ハーレム王の新たなる旅立ち リィズエリアへ 2
「……それで、なんでソーマが一人でリィズエリアに行くって話になるの?」
アンジェの不可解な質問に答えた後、しばらくの間その場の空気が冷たかった。
だけど、いつまでもそのままではいけないと思ったのか、アンジェが再び口を開く。
「何でって言われてもなぁ……人手が足りないってのが一番の理由かな?リィズエリアの状況が分からない今、誰かがその場に行く必要があるが、もちろんアイリやメイリーンが行くのは論外だ。」
それは分かるよな?と訊くと二人はうんうんと頷いている。
「だから俺が行くしかないってわけだ。俺が現地に居れば何かあった時に即座に対応できるしな。」
「だからと言って一人で行くことは無いじゃない。私達が行っても問題ないはずよ。」
「問題あるよ。クリム、今お前の姿がどうなっているか自覚あるか?」
「なにいってるのよ。このキュートで可愛らしいまるで妖精のようなクリム様に向かって。」
「まるで、じゃなくて、まんま妖精だからな、今のお前。そんな姿の奴を人族のエリアに連れて行けるわけないだろうが。」
魔獣そのものの姿でない分マシだろうが、リィズエリアで、人外の存在がどのように扱われているかが分からない以上クリムやアンジェを危険に晒すわけにはいかない。
「それに一人じゃない。クロもアルちゃんもついているからな。」
俺がそう言うと、呼んだ?というように向かいのソファーで寝そべっていたクロが顔を上げる。
俺はそんなクロに軽く手を振ってから二人に話を続ける。
だから、お前達には、ここでメイリーンとアイリの護衛と言うか見張りだな……勝手に出て行かないようにしてほしいのと、ターミナルエリアの防衛強化を頼みたい。」
「分かったけど、具体的には?」
「ターミナルとダンジョンコアが、ため込んだマナを使ってフル回転で防御関係の設備や魔道具を作ってくれているが……一番欲しいのはやっぱり人手だな。ドワーフ族みたいに生産に長けた種族がいれば、ノッカーたちの負担も減るし、新しいアイディアも浮かぶだろうしな。それと出来れば戦闘に長けた種族とコンタクトが取れるとありがたい。理想は南に広げるエリアに集落を作って住んでもらう事かな?自分たちの住処を守る為なら、何も言わなくても協力してくれるだろう。」
俺は、前の世界で協力的だった獣人族や、リザードマン、オーガ族たちの事を思い出す。
あの時のように、こちらが住む場所を与え、彼らが開拓していく。何かあれば一丸となって対処する……そんな関係をもう一度作りたいと心から願う。
そんな俺の気持が伝わったのか、アンジェは「任せなさい」というように笑顔で頷いてくれる。
「はぁ、わかったわよ、もぅ。でも、危ない時にはすぐ呼ぶのよっ!アンタと私達は繋がってるんだからね。」
そんな俺とアンジェの様子を見て、クリムも折れてくれる。
「あぁ、その時は頼らせてもらうよ」
アンジェとクリムは、使い魔・召喚獣のカテゴリーに入っている為、どれだけ離れていても、俺が召喚を念じれば、瞬時に呼び出すことが出来るのだ。
もっとも、殊、戦闘においては、クロとアルちゃんがいれば余程の事がない限り問題はないだろう。
「理解してもらえたところで、俺は準備が出来次第リィズエリアに向かう。メイリーンとアイリにはうまく言っておいてくれよ。」
俺はそう言いながら部屋を出ていく。
……ふぅ、うまく切り抜けたか?
