ハーレム王の新たなる旅立ち エリアを広げよう
「うぅ……アンジェ様ぁ。ありがとうございます、ありがとうございますぅ。」
「よしよし、怖かったねぇ。もう安心していいからね。」
「クリム様ぁ……。」
アンジェとクリムによって救い出された?メイリーンはクリムにしがみつきながら泣き崩れる。
……いや、それは大げさだろ?
「ところで、ソーマとどれぐらいシてたの?」
先程と変わらず、笑顔でメイリーンの頭を撫でているクリムだが、なぜかその声のトーンは低く、底冷えがするようだった。
「それですっ、聞いてくださいよぉ。それはね、私だって、こんなことになったわけだし、覚悟はしてたんですよ。それにソーマ様は初めての相手だし、優しくしてくれるならって……。でも、この一週間、まったく手出ししてこないんですよ。こんな風に裸に剥いておきながら、ですよっ!信じられますかっ!ヘタレなんですかっ!」
よほど鬱憤が溜まっていたのだろう。メイリーンはクリム相手に想いのたけをぶつけ始める。
その勢いは凄まじく、流石のクリムもタジタジになっていた。
「……で、1週間も籠って何してたわけ?」
アンジェが、これもまた、お馴染みとなった呆れ声で聞いてくる。
「んー、半分はメイリーン……と言うかメイリーンの血筋による血統魔法についての調査、残りの半分は、魔道具の復元複製量産に関する研究……かな?」
俺はそう言って、今までに分かったことなどを簡単に説明する。
「……とまぁ、そういう事だ。細かい事は全てターミナルに記憶させてあるから、必要だと思ったら確認するといい。」
「ふーん、わかったわ。じゃぁ、取り敢えずのところ、ソーマの方の準備は問題なく進んでいると言っていい訳ね。」
「あぁ、本当を言えば、何もせずにゴロゴロしていたいんだけど、今それをやると滅亡するらしいからな。」
俺はそう言ってチラッとメイリーンに視線を向ける。
アイリとクリム相手に愚痴をこぼしている様で、実に平和的な光景だ。
「だから、エッチ三昧でゴロゴロしてても問題なくなるまでは、出来る限りのことをするつもりだ。」
「ふーん。まぁ、ソーマがそう決めたのならいいんじゃない?」
「そういう事だ。で、そっちの方は?」
「いくつか新しい情報があるわよ。」
アンジェはそう言って、報告を始める。
「まず、南の方ね。今までの観測結果通り、何もない平野が広がっているわ。近くに森や水源もあるから、集落にするのに条件が整っているから、エリアを広げるなら、まずこっちの方からね。」
「それは構わないが、サブシステムを設置するのに適した場所はあるのか?後、防御面と周りの治安はどうだ?せっかくエリアを広げても、外敵と接するようになったら本末転倒だぞ。」
「その辺りは問題ないわ。システムについては、廃棄された遺跡があるから、たぶんそこが使えると思うの。そこを中心に、このエリアの、……この辺りを最遠地として定めて……このように防壁を張れば、防御面としては十分な安全係数が保てるわ。ここから1日の距離は同じよう荒野が広がっていて、敵性勢力が存在しないのも確認済みよ。」
アンジェは、地図を映し出し、具体的な防衛戦略を披露しながら説明してくれる。
「……ン、良さそうだな。じゃぁ、そっちはそのように進めてくれ。」
「了解。でね、そこまでエリアを広げてからの話になるんだけど、エリア最遠部から更に2日程南下した辺りの話なんだけど……。」
「何かあるのか?」
「うん、少し危なくて、詳細はつかめてないんだけどね、集落エリアがあって、その場所を巡っての争いが起きているらしいのよ。」
「どの種族が争っている……かまでは分からないよなぁ。」
「ごめんなさい。現段階ではそこまでは……。」
シュンと項垂れるアンジェ。
いつも自信に満ち溢れたアンジェにしては珍しい。
「いや、十分だ。逆に、この短い時間でそこまで調べれたことのほうが凄いんだからな。だけど、危険のない範囲で構わないから、その周辺の情報引き続き集めておいてくれ。上手くいけば漁夫の利が狙えるかもしれないからな。」
「わかったわ。それで、北側の方なんだけど、これはクリムに聞いた方がいいわね……クリム。」
アンジェが呼びかけると、クリムが助かったーといった感じで近づいてくる。
まだメイリーンの愚痴が続いていたらしい……ってか、この数日でため込みすぎだろ?
