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名もなき村の攻防 その3

「ここが妾の天幕じゃ……人払いの結界がある故安心するがよい。」


あるテントの前に着くと、朱音はそう囁いてから天幕の中へ入っていく。


俺は周りを見回し、目に付くあたりに人がいないのを確認してから、続いて中へと入っていく。


ボンッ!


天幕に入るなり、鳴神は少女の姿に戻り、朱音に飛びつく。


「わーん、朱音ちゃぁぁぁん、無事でよかったよぉぉぉ。」


「ナルちゃんこそっ!大丈夫だった?怖くなかった?うっく……えう……無事に帰って来てくれて嬉しいよぉ。」


泣きながら抱き合う二人。


うんうん、感動的な再開だね。……だけど、放置されて淋しい。


二人は暫く抱き合っていたが、やがて朱音がそっと身を離し、真面目なトーンで、鳴神に訊ねる。


「ナルちゃんが一人って事は兄様はやはり……。」


「ウン、ゴメンね。修羅人の最後は看てないけど、あの様子では……。」


「ううん、兄様は命をかけて使命を果たしたの。大丈夫よ。」


朱音は瞳に浮かぶ涙を拭って鳴神に笑いかける。


「で、そちらの方が……。」


「ウン、私の主様。みんなを救ってくれる確約までは出来なかったけど、きっと助けてくれるよ。」


「……そう、次は私の番……そう言う事ね。」


朱音は俺の前できっちりと正座をし、深々と頭を下げる。


「初めまして。キノ里を治める桜鷲が一女、巫女姫を務める朱音と申します。良しなにお見知りおきを。」


「あ、あぁ。俺はソーマだ。……一つ聞きたいが、朱音たちはオーガ族?鬼人族?」


俺は、朱音の挨拶を受けた後、気になっていたことについて尋ねる。


朱音をはじめ、この集落の人々には額に突起が出ていたのだ。


「……そうですね。そのどちらでもないとも言えますし、どちらでもあるとも言えます。」


朱音は微笑みながらそう答え、説明してくれる。


朱音たちの集落にいるのは、皆、オーガ族もしくは鬼人族の血を引く者たちなのだそうだ。


とは言っても、先祖が鬼人族というだけで、他は人族とは何ら変わりがない。


違いと言えば、鬼の血を引いていることを表す額の角ぐらいのモノである。


後、朱音たち自身はそんな事は気にしたことがないのだが、鳴神による補足によれば、彼らは総じて力が強く丈夫とのことで、細腕に見える朱音でさえも、100㎏ある棍棒を楽々と振り回すのだとか……。



「……純粋な人族でないと助けるに値しませんか?」


朱音が探るような目つきでそう訊ねてくる。


「いや、鬼人族に知り合いがいるから少し驚いただけだ。俺が助けるかどうかを決めるのは、可愛い女の子がいるかどうかだっ!」


「……相変わらずブレないわねぇ。」


「ホント、バカなんだから。」


今まで姿を消していたアンジェとクリムが姿を現して、俺をディすり始める。


「よ、妖精……?」


突如現れたクリム達を見て、目を丸くする朱音。


「あ、びっくりさせてゴメンねぇ。私はクリム。ソーマの嫁2号よ。」


「……私はアンジェ。クリムの言い方からすれば嫁1号ってところかしら?」


二人がなぜ急に姿を現したのか分からないが、たぶん、相手に敵意がない事が分かったのと、こちらの手の内を見せて信用させるためなのだろう。


「嫁一号さんと二号さん……ですか。」


何故か朱音の俺を見る目が冷たくなった気がするが……気の所為だと思っておこう。





「……お話は分かりました。皆を助けるためにこの娘たちと私を所望するという事ですね。」


朱音の両脇に、いつの間にか現れた少女二人。


右に控えている少女は燃えるような赤い髪、左の少女は透き通るような真っ白な髪。それ以外は全くうり二つの二人の少女。


年の頃は大体10~12歳と言ったところだろうか。髪色以外は全く見分けがつかないが、ただ、俺を睨むその目に少しの違いが見受けられる。


赤い髪の少女……焔華は燃えるような憎々しげな瞳で俺を睨み、白い髪の少女……氷華は汚らわしいしい毛虫を見るような、蔑んだ目で見降ろしている。


……だから何、という訳でもないのだが。


少しゾクゾクしながら俺は話しを続ける。


「まぁ、そう言う事だ。ここまで来たのは鳴神に頼まれたからであって、正直助ける義理はない。オーク程度はどうってことは無いが、それでも数は脅威だ。それなりの危険を冒してまで助けるのであれば、それなりのメリットが必要……そう思わないか?」


