ハーレム王の嫁裁判
「有罪」
開口一番、クリムが有罪の札を掲げる。
「有罪」
「有罪」
「有罪」
続いて、メイリーン、アイリが札を上げる………くぅ、ミューナまでっ。
「決まりね。ソーマは有罪。」
アンジェが面白くなさそうに告げる。
「異議ありっ!」
俺はそんなアンジェに指を突きつける。
「有罪も何も、まだ部屋に入ったばかりだろうがっ!っていうかなんで裁判なんだよっ!」
「………。」
クリム達は無言で、俺の隣で所在無さげにしている少女……アリスを指差す。
因みに傍聴席にあたる場所では、アリスの父親のゲイゼルさん、兄のアベルさん、が心配そうにこちらを伺っている。また、アベルさんの横にいるアベルさんの奥さん4人は、納得したように頷いていた。
というか、何でこんなことになっているんだ?
アンジェ達には事後承諾という形にはなるが、リィズエリアで起きたことの説明と今後のことを話し合うために、リィズエリアの代表であるゲイゼルさんたちを招いただけのはずだった。
なのにリビングに入った途端、部屋は裁判所に早変わりし、俺は有罪を突きつけられたのだ。
因みに部屋が早変わりしたのは、アンジェの能力『フェイク・イリュージョン』によるものらしい。
「いいわ、そこまで言うなら一つ一つ爪弾やらかにしていきましょう。」
アンジェはそう言うとどこからかフロップを取り出す。そこには『リィズエリアの救済』と書かれていた。
「ソレのどこがダメなんだよ?」
「ダメとは言ってないわ。ただ、住民の受け入れのために掛かった費用、現在の生活維持費、今後掛かってくる諸費用などはどうする気かしら?」
「一ついいじゃろうか?」
アンジェの言葉を聞いて、傍聴席にいるゲイゼルさんが発言を求める。
「どうぞ。」
「ウム、此度のこと、皆様には感謝申し上げる。ソーマ殿の尽力が無ければ、今頃儂らは揃って屍を晒し、女供は死ぬより辛い目にあっていたじゃろうて。その対価が必要とあれば儂がなんとしてでも支払おう。」
ゲイゼルさんが、すべての責は自分にあり、自分がすべてを負うと告げる。
「あなたが一生掛かっても払いきれない額になるわよ?払えるとは思えないわ。」
しかしアンジェは冷たく、そう言い放つ。
「う、しかしじゃな……。」
「でも安心していいわよ。ソーマが言ってるわ『グヘヘ、いいお嬢ちゃんがいるじゃねぇか。お嬢ちゃんに一生かけて支払ってもらうぜ。』ってね。」
ゲイゼルさんたちが一斉に俺の方へ視線を向ける。特に奥様方の視線はかなり冷ややかだ。
「ちょっと待て!いつそんな事を言った!風評被害はヤメてくれ。」
「あら、いつも言っていたじゃない?『困っている家族を助けて代価に娘を貰うんだ』って。」
……確かに言ったけど、言ったけどさぁ。
ゲイゼルさんとアベルさんが俺を睨んでくる。
「お父様もお兄様もそんな目でソーマ様を睨まないでください。もとより私はそのつもりでソーマ様と契約を交わし、手付に私の初めてを捧げましたの。ですので代価の心配はありませんわ。」
ここでアリスが特大の爆弾を投下する。本人はフォローのつもりなのかも知れないけど逆効果だからね。っていうか言い方っ!
「有罪ね。」
「有罪だね。」
「有罪ですわ。」
「有罪です。」
「有罪だよ、おにぃちゃん。」
彼女たちの横にさらなる有罪の札が並べられる。
ゲイゼルさんは、ぐぬぬと歯軋りをしているが、これって冤罪だよな。
「冤罪だっ!アリス、いい加減なことを言わないようにっ!」
「でもぉ、私の初めて……。」
「キスしただけだろっ!しかも襲ってきたのはそっちだろうがっ!」
「でもでもぉ、私のはじめてのキスを捧げた事に間違いないですしぃ、責任を取るべきだと思いますぅ。」
ゲイゼルさんが、アベルさんが、アリスの言葉に反応して騒がしくなる。……だから冤罪だというのに。
ドンッ!
「静粛に!」
木槌の叩き降ろされる音のあとにアンジェの言葉が響く。
……っていうか、机にヒビが入ってるんだけど?どれだけの力で叩いたんだよ。
「リィズエリアの件は、正直どうでもいいのです。」
「「どうでもいい…………。」」
バッサリと切り捨てられて、ゲイゼルさんとアベルさんは、ガックリと項垂れて見るも無惨に落ち込んでいる。
「今回一番重要かつ非常に重い罪過についての審判を行います。被告人は何か申し開きはありますか?」
「申し開きと言われても何のことだ?」
「裁判長。被告人は斯様に罪を認めないどころか、惚けて逃れようとしています。コレは叙情酌量の余地なしとして重い刑罰が必要だと思いますっ!」
俺の言葉に、クリムがものすごい勢いで反論をする。
「認めます。」
「をぃ、チョット待てぃ!俺が何したというのだ!」
「まだわからないのですか、それですよ。」
アンジェが冷ややかな目で俺を見ながらアリスを指す。正確にはアリスの左手の薬指の指輪をだ。
「えへへ、ソーマ様に貰っちゃいましたぁ。」
アリスが自慢げにみんなに見せつけるかのように左手を突き出す。
「あれぇ、ひょっとしてぇ、指輪をもらったのアリスだけですかぁ?」
……コラ、煽るな。クリムもアンジェも怖いんだぞ。
しかし、アンジェは黙って木槌を叩く。
「皆さん、判決を。」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
次々と上がっていく有罪の札。
そして最後にアンジェが一際大きく「有罪」と書かれた札を掲げる。
「決まりですね。被告人ソーマは有罪とします。尚刑罰についてはこのあとの嫁会議で決定するものとします。」
「「「「異議なし!」」」」
俺の有罪が決まったところで、部屋が元のリビングへ変わる。
「では嫁会議を開催します。重要参考人にも同行していただきます。拒否権はありません。」
アンジェがそう言うと、メイリーンとアイリがアリスを両脇から抱え込み、一緒に別室へと消えていく。
その時のアリスの助けを求めるような視線を受け止めたものの……スマン。オレには助けてあげられないんだよ。
そして嫁たちが出ていくととたんに静まり返る室内。
「アハハ……お茶のおかわり、どうですか?」
ゲイゼルさんたちは無言でおかわりを受けてくれるが、その憐れみに満ちた眼差しがとても痛かった。
その後、2時間程の後アンジェ達が戻って来たが、どのような話し合いが行われたのかは誰も教えてくれなかった。
ただアリスが「ゴメンナサイ……アリスはいい子になります。……ゴメンナサイ……アリスはお姉様の言うことを聞きます………。」とハイライトの消えた瞳のままずっと呟いていた事から「あぁ、いつものことだな。」と思うのだった。
ターミナルエリアは、今日も平和だった。
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