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ハーレム王町へ行く?3

「おぉ、やってるなぁ。」


馬車が襲われていると聞いて、急いで駆けつけた俺が目にしたのは、馬車を取り囲む大勢の男達。そして馬車の入口前に立ち塞がる、一人の女性騎士。


足元には二人の女性騎士と数人の男達が倒れているが、男たちの人数はまだ多く、あの女性騎士が倒れるのは時間の問題だろう。


男達もそれが分かっているのか、散慢な攻撃しかしていない。恐らく体力が尽きるのを待っているのだろう。


「早く助けなきゃ!」


一時はダークサイドに堕ちかけていたクリムだが、女性の危機を目の前にして、本来の正義感が戻ってきたらしい。


「まぁ、待て。ここはとりあえず話し合いから入ろう。」


駆け出そうとするクリムを引き止めて俺は言う。


状況的に見て、男達のほうが悪いと思うのだが、万が一ということもある。


馬車の中にいるのが、悪徳奴隷商で、女性は奴隷で無理矢理戦わされている。そして男達は、奴隷にされた者たちを救いに来た、ということがないわけでもない。


俺がそう考えたのは、男達の中に、いかにも騎士です、といった装備を身に着けているのが居たからだ。


「甘いわね。そんなの両方倒してから考えればいいじゃない。」


「まぁまぁ、取り敢えず俺なら何があっても大丈夫だからさ。」


面白くなさそうに言うアンジェを宥めながら俺は馬車に近づいていく。


アンジェの能力は色々と便利ではあるが、直接的な戦いの場においては、その力を殆発揮出来ないため、俺の指示に黙って従ってくれる。


そしてクリムは何かあったときのために、魔力を練って、詠唱待機しながら、後についてくる。


俺としても、襲っている方が正義だなんて信じているわけじゃない。


ただ、話しかけることによって、奴らの意識が逸れるなら、その隙でクリムの魔法に夜制圧が容易くなるだろうと考えていただけだ。


ハッキリ言えば、俺は数人の男を相手にして勝てる程強くはない。そしてクリムは、魔法が使えると言っても、初級魔法のみ。数で押し寄せられれば分が悪い……もちろん使い方次第ではあるのだが、効果的に使うためには隙が必要なのだ。


だから俺は何気無さを装って彼らに近づいていく。


「えっと、どういう状況?」


「うるせぇ!」


ザシュ!


……………。


……あーうん、完全に読み違えたな。


まさか、いきなり斬りつけられるとは。


「ソーマぁ!……お前ら許さないっ!」


遠くでクリムの声が聞こえ、空から隕石が降り注ぐのが見える………。


それが、俺が覚えている最後の景色だった。



「お前ら許さない!地獄へ堕ちろ!」


クリムが魔力を解き放つ。


………マジ?あれはヤバいでしょうが。


アンジェは慌ててソーマの遺体を回収し、女騎士が護る馬車のそばまで移動した後、馬車を含んだ自分の周りに魔力障壁を貼る。


魔族であれば、誰でも使える魔力障壁だが、その強度は使う魔族の保有する魔力量によって変わる。


エルダーサキュバスである自分の魔力障壁は、中々のモノだと自負していたし、特に最近はソーマのお陰で魔力量にも余裕がある。


………なのにこの威力って……一体あの子なんなの?初級魔法の威力じゃないわよ。


空から降り注ぐ岩が障壁に当たるたび、そこがひび割れるので、慌てて補強する。


やがて、激情が去ったのか、少し疲れた様子のクリムがやってくる。


「アハ、ちょっとやりすぎた?」


「ちょっと……じゃないわね。上級魔法のメテオなんてオーバーキルもいいところよ。」


周りを見ると、男たちはみんな地に伏している。生きているのかはここからでは分からないが、何人かはピクピクしているので、全員死亡ということは無さそうだ。


「メテオ?違うよ。ただの初級魔法の『ストーンバレット』だよ?」


「「嘘だぁっ!!」」


アンジェと、横で一緒に聞いていた女騎士の声が重なり、響き渡るのだった。




……静かになった。もう戦いは終わったのかしら?