追ってくるオーク共を退け、今後、キノ里の住人すべてを受け入れることは出来なくもない。


それどころか、アンジェが考えている南下計画には、丁度いいファクターにもなる。だから助けること自体に問題はないのだが、今後の事を考えると、俺を領主として認めてもらい従ってもらう必要がある。


その為に手っ取り早いのは、実質上のトップである巫女姫、朱音を、俺のモノにし、その事実を住民に知らしめることだ。


簡単に「お前らが崇める巫女姫は俺が頂いた。巫女姫の事を思ういなら俺に従え」って事だな。


まぁ、ぶっちゃけてしまえば、目の前の可愛い巫女姫の顔が快楽に歪むのを見るのは楽しみだし、横のロリっ子たちも、イヤイヤと言いながら快楽に落ちていく様を眺めることが出来るかと思うと……じゅるり……。


「……ぶっちゃけないでくださいよぉ。」


鳴神が泣きながら訴えてきた。


「えっ、今の口に出てた?」


「ウン、いつものように本音がでろでろに……。」


「まぁ、ソーマだから仕方がないけど……ドン引きよ?」


アンジェが指さす方を見ると、朱音は鳴神にしがみついているし、焔華と氷華は互いに抱き合って震えている。


「……簡単に言えばね、オークたちに死ぬまで犯され慰み者になるか、ソーマの凌辱されるかどっちかを選べって事。まぁ、人格も何もかも壊されて、オークの肉便器になるよりはソーマの方は100倍はマシだと思うけどね。」


フォローのつもりかもしれないが、言い方っ!


クリムの言葉に憤慨する。……と言うか凌辱なんて人聞きが悪すぎるだろ。俺は可愛い嫁が増えた喜びで少しはしゃぐかもしれないが、基本嫁を可愛がるタイプだぞ?


「ま、まぁ、平和的に、皆の幸せを考えるとだなぁ……。」


「今更取り繕っても無駄ですよ、マスター。」


「うっ……。」


鳴神の冷めた声に、俺は黙り込むしかなかった。




「……分かりました。事を成した暁には、私は潔く貴方様の元へと参りましょう。ですが、条件があります。」


暫くして立ち直った朱音は、居住まいを正し、俺をキッと睨みつけ、条件を提示してくる。


「あの兄様ですら主になることが叶わなかった鳴神様を従えたあなた様です、さぞや腕が立つのでしょう。しかしながら、本当に命運を預けるに適したお方かどうかは、私自身がこの目で確認したく存じます。」


「……えっと、どういうこと?」


俺は訳が分からず、周りを見ると、アンジェがいつもの呆れ声で解説してくれる。


「要は力づくでモノにされたいって事よ?」


「あ、そゆ事。よかろう!実力の差というものを分からせてやる。……そうだな、鳴神の力を使うまでもない。俺はこれで相手してやるよ。」


そう言って取り出すデスサイズ(死神の鎌)。最近、この武器が妙に馴染んでしっくりと来るのだ。


「御神刀の力で買ったと思われても嫌だからな。あ、そっちはそのロリっ子の力を借りてもいいぞ?」


俺は挑発するようにそう言う。


本当は鳴神を使用して、下手にて抜きをされても困るからなのだが、敢えて言わないでおく。見たところ、鳴神と朱音は仲良しみたいだからなぁ。


「……ぶぅ、勝負で手抜きはしませんよぉ……マスターに信じてもらえない……もらえない……。」


何故かいじける鳴神……ひょっとしてまた、本音が漏れてた?



「いいでしょう、後悔しないでくださいよ。」


俺と朱音は天幕を出ると、目の前の広場で互いの獲物を手に対峙する。


……今更だけど、なんでこうなったんだろう?



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