あのままアイツらと話していたら、いつぽろっと本音が出るか分からないからな。
俺はそう思いながらも、ターミナルを出るまでは気を緩めてはいけない、と自生しつつ、工作ルームに足を向けるのだった。
◇
「どんな感じだ?」
「あ、ソーマ殿。今の所で来たのはこれくらいで……。」
ノッカーの代表のカシムが駆け寄ってきて、手にした魔道具を見せてくる。
「我々の知らない手法、素材が多く、我ら一同感動していますっ!」
「あー、だからみんな異様にテンションが高いのか……。あまり無理するなよ。」
俺はねぎらいの言葉を掛けつつ試作品に目を向ける。
試作していたのは俺の装備だ。一見普通の装備に見えるのだが、それぞれに現段階で出来うる限りの効果が付与されている。
例えば、身体を護る鎖帷子。素材は従来の鉄の2倍の強度を誇る上質な鉄を厳選して編み込んであり、革鎧程度は凌駕する防御力があるのだが……重い。
とにかく重い。フルプレートに比べれば十分軽い部類に入るのだろうが、重いものは重いのだ。
だからこの鎖帷子には軽量化と防御力Upが付与されている。
そして、籠手や脚防具などの各部位の防具に関しても同じように軽量化と防御アップが掛けてあるため、フル装備していても、服を着ているのと変わりない重さで、フルプレートアーマーに匹敵する防御力を誇る防具一式が出来上がっている。
素材の関係上、一つの部位に上級で一つ、中級で二つ、初級で3つまでしか付与できないのが今の現界らしいのだが、研究は続けてもらっているので、その内もっと付与できるようになる……だろう。……将来性に期待だな。
そのほか、様々な効果を付与したアクセサリーを身に着け、最後にマントを羽織る。これで準備完了だ。
マントには遮断結界が施されているのだが、これは物理、魔法両攻撃に対する防御になるうえ、気配や熱なども遮断するため、隠蔽や温度コントロールにも役立つという、一つで幾つも美味しい結界系の上位魔法なのだ。もちろん瘴気も防ぐことが可能……俺には必要ないけどね。
俺はしばらく留守にすることと、留守の間にやっておいてもらいたいことをカシムに告げる。
特に双方向通信が出来る装置の小型化の開発を最優先にすることを念押ししておいて、工作室を後にする。
さて、これで準備はOKだな。
俺は執務室に戻り、留守の間の事など、細かい事柄をビャクレンと詰めて、最後にアンジェにクリムが暴走しないようにとお願いしておくと、アンジェに微妙な表情で、「クリムの面倒見るのはあなたの責任でしょ?」と怒られた。……ごもっともです。
とにもかくにも、すべての準備を終えた俺は、アンジェとクリムに見送られターミナルを後にしたのだった、
◇
リィズエリアまで馬車で三日、歩くと10日以上かかる。
それを考えると、足取りは重くなるはずなのだが、今の俺の足取りは軽い。
どれくらい軽いかというとスキップして踊りだしたくなるくらい、と言えばわかってもらえるだろうか?
「クックック……俺は、やったぞ。見事に出し抜いて自由を手に入れたんだぁッ!」
ここまでくれば大丈夫だろうと、俺は大声をあげて笑う。
俺がリィズエリアに行く理由……。
アンジェ達に話したことも嘘ではないのだが、それ以上に重要な目的がある。
それは女の子だっ!
新たなる嫁を探す旅に出るッ!……なんて言ったら反対されるのは分かり切っていた。だから旅に出てもおかしくない口実を探していた所にアイリたちが転がり込んできた。
もちろんアイリとメイリーンという新しい生贄……じゃなくて嫁を手に入れたのは僥倖ともいうべきことだが、今を逃せば旅に出る口実を逃してしまう。
アイリたちは、戻ってからでも可愛がれるが、新しい嫁探しは今を逃すと今度いつになるか分からないんだよっ。
だから俺は必死になって平静を取り繕い、アイリたちに手を出すのも控え、我慢を重ねて計画を練ってきた。
エリアに入ったら、まずは、気軽に遊べる後腐れの無い女を探そう。
その後は人助けだな。
年頃の娘さんがいて困っている人がいないかを探すんだ。
そして助けてあげる代わりに娘さんをもらう。
多少嫌われても問題ない。いや、却って、それがいい。奴隷に堕とされるか俺に貰われるかを選択させ、イヤイヤ従う女の子……考えるだけで滾ってくるぜ。
……いかんいかん。どうやらアイリの存在が俺の新たなる性癖を呼び起こしたようだ。
そういう娘ばかりがいいってわけじゃないからな。
奴隷を買って従順に健気にご奉仕する子もいい。
そう言う事が好きな色っぽいお姉さんもアリだな。
そう、どんな娘でも受け入れる、そんな博愛あふれる男になろうじゃないか。今の俺に死角はない、うわっはっはっは……。
高笑いする俺を肩の上のクロが、冷たい視線で見てくるが、俺はそんな事を気にすることもなく笑い続けながらリィズエリアへの旅路を急ぐのだった。
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