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名もなき村の攻防 その1

「うぅぅ……他のコの情報を教える代わりに私のお願い聞いてくれますかぁ?」


涙ぐみながらそう訴えかけてくる鳴神。


オトナの姿に戻ったクリムと二人がかりで責めているのに……すでにその身体は堕ちきっているというのに、大した精神力だと思う。


「あぁん?そんな我儘が許されると思っているのかぁ?」


俺は、鳴神の弱いところを激しく攻めてみる。


「あ、ぁぅぁ……。でも、……あ、あぁぁ……。これ……だけは……譲れ……ないのですぅ。」


すでに快楽に耐える力は残ってないらしく、責められるがままに身体を反応させつつも、譲れないと言い張る鳴神。


流石に哀れに思ったのか、クリムが助け舟を出す。


「まぁまぁ、ソーマ。ここはナルちゃんの話を聞いてみましょ?」


「むぅ……。クリムがそう言うなら。」


俺は鳴神を責める手を止め、とりあえず話を聞く態勢になる。


「あ、ありがと……う、ございます……。」


息も絶え絶えになりながら礼を述べる鳴神。


俺とクリムは、鳴神にリフレッシュポーションを飲ませ、落ち着くのを待つ。


本来刀である鳴神にポーションが利くのかどうかわからなかったが、様子を見てると確かに効果はあるみたいだった。これも鳴神が人工生物だからなのだろうか?


少し興味がわくが、詳しくはターミナルへ帰ってからでもいいだろうと、その興味を一時的に脇へどける。


「その……ですね、私がご神体として祀られていたことはお話ししたと思いますが……。」


少し回復した鳴神の話をまとめるとこうだった。


この場所から少し南に行ったところに小さな集落がある。


元からそこに存在したわけではなく、世界の崩壊により、次元流に巻き込まれ、気付けばその場所に出現していた、という事らしい。


偶然か必然化は分からないが、その集落の周りは他の場所に比べて瘴気が薄い場所だったこと、そして、その集落の人々がいた世界では、瘴気は身近にあったため、それなりの抵抗力があったことなど、様々な要因が絡んだ結果、結界内ではなくても、集落の人々が生活するには問題は生じなかった。


さらに、鳴神の存在が、集落周りに軽い防護結界を張ることになったのも、集落の人々が安全に暮らしていくのに役立っていた。


突然の次元流に巻き込まれ、世界が一変した後も、細やかではあるが平和な暮らしをしていた集落に、ある日突然災厄が襲い掛かる。


トロールとゴブリンを引き連れたオークたちが集落を襲ったのだ。


集落の人々は、突然の襲撃にもかかわらず勇敢に戦い、一度は撃退することに成功した。


しかし、その犠牲は大きく、集落の主だった戦士たちは命を落とすか、大きなけがを負ってしまい、再度の襲撃には耐えられなくなってしまった。


そこで、集落の代表たちは相談し、集落を捨てて逃げることを決意する。


逃げることに難色を示す者も多かったが、集落の巫女姫の「救いは北に」という言葉と、鳴神を手にしたリーダーに説得されて、集団で疎開を始める。


その途中に再度襲撃をしてきたオークの集団。


集落のリーダーは、住民たちの避難を巫女姫に一任し、自らは鳴神を駆って敵を食い止めるために戦場に降り立つ。


鳴神の力を得たリーダーはとてつもなく強く、オークの群れを一撃のもとに切り捨てていく。


しかし所詮は多勢に無勢。斬られても着られても纏わりついてくるゴブリンたち。


多少の傷では、すぐに再生し、再び襲い掛かってくるトロール。


そんな奴らに囲まれていては、さすがのリーダーも徐々に力を削られていく。


自らの敗北を悟ったリーダーは、鳴神に後を託し、残った力で北へと鳴神を飛ばす。


そして、鳴神を失ったリーダーは、追っ手の脚を留めるため、そこに立ちふさがる。


リーダーの手によって飛ばされた鳴神は、リーダーの最後の頼み……集落の皆を救うために、北への進路を取る……巫女姫の言葉を信じ、皆を助けるために……。


「それで俺達に出会ったと。」


俺の言葉に、鳴神はコクンと頷く。


「じゃぁ、ナルちゃんのお願いっていうのは、その集落の人々を助けるって事でいいの?」


再びコクンと頷く鳴神。


「どうするの?」


クリムが訊ねてくるが、俺はすぐに答えが出せない。


オークが率いるゴブリンとトロールたちの数は数千に及ぶという。


クリムの力を借りたとしても、そう簡単に撃退できるとは思えない。


「戦いは数だよ!」と、昔の偉い人が言っていたが、それはまさしく真理をついている。


いくらクリムが広範囲殲滅魔法を持っているとしても、相手の数が多ければ、殲滅しきる前に数に飲み込まれることもあるのだから。


「私が教えることが出来る仲間はエンちゃんとヒョウちゃんという双子の姉妹です。」


……姉妹!


という事はあれか?男のロマンである、姉妹丼を食することも……。


「更に巫女姫様は、とっても愛らしいお方です。」


巫女姫だと!?巫女さんとお姫様という一粒で二度おいしいといわれる伝説の……。まさか本当に実在するとは……。


「どうです?助けて頂けませんか?」


「……交換条件としては、こっちの取り分が不足しているよな?インテリジェンス・ウェポン二人の情報だけじゃ足りないな。」


「……ではこうしましょう。居場所などの二人の情報は前渡しします。その上で、巫女姫様にお会いしていただき、残りの報酬については巫女姫様と交渉していただく……いかがでしょうか?」


悲痛な面持ちでそう言う鳴神に対し、クリムが口を挟む。


「いいの?そんなことしたらソーマの事だから、インテリちゃん達を優先して集落に向かわないかもしれないよ?」


「その点は大丈夫です。マスターはきっと集落へ向かってくださると信じていますから。」


「……普通なら、ここまで言われたら、後に引けなくなるものだけどねぇ……ソーマはいつも期待を斜め下に裏切るからねぇ……。」


……いいたい放題だな、オイ。

……まぁ、否定できないところが辛いのだが。


「大丈夫です。マスターだからこそ、必ず集落に向かいます。」


鳴神は自信たっぷりにそう告げる。


自分で言うのもなんだが、どうして鳴神はそこまで俺を信じているのだろうか?


鳴神と出会ってからの自分の所業を思い返してみても、罵られるようなことはあっても、信じられる要素はひとつもないというのに……。


「よし、わかった。確認するぞ。鳴神は、二人の姉妹のインテリジェンス・ウェポンの居場所を含めた情報を教える代わりに、俺はこちらに向かっているはずの、落ち延びている集落に合流する。助けるかどうかは巫女姫と話をしてから決める……これでいいか?」


「ハイ構いません。」


「……よし分かった。じゃぁ、まずはインテリジェンス・ウェポンたちの情報を教えてもらおうか。」


鳴神は、小さく頷くと、静かに話しだすのだった。

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