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ハーレム王とリィズエリア 3

「さて、これからどうするかなぁ。」


このリィズエリアに来て1週間。初日に襲われたというトラブル以外、変わったこともなく、昨日にはランクアップ依頼を達成したことをギルドに報告し、晴れてDランクになったため、慌てて依頼を受ける必要もなくなった。


なので、この辺りでゆっくりと、嫁になりそうな女の子をじっくりと見分してもいいのだが……。


「いないんだよなぁ。困っていそうな女の子。」


街中を散歩と称して歩き回ったけど、困っている女の子の姿は皆無だった。


だったら、と、病気で苦しんでいるお宅を聞き出し、病人にポーションをかけて回ってみたものの、どの家にも年ごろの娘さんはいなかった。


最後の手段、とばかりに奴隷商を探したが、現在仕入れの為に街を離れているという。


「はぁ、隣町にもいってみるか?」


「にゃぁ。」


俺の呟きに、クロが応えてくれる。


リィズエリアは狭いエリアだという話だったが、それでも中に入ってしまえばそれなりの広さがある。


今俺がいる街が『中央』と呼ばれ、エリアの中心にある大きな街であり、そこから離れた場所……東西に小さな町がある。


この三つの街とその周辺を防護結界が覆っていて、この結界の有効範囲内をまとめてリィズエリアと言うのだ。


このエリアは小さいエリアだというが、それでも街を三つ内包し、その直径は100㎞にも及ぶ。これで小さいというのであれば、他のエリアはどれくらいの広さなのだろうか?


「はぁ……。」


再度ため息が出る。俺の嫁はどこにいるんだぁ?


そんな事を考えると、どこからかクリムの声が聞こえてくる気がしたが、気の所為だ。


「あのぉ……聖人様ですか?」


不意に声を掛けられる。


「人違いです。」


「嘘ですっ、聖人様ですっ。」


俺が立ち去ろうとするのを袖を引っ張って引き留める幼女……いや少女か?


「あのねぇ、俺が聖人なわけないだろ?」


……しいて言うなら「性人」だ、と自虐ネタが思い浮かぶ。


「でもぉ、お兄さんは街の病人やけが人を無償で治して回ったの知ってます。」


「あ、アレは……。」


……いえない。打如何に年頃の女の子をもらう、それだけの為にやっていた、だなんて、目の前で瞳をキラキラと輝かせている少女には言えない。


「あれは人として当たり前の事をしただけであって、間違っても成人なんかじゃないんだよ。」


……はい、うそです。人として間違った目的のためにしていた事です。


「やっぱり、聖人様は素敵です。そんな聖人様にお願いがありますっ。」


必死に訴えてくる少女。


おしい、おしいよ。この子がもう4~5歳年上であればギリギリ範囲内に入ったのに。


目の前の少女は、たぶんミューナと同じぐらいか、一つか二つ年下だ。


ミューナが現在11歳なので、俺のストライクゾーンに入るまでには3年以上は待たなければならない……その前にミレーネさんを攻略しないと手は出せそうにないが。


だから、この少女も同じぐらい待たなければいけないという事で、それはつまり、今の俺にとって関係ない、という事だ。


「悪いな。俺は年ごろの娘さん以外のお願いは聞かないことにしているんだよ。」


「私も年ごろの娘ですっ!」


精一杯胸を張る少女……。でも悲しいことに、その胸元は年ごろではないのだよ。


「惜しい。3年後に期待だな。」


そう言って踵を返す俺の前に回り込む少女。


「じゃぁ先行投資って事でお願いします。」


そう言って少女はジャンプして俺の首に手を回し、抱きつきながらその唇を俺に押し付けてくる。


突然の出来事に俺は反応が遅れる……と言うか、俺は一般人なので、このような時に反応が遅れるのは当たり前だ。


すぐに引き離せばよかったのだが、彼女の舌遣いに、さらに俺の反応が鈍る……って言うか、何でこの子、こんなに巧いんだ?


