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ハーレム王の新たなる旅立ち 準備編3

「もう少し詳しい話をしますね。ソーマ様は『血統魔法』というものをご存じですか?」


「あぁ、俺達の世界に魔法はなかったが、概念としては知っている。要は、その血脈を受け継ぐ一族だけが使える魔法、ってやつだろ?」


メイリーンの問いかけに、俺はそう応える。


「簡単に言えば、そんなものです。実際には婚姻などによる血脈の混じりとか、突然変異とかいろいろあるのですけど……。とにかく、私の世界では王族と貴族による支配体制、そして『血統魔法』を持つ者だけが貴族と認められる……そんな世界でした。」


力あるものが貴族階級という、ある意味わかりやすい世界において、王族というのは一番強い力を持つ者の別名ともいえる。


しかし、今代の国王……メイリーンの父親の持つ能力(ちから)は大したものではなかった……いや、大したものじゃないと思われていた。


「お父様の能力(ちから)は普通の道具を魔道具に作りかえるというものでした。」


「……まぁ、それでも大したものだと思うけどな。」


例えば、ただの鉄の剣を魔力の籠った魔法剣に作り替える……大したものだと思うが、逆に言えばそれだけだ。


俺も他の者達と同じく、そう思っていた……メイリーンの次の一言を聞くまでは。


「正確に言えば、道具に魔法を付与する力です。そしてそれに制限はありませんでした。」


「マジか……。」


俺自身生産を嗜んでいるだけに、その言葉の奥に隠された重大な事を読み取ることが出来た。


付与するのに制限がない……。これだけを聞いてピンとくるものは少ないだろう。


だからこそ、メイリーンの父親は、多くの国民たちから『無能王』と陰口を叩かれていた。


しかし、当の本人は自分の能力の希少性と危険性をよく知っていた為に、敢えてその汚名を被ることで真実から目を逸らさせることに成功していたに違いない。


そもそも、魔術付与(エンチャント)というものは、無限の可能性がある能力であり、その無限の可能性を潰すのが現実に立ちふさがる「制限」というもので、その制約の中でいかに有用な物を作り上げることが出来るのか?という能力者の資質が問われるロマンあふれる能力なのだ。


例えば、道端に転がっているありふれた石ころ。これを魔道具にすることが出来れば……例えば光魔法のライトを付与して光らせることが出来れば、街中の街灯問題のコスト面でかなり有益なのは間違いない。


しかしそこに立ちふさがる、制約という名の壁。


この場合は、石ころという素材の質が、魔力付与を受け付けるほど上質ではないという壁にぶち当たる。


結局、ただの意志に付与することは出来ず、それなりに希少な鉱石を素材に使わざるを得なくなり、コスト面の問題は改善されない、となる。


例えば、戦闘用の魔道具として爆弾を作ろうとする。


ブラストボムとか、エクスプロージョンと言った、爆発系、爆裂系の火魔法を付与すれば簡単にできる。


しかし、ここにもまた、制約という名の壁が立ちふさがる。


素材の質に見合った付与魔法……素材の質が低ければ上位の魔法は付与できない。


かといって上位の魔法が付与できる素材など、希少過ぎて、そうおいそれと用意できるものではない。


素材の問題が解決しても、今度は術者自身の制約が立ち塞がる。


術者の能力に準じた魔法……術者が操れる範囲の魔法しか付与できない。


そもそも、術者自身が火の属性を持っていなければ、火の系列の魔法は使えない。


その様に様々な制約があるエンチャントなのだが、もしその制約・制限が一切ないとしたら?


そこらに落ちている石ころにエクスプロージョンの魔法を付与。あっという間に大量殺戮兵器の出来上がりだ。しかも素材のコストはほぼゼロ。


例えばただの水筒に無限に湧きだす水魔法を付与したら……。


一生水問題に煩わされることが無くなる。


他にも、想像するだけで、無敵の力を得ることのできる未来予想が出来上がっていく。


そして何より、現実に直面している問題も、この力があれば……。


……。


……。


……。


「えっと、つまりは、そう言う事ですぅ。」


メイリーンが頬を引きつらせながらそういう。


「諦めなさい。アレはソーマの病気みたいなものだから。」


アンジェがそう言って唖然としているメイリーンとアイリを諭している。


どうやら、「制限のない付与術」という事について、延々と思いの内を語っていたらしい。


自分ではそんな自覚はないのだが、クリムに言わせると、「語りだしたら満足いくまで語らせ、自分はその間寝てるのがいい」という事らしい。


……そんなに語ってたか?