俺がそんな事を考えている間にアンジェがクリムに説明をすると、クリムはアイリを呼びつける。
「細かい報告はアイリにさせるね。アイリ?」
クリムがアイリを呼ぶと、アイリも、助かったという顔を隠しもせずにやってくる。その後を少し不満げについてくるメイリーン。
「クリム様、何か?」
「最近調べた事をソーマに報告してあげて。」
「はい、わかりました。私この1週間頑張ったんですよ。」
だから、褒めて、と言わんばかりに嬉しそうな顔を向けるアイリ。もしアイリが獣人であれば、その尻尾は大きく揺れていただろう。
「クゥ、私があんな目に遭っている間、あなたはそのような事を……。」
メイリーンが何か言っているが、気にせずに報告をするよう促す。
「ハイ、北部エリアですが、ここから馬車で3日程の位置に人間族の住むエリアがあります。ここにあるのは、比較的規模の小さなエリアで……。」
アイリの話では、人間族の住むエリアは限られているものの、比較的隣接していて、尚且つ、エリアの中心たる守護石の効力が大きければ、その末端同士がつながっていることもあるという。その為、そのような離接したエリアがいくつか集まって、小さいながらも「国家」として成り立っているらしい。
ただ、このターミナルに一番近いエリアは、隣接しているエリアが遠く、一番近いエリアでも馬車で10日はかかる距離にある為、いわば、一つのエリアで独立しているのだそうだ。
その為、他のエリア同士の小競り合いとも距離を置くことが出来ていて、辺境故に、それほど豊かではないが、牧歌的でのんびりとした生活を人々は送っているという。
「メイリーンとアイリは、そのエリアから来たのか?」
「いいえ、私達はさらにその向こうにある、ディゲル国のエリアから来ました。」
アイリの言うディゲル国は、近くにあるエリア(リィズエリアという名前らしい)から更に馬車で30日ほどかかる場所に位置しているらしく、ここまで逃げてくるのにかなりの苦労が伺えた。
「……なら、何でそのリィズエリアに逃げ込まなかったんだ?」
人族のエリアであれば、隠れる場所はいくらでもあるだろうし、それに何より、外界よりはよほど安全に休める筈だ。
話しによれば、冒険者という職業はこの世界になっても健在で、結界の影響が弱いエリアの外延部周辺には魔獣が入り込むこともあるので、そのような魔物討伐を中心に活躍していると聞く。
時にはエリアの移動をすることも珍しくないので、冒険者を装えば、より簡単に紛れ込めただろうに。
「えぇ、その事も考えたのですが……。」
アイリが言いよどむとそこにメイリーンが割って入ってくる。
「私がアイリに命じたのよ……リィズエリアを囮にしろって。」
「どういうことだ?」
「リィズエリアは、珍しく平和なエリアよ。そこに災いの種を持ち込みたくなかったって事もあるけど、普通に考えれば、私達はそのエリアに逃げ込むと考えるでしょ?」
「まぁな、俺もそう思ったし。」
「でも、エリアに紛れ込んだ女の子二人を探し出すのは容易な事じゃない。」
「そうだな。」
「だから、私達は、リィズエリアに入ったという痕跡をわざと残して、リィズエリアに入らずに逃げることにしたの。そうすれば、追っ手がリィズエリアに関わっている間に距離が稼げるでしょ?」
「まぁな。」
メイリーンの考えは、正しい。女の子二人が無事に逃げるため寝とれるべき手段としては、最高のモノだったといえる。ただ、素直にそう言ってやれないのは、アイリの顔色が悪いからだった。
「アイリ、どうした?」
「いえ、何でもないです。報告を続けますね……リィズエリアですが、私が最近調べたところによると、近隣エリアから圧力を掛けられていて、人々に緊張が強いられています。また、外部からガラの悪い人々が流れ込んできて徐々に治安が悪くなってきているようです。このままいけば、近隣エリアの圧力に負けて無条件降伏するか、その圧力を跳ね除けるために戦争になることでしょう。」
「戦争って……マジか?」
新しくなったこの世界では人族同士の大規模な争いは起きないと思っていた。
何故なら、人族は限られた狭いエリア内でしか生活できない。その事が不満となりエリアを拡大するため争いの原因になることは大いに考えられるが、いざ戦争となった場合、そうやって争っているのを外部の魔獣たちが黙って見過ごすわけがない。
争うためにエリアの外に出てきた人族は、魔獣にとっては格好の餌であり、争いによって結界が弱まれば、そこはもう、近隣の魔獣の餌場になるのは目に見えている。
その様な事は物心ついた子供でも分かる様な当たり前の事なのに……。
「残念ですけど、本当の話しですわ。ソーマ様がおっしゃることは事実ですし当たり前の事なんですが、愚かな人は同時にこう考えますの……「魔獣が来る前に相手を降伏させればいい」って。」
「……マジ?」
「えぇ、それはもう……。」
「はぁ……。で、そのバカの中心が、そのディゲル王国ってわけか。」
「そう言う事です。そして、そのような考えに至るにあたった根拠には……。」
「親父さんの残した魔道具……か?」
俺がそう言うと、メイリーンはコクンと頷く。
「今リィズエリアが脅されているのも、私達を匿っていると思っているからです……私があんな工作をしなければ……。」
アイリが顔を覆って泣き崩れる。
「ううん、あなたは悪くない。そうするように命じたのは私よ。だから悪いのは私。」
「姫様ぁ~……。」
お互いに抱き合って涙ぐむ二人。
ある意味感動的な場面ではあるが、その雰囲気をぶち壊す発言をするのがクリムという存在である。
「で、ソーマ、そのディゲル王国いつ潰すの?」
「いや、潰さないからね。って言うか潰せないでしょうがっ!」
「そう?メテオ幾つか落とせばいけなくない?」
『30%です。無理とは言いませんがむるかしいでしょう。』
クリムの言葉にターミナルのビャクレンが律義に応える。
ってか、一応30%の成功率はあるんだ。
「まぁ、とにかくだ、その事は今は置いといて、その他の報告を頼む。」
俺は落ち込んでいるアイリを宥めながら報告の続きをさせることにする。
このまま話を続けたらきっとディゲル王国を潰す方に向かってしまうからな。
いつかは潰すことになるとしても、今じゃない……と思う。って言うか、そんな時が来ないことを願うばかりだ。
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