争いが終わったとなれば、すぐにでもその入り口から人が現れるはず。そしてそこにいるのはカエラかそれとも……。


リーゼロッテは、短剣を握る手に力を込める。


「姫様……ご無事ですか……。」


「カエラっ!あなたの方が酷いけがしてるくせにっ!」


リーザロッテは、手にした短剣を放り出し手、傷だらけの護衛騎士を支えるために駆け寄る。


「姫様……ダメですよ。護身を手放してはいけないと、あれほど教えたじゃないですか。」


「だから手放してないでしょ!私の一番大事な護身は今この腕の中にいるあなたなのだから。」


「姫様、それは屁理屈というものです。それより、急いでこの場を離れます。いいですね。」


「えぇ、任せるわ。」


何がどうなったのか分かってはいないが、今は、この誰よりも信頼する、護衛であり、側使えであり、幼馴染でもある、この親友に全てを任せることにするリーゼロッテだった。



「そう、そんな事になっているのね。」


移動する馬車の中で、リーゼロッテは、カエラから事のあらましを聞いていた。


襲ってきたのは、盗賊に扮した、王国貴族の手のものだったという事。


護衛についていた男性騎士は、すべて、そいつらの手のものだったという事。


そいつらの話では、王都はすでにクーデターで、反王族派の手に落ちていると思われること。


そして、助けてくれた二人の女性、その正体が……。


「彼女らは、たぶん魔族だと思われます。それもかなり高位の。」


カエラがそう断言するのには理由がある。


まず、クリムと呼ばれたアルビノの少女が使った派手な上級魔法……本人は初級魔法と言い張っていたが、あんな馬鹿げた威力の初級魔法があるわけがない。


それに人間種の中でも、魔法使いと呼ばれるものがごく少数いることはいるが、彼らが使えるのは、いいところ中級魔法迄。しかも、詠唱にかなりの時間がかかり、とてもじゃないが実用的ではない。


だから、あの規模の魔法を軽く扱えるのは、魔族の中でも、高位且つ、魔法に長けた種族に違いない、と。


それから、アンジェと呼ばれていた少女の張った魔力障壁。


馬車全体を包みながらも、クリムの放つ魔法さえを防ぎきるあの強度。


カエラは、自らも身体能力強化と、防御特化の魔法がわずかに使える為、魔力障壁がどういうものかをよく知っている。


だからこそ、あの強度であの範囲を守れる結界が、普通の人間で張れるわけがない事をよく知っているのだ。


「だけど、魔族がなぜ?」


「分かりません。ただの気まぐれか、何か思惑があるのか……。ただ、彼女らは詳しい情報を求めておりますので、この先落ち着ける場所に着いた所で、情報交換を、と申しております。」


「……そう。では、その場に着いたら、まずはお礼を申し上げなくてはなりませんね。」


「……そうですね。後、申し上げに国のですが、私達を助ける際、あちらは一人犠牲を出して居ります故、何かとんでもない条件を突きつけられる可能性もございます。いざとなれば、私がこの身に代えましても御身をお守りいたしますが、覚悟を持って会談に臨まれますように。」


カエラがそう言うと、リーゼロッテは軽く頷く。


「分かっています。でも、お国がそのような状況とあれば、彼女らに力を貸してもらう事も考えなければなりません。その代価にこの身が必要とおれば、私は喜んで捧げることになるでしょう。その時は……邪魔をしないで下さいね。」


リーゼロッテは笑いながらそう言うが、カエラは頷けなかった。


魔族との契約……。


魔族との交流が別たれて幾年……。強力な魔力を持つ魔族は、伝説上の生き物だと人間族の中では思われるようになっていた。


すると当然、様々な物語が派生し広がっていくことになる。


その内の一つに、魔族に力を貸してもらって、望みを叶える、というものがある。


その話のオチの大半は、栄光を極めるも、望みを叶えた後、魔族に代価として、その命を取られるとか、絶望の淵に叩き落されるなど、ろくでもない結果であり、魔族に力を貸してもらうなんてことはロクでもない結果になる、という教訓めいた話なのだが、実際の所は、魔族に借りた力を自分のものだと過信して、やり過ぎたり、自滅した結果だったりする。


魔族の中にも、人間を敵視せず、逆に、サキュバス族のように、共存共栄を望む種族だっているのだから、対等な立場で、条件が合えば力を貸してくれる事はよくある話ではあるが、そう言う事がねじ曲がって伝わった結果『魔族に協力してもらうには生贄が必要』という間違った解釈が人間界の中で一般的に伝わるようになってしまったのだ……とんだ風評被害である。



「どうやら、止まったみたいですね。……姫様、よろしいですか?」


揺れが収まったことで、場所が停車したことを知ったカエラがリーゼロッテを促すと、リーゼロッテは顔を引き締めて頷く。


リーゼロッテの戦いは、馬車を降りてから……今はまだ、始まってもいないのだ。



街に行くというタイトルなのに一向に街に着かないのは何故でしょう?



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