少女のキスの妙技は、絶対に10歳そこそこのモノではない。


少女は暫く俺の口内を蹂躙してから、ゆっくりと口を離す。


そして、少しだけ恥じらうようにしながらも、ちょっと上目遣いで、小さな声で言う。


「あのぉ……今のは手付という事で……お願い聞いてもらえませんか?」


……うーんあざとい。あざといが、そんな事くらいで篭絡できると思ってもらっては困る。


「悪いが、俺は……。」


きっぱりと断ろうと口を開いたのだが、少女の次の一言に、俺はあえなく降参する。


「私の初めてを奪っておいて、捨てるなんて……って大声で叫びますよ?」


……はい、降参です。それやられたら社会的に死にますので。


いや、別にこのエリアがどうこうじゃなくてね、置いてきた嫁たちにバレるのがマズいんですよ。


「……はぁ。とりあえず自己紹介しておこうか。俺はソーマ。キミは?」


「これは失礼いたしました。私の名前は、アリスフォーゼ・フォン・リィゼル。どうか、アリスとお呼びくださいませ。」


優雅なカーテシーで一例をするアリス。


その所作と名前から貴族の娘だという事が一目でわかるのだが……。


……くそっ、厄介毎に巻き込まれる未来しか見えねぇ。


「……一応聞いておくけど、アリスにお姉さんとかいる?お母さんはいくつ?」


「えっと、私はこれでも色々と()()を受けておりますので、その質問の意図するところは理解できるのですが、初めてを奪った女の子にそれを聞くのは些かデリカシーに欠けるのではないかと。」


「人聞きの悪い。押し付けた、の間違いだろ?それでどうなんだ?」


「姉は少々年が離れていますが7()()()()()()()です。そして母様は……24歳のままです……6年前から。」


少し俯いて小さな声でそう言う。……いくら俺でも、その言葉の意味するところは分かる。分かるが、あえてスルーしておく。


「じゃぁ、そう言う事で。」


俺は何事もなかったかのようにアリスに別れを告げ、その場から立ち去……れなかった。


「スルーですかぁ?今のは『辛い事を思い出させて悪かった』って言って優しく抱きしめ、慰める所ですよ?そうしたら私はわんわん泣いて、ソーマさんに惚れちゃうんです。私、自分で言うのもなんですがチョロいんですよ?」


「そうなりそうだから逃げようとしたんだよっ。俺はロリコンじゃねぇんだっ。お子様に付きまとわれても困るんだってばっ。」


「うぅ……初めてを捧げたのに弄ばれて捨てられたって、叫びますよ?」


「ゴメンナサイ。お嬢様、頼み事とは何でしょうか?」


あっさりと手のひらを反す俺。笑いたければ嗤うがいい。クリムやアンジェのお仕置きは、怖いんだよっ。



「………無理だな。」


俺はアリスの願いを聞き終えた後、そう告げる。


「無理……ですか?でも聖人様ならそこをなんとかできるのでは?」


アリスは俺の手を握ったまま訴えてくる。


「だから聖人なんかじゃないって言ってるだろ?」


俺だって、出来る事なら、この少女の願いをかなえてやりたい。


だが、ムリなものは無理なのだ。……『このリィズエリアを救ってほしい』という願いをかなえるには時間も力も足りなさすぎる。


アリスの話は、以前メイリーンたちから聞いた話を補間するものだった。


簡単に言えば、ディゲル侯国を名乗るエリアから宣戦布告を受けているので助けてほしい、という事だ。


ディゲル侯国は新興のエリアとのことだが、元になっているのは、故アースガルズ皇国を祖にするアースエリアであり、この世界では古くから存在するエリアらしい。


そのアースエリアで内乱が起き、反乱軍が勝利したのち、エリア名をディゲル侯国と改名、近隣のエリアを、文武両面で併合して大きくなったという事だった。


この、周りを魔獣に囲まれた世界において、他のエリアの併合にはかなりの危険が伴う。


まず、遠征における危険。


他のエリアに辿り着く迄には、結界の無い地帯を進軍する必要がある。


そして、その進軍する場所は、常に飢えている魔獣共の生活圏なのだ。そしてそんな魔獣たちにとって、抵抗力の弱い人族は格好の獲物以外何者でもない。


いくら武に優れた軍隊と言えども、無数の飢えた魔銃を相手にしながらの進軍は、遅々として進まないどころか、死と隣り合わせであり、辛うじて他のエリアに辿り着いたとしても、軍隊の体裁を整えていられる保証はない。


