?」


クリムが不思議そうに聞いてくる。


「悪事に手を染めている奴らなら、王様がそのままの方が都合いいからさ。何をやっても咎められることもなく、何かあった場合は全て国王に罪をかぶせることが出来る。悪人であればあるほど、クーデターを起こす理由がない。」


「ってことは?」


「クーデターを起こしたのは、本当に国民の為を想う憂国の士ってところだな。」


「うーん、国民の為なら、仕方がないですよねぇ。」


「……えっと、ソーマ様、クリムさん?」


リズが、自分の旗色が悪くなったのを理解したのか、少しオロオロし始める。


「はぁ、そろそろイジワルやめてあげたら?お姫様泣いてるよ?」


「な、泣いてないもんっ!」


アンジェの言葉を強く否定するリズだが、その瞳に思いっきり涙が溜まっている辺り、説得力が全くない。



「まぁ、リズに責任はないからな。とはいうものの……どうしたもんかなぁ。」


個人的にはリズの力になってやりたい。これはクリムもアンジェも同じ気持ちだろう。付き合いは短いけど、それくらいにはリズに対しての好意は持っているから、見捨てるという選択肢は、後味が悪すぎて選べない。


「ソーマ、時間切れ。」


「マジか。」


「えっ、何?」


アンジェの言葉に、俺は頭を抱え、リズやクリムはわけがわからずオロオロしている。


「この場所が、クーデター軍の連中にバレたってこと。多分、屋敷の連中が密告ったんじゃないか?」


「姫様こちらへっ!お前らもっ!」


カエラが部屋の片隅の壁を蹴り破ると、そこに出入り口が現れる。


カエラが先に飛び出し、そのあとをリズを護りながら二人の護衛が後に続く。


「結局巻き込まれた感じ?」


「これって、お姫様の計画通り……ってそれはないか。」


「まぁ、取り敢えずはここを出てからだなぁ。」


俺は隠し口からアンジェとクリムと一緒に外に出て、先に外に出ていたリズ達と合流して街の外を目指すのだった。



「で、なし崩しに一緒にいるけど、結局どうするんだ?」


「一緒に来るなら、それなりの代価をいただくわよ?」


「く、くぅっ……。」


「お尋ね者を庇うわけですから、破格の代価が必要ですよねぇ……それこそ、リズちゃんが身体で払うて言っても足りないんじゃぁ?」


「そうね。大まけにまけて、護衛の3人もセットにして、何とか……それでも足りないかもしれないけど、ね。」


「クッ、くぅっ……。」


「オィオィ、二人とも、そんなに虐めてやるなよ。……とりあえず次の街まで一緒に行って、そこでサヨナラってことでいいだろ?」


今目指してるのは国境沿いの小さな町だ。


ベスパの街も国境沿いという事になっているが、それより、さらに国境に接している場所であり、ベスパからは馬車で1日いった場所にある。


街を出て1刻も移動すれば国境を抜けることが出来るので、そのまま国外に逃亡することも、そこから逃げ回りつつ反撃に備えるのか、そこから先はリズ達の選択次第であって、俺達が口を挟む筋合いじゃない。


「……わ……よ……。」


「ん?何か言ったか?」


「フフン、ソーマ様は声が小さくて聞こえないっておっしゃってるわよ、お・姫・様。」


俺にはよく聞こえなかったが、アンジェには聞こえたらしい。


そして、その言葉は、アンジェのじめっこモードの琴線に触れたのだろう。嬉しそうな声で、意地悪な言葉をリズにかけている。


「ほらほら、どうしたの?ちゃんとハッキリ言ってごらんなさい?」


うーん、完全にいじめっ子モード発動してるなぁ。


「ううっ……。助けてくださいぃ。私を好きにしていいですからぁ。ハーレムに入りますからぁ、助けて、おにぃちゃん。」


瞳をウルウルさせ、両手を握って見上げてくるリズ。


「うぅ、姫様、お労しや……。」


背後では、ハンカチを手に、涙ぐむカエラたち護衛の三人。


……意外と余裕あるんじゃないか?こいつら。



こうして俺のハーレムは3人(+おまけ)になったのだった。


代わりに、メルクリアという国から追われる立場になったけどな。


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