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名もなき村の攻防 その7

「この、この、このっ!」


朱音が金棒を叩きつけている。


その相手は足元に転がっているオークキングだ。


流石にキングだけあって、その体力は並ならぬものがあり、ボコられ続けて30分余り、未だに意識を保っていた。


「グ、ぐぬぅ。我らを倒したぐらいで……。」


「うっさい、黙れっ!」


朱音の金棒が。、何かを言いかけたオークキングを殴りつける。


……えーと、朱音ってもう少しおしとやかな性格だったような気がするんだけど。


たまりにたまった鬱憤を金棒に込めて叩き付けるようにする朱音。


……うん、ここはあまり関わらないようにした方がいいな。


俺は、朱音の気が済むまで、オークキングを殴らせることにした。


まぁ、仮にもキングだから死ぬことはないだろう。


その間に……と、俺は戦場を見回す。


オークたちとの決戦は、意外とあっさり片付いた。


第二防衛ラインで、肉壁のゴブリンたちの数を多く減らせたのも、さることながら、第三防衛ラインに来たオークたちに対する、里の住人たちの戦意が半端なかった。


まさに「鬼人の如く」という言葉がぴったりなほどの戦いぶりであった。


特に朱音の活躍は凄まじく、先陣を切って、敵陣奥深く迄突入し、リーダーのオークキングを滅多打ちにしたのだ。


とはいっても、やはり数の差は大きく、味方の被害も尋常ではなく、とんでもなく酷いものではあった。


今も、クリムと治癒魔法を使える者達が総出で治療にあたっているが、全然終りが見えないと、泣き言を聞かされたばかりだ。


そんな中で、朱音とオークキングとの一騎打ちに邪魔が入らなかったのは、援軍の存在が大きかっただろう。


「なぁ、マスターはん、わてら、結局あんま役に立ってないようやったけど、ホンマええんか?」


「あぁ、今後もよい関係を築いていきたいからな。その為の報酬だと思って遠慮なく持って行ってくれ。」


「さよか。ほな遠慮なくもらっていくで。」


そう言って配下の者達に指示を出すのは『シルバーデビル』の長、ル=サロエだ。


シルバーデビルは、その名の由来になっている銀色の体毛を持つ……猿だ。


しかもただのサルではない。どうしようもないほどのエロ猿だ。


奴らは種族特性として雷系の魔法を使う。


雷の加護で身体を強化し、相手を痺れさせる。


相手が動けなくなったのを確認すると、そのまま文字通り()()()()()して、集団でエロにふけるというとんでもない奴らだ。


やつらはサルだけに、一度始めると終わりというものを知らず、自分の体力が尽きて倒れるまでヤり続けるのだ。


その為かどうかは知らないが、奴らの好みはゴブリンやオーク、オーガといった絶倫系である。

そこにオスメスの区別はなく、ただ倒れるまでやっても元気な相手が好みなんだとか。


俺が奴らと出くわしたのは、ここに集楽を決めたときと同時期で、周りに警戒すべき敵がいないか見回っていたときだった。


ファーストコンタクトは、それはもう、口にするのもおぞましいものではあったが、色々なことを乗り越え、ヤツラと友誼を結ぶことになったのだ。


その際に、オークを蹴散らすのを手伝えば、生き残ったゴブリンやオークは全てくれてやる、と話を持ちかけた所、サロエは凄く乗り気になり、こうして援軍に駆けつけてきてくれたのだ。


俺達としては、ゴブリンやオークにとどめを刺す手間が省ける、シルバーデビル達にとっては、いきの良いゴブリンやオークが多数手に入るという、まさにwin-winな関係となったのだった。


しかし、正直に言って、重傷者が多いものの使者を一人も出さずに済んだのは、シルバーデビルたちの援軍があったからだと言っても過言ではないので、俺にしてみればオークたちなどどれだけでもくれてやろうという気になる。


朱音の気が済んだら、あのオークキングもくれてやる予定だ。


「さて、これでとりあえずは一段落ってことでいいのか?」


俺はアンジェにそう確認しようとした時、周りの空気が変わるのを感じる。


無意識に戦闘態勢を取り、朱音やアンジェ達を背に庇う様に前に出る。


「クックック。まさかキングちゃんがあっさりとやられるとはね。さすがは鬼人族と言ったところかしら?」


前方からものすごく強烈な殺気を放つモノが現れる。


「でも、これを見てもまだ抵抗が出来るのかしら?」


()()()は手にした()()を掲げて見せるが、俺の目はすでにそいつだけを捉えていた。


ズシャッ!


俺はその身体に大鎌を振り下ろす。


「ちょ、ちょっとっ!アンタ人質が見えないのっ!」


俺の大鎌を長い()()で弾き返しながら叫ぶ。


ソイツは、下半身が大蛇のモンスター、ラミアだった。


勿論上半身に何もつけていないのだから、眺め放題だ。……もっとも、激しく動かれると、髪の毛や腕が邪魔になるので、少し大人しくさせないといけないが……。


「人質だぁ?そんなものがどこにいるんだよ?」


「これよこれっ!見えないの?アンタバカなの?」


ラミアが、手にしたものを見せつけてくる。



「!?お、お兄様っ!」


朱音が何やら叫んでいるが、俺は気にしない。


「お前こそバカだろ?男が人質になると思ってるのか?」


俺は尻尾の攻撃を躱し、ラミアの後ろを取る。


そしてその背中に短剣を突き刺しキーワードを唱えた。


振動衝撃(ショック・インパクト)


ラミアはその身体を震わせ、その場に倒れ込む。


「お兄様っ!」


ラミアの呪縛が説かれ倒れ込む鬼人族の男を、朱音が受け止める。


……朱音の知り合いか?


『……アレは、鬼人族の次期長予定だった修羅人様です。』


腰に差した鳴神が、少し困ったような口調でそう言ってくる。


「修羅人って言うと、お前の元カレか?」


『元カレではないですよ。……まぁ、私のマスターに一番近かった人ではありますが。』


「……ふーん、後でお仕置きな。」


『なんでっ!……まさか妬いてます?』


「……うっさい。お仕置きフルコース決定だ。」


『クスクス……はい、お仕置きですね。』


クスクス笑い続ける鳴神を無視して、俺はラミアに視線を向ける。


……うん、デカい。


俺はそのままラミアを拘束して本陣へ運ぶように命令を下してから、泣き叫ぶ朱音の許へ近づいていくのだった。



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