次にエリアそのものに及ぶ危険。


先述の通り、進軍には異常なほどに危険が伴う。その危険を緩和させるためにエリアの加護を付与することが出来るのだが、その軍の規模が大きいほどエネルギーを多く消費する。


それは、結界の強度が一時的に弱まることを意味し、そのままエリアの危険度が跳ね上がることに直結する。


つまり、軍を護れば、拠点そのものが脅かされ、拠点の防護を中心にすれば、進軍そのものがままならない。


以前、メイリーンは、ディゲルは「魔獣に気付かれる前に征服すれば問題ない」と言ってはばからない、と言っていたが、そういう問題ではないのだ。


エリアを加護する結界は、普段は瘴気を遮断する程度の強度ではあるが、有事に際しては、「許可したもの以外何物も通さない」というレベルまで強度を上げることが出来る。


勿論、永久的に張れるほど気軽なものではなく、その消費エネルギー量は半端ではないが、少なくとも、敵勢力をしばらくの間阻むぐらいは問題ない。


攻撃側としても、そんな強力な結界は長続きしないことは分かっているので、エネルギーキレを待てばいいのだが、この世界特有の状況が、それを許してくれない。


つまり、魔獣の存在。


エリア外で3日も同じところに留まっていれば魔獣の襲撃を受けて当然であり、攻撃側は、魔獣、敵エリアの武力を同時に相手にしなければならなくなる。


防御側にしてみれば、1週間も強固結界を張ってい待つだけでよく、それによって、攻撃側は諦めて軍を引くか、魔獣に遣られて自滅するのだ。


万が一、敵の軍が、エリアの加護に守られていたとしても、今度は、拠点そのものが脆弱となる為、一月と掛からず、相手側は軍の加護を打ち切るか、エリアそのものが魔獣によって殲滅することになる。


だから、他のエリアを攻めるというのは並大抵の事では成功しないのだ。


しかし、アリスが言うには、ディゲル侯国には、エリアの加護を打ち消す魔道具があるとのことで、それを証明するかのように一月ほど前に、リィズエリアの近隣にあるチセエリアが滅ぼされたというのだ。


チセエリアは、リィズエリアのお隣さんで……と言っても馬車で1週間かかるぐらいの距離はあるのだが……、リィズエリアとは行商人や冒険者が行き来する親交厚いエリアだった。


規模としてはリィズエリアより小さかったが、それでも全力で強化結界を張れば1か月は持つぐらいの規模だったという。


それが、進軍から三日も持たずに敵の侵攻を許し、エリアを守護する守護領主一家が惨殺され、ディゲル侯国に降ったという。


俺は、それは敵の名がしたブラフじゃないかと疑っているが、アリスが言うには、チセエリアから逃げ出すことが出来た住民たちが揃って同じことを言っていたというので、まず間違いはないだろうとの事だった。


そんなディゲル侯国が次に目をつけてきたのがリィズエリアで、降伏勧告をしてきたのが約一月ほど前の事。


現在、約3万の軍がリィズエリアに向けて進軍しているので、その軍隊が辿り着くまでに、降伏するか、蹂躙されるか選べ、とのことらしい。


「その軍隊が、ここに辿り着くまでの残された時間は?」


「専門家の見立てでは、約十日後、早ければ1週間後との事です。」


俺の質問にアリスは即答してくる。


幼い彼女がなぜそんなに詳しいのか?という疑問はあるが、まぁ、たぶん、アリスはアレ、なんだろうなぁと見当をつける。


そうであるならば、姉が七人いるというのも頷ける話ではあるし、たぶんタダ働きすることになるんだろうなぁという予感が現実味を帯びてくる。


……はぁ……タダ働き……。


俺が最も忌むべき言葉が頭の中をグルグル回っていることに憂鬱を覚えるのだった。




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