「まぁ、そんな力があれば、世界征服も夢じゃないし、現実的に言っても、今抱えている問題の大半は解決できるだろうな。だけど、その………。」


俺はさすがにその先を無遠慮に口にすることが出来なかった。


「お気遣いありがとうございます。お察しの通り、父は世界の崩壊に巻き込まれ命を落としています。でも、その血を引く私であれば……とか、私に子供を産ませ、その子供であれば?などと下衆い考えを持つ者達が、私を捕らえる、という共通の目的で手を結び、それからは、逃亡の日々。そして辿り着いた先に待っていたものは……御覧のとおりです。」


自重するように言うメイリーン。


よく考えたら、俺がやった事って、メイリーンのいう「下衆い考えを持つやから」がしようとしていたことそのもの!?


「いやいやいや、俺の目的は女の子であって、それに付随する能力とか関係ないからっ!」


俺は気づけば否定の言葉を口にしていた。冗談じゃない、そんな下衆い奴らと一緒にされてたまるか!


「あのぉ、ソーマ様の気持はともかくとして、言っていることはかなりサイテーなのでは?」


アイリが、おずおずとそう口にする、


言われてみれば……女の子ならだれでもいい、と言っているに等しいな。


「……否定はしない。」


「しないんだ……。」


メイリーンが悲しげにつぶやく。


「さすがに、そこに痺れませんし憧れもしないですよ。」


アイリも同じように肩を落とす。


……いいんだよ。可愛い女の子は俺のモノ、そこに貴賤は存在しないっ、そんな博愛主義にあふれたハーレム王に、俺はなるっ!


「・・・・・・・・・。」


そんな俺の決意を、呆れたように眺めるアンジェだった。



「……コホン。それで、一応聞いておくけど、メイの能力ってのは何なんだ?」


俺は、気まずくなった空気を払拭するかのように話題を変える。


「……えーと、前も言ったかと思いますが、神託のようなもの……です。」


聞いてなかったのか?と責めるような目で見上げてくるメイリーン。


……あぁ、なんかゾクゾクしてくるなぁ。我ながら、ヤバい性癖に目覚めたのかもしれない。


「確か的中率100%だったわね。」


アンジェが俺を無視して話を続ける。


「えぇ、良かったら現状を占ってみましょうか?」


メイリーンは、そう言って、カードの束を取り出す。


「それは?」


「アルカナカードと言って、私の力を知ったお父様がお母様の力を借りて作ってくださったものです。今となっては唯一の形見です。」


「タロットカードみたいなモノね。私を占ってよ。」


横からクリムがそう声をかけてくる。


「起きたのか?」


「うん、難しい話が終わったみたいだからね。……それより早く。」


「占いとは、少し違うのですが……。」


急かされたメイリーンが、少し困ったようにつぶやきながらカードを並べていく。


「えっと、カード真っ白だよ?」


場に出されたカードを見てクリムがそういう。


「えぇ、このカードたちは、私の力を受けて、初めて絵柄が出るものなのです。だから、今はまだ絵柄は存在しませんし、この後私の能力を発動させても、伝わる事柄、知るべき事柄がなければ絵柄は白いままです。……ではいきますね。」


カードを並べ終えたメイリーンがカードに魔力を流す。


すると、場に出されたカードのうち何枚かに絵柄が現れる。


「えっと、困った女の子?これは天使?悪魔?……ヤダ、これキモっ!」


クリムが慌てて避けたカードには漆黒の闇が広がっている。


一見ただの黒いカードなのだが、そこから滲み出る波動に不快なものを感じる。


「で、これはどういう意味なの?」


真っ白なカードを片づけ、絵柄のカードだけを並べなおしたメイリーンに、アンジェが訊ねる。


「これはクリムさんが将来辿るかもしれない、ある一つのルートです。」


メイリーンはそう言って、一枚づつカードの説明を始める。


「まずこれです。」


メイリーンが取り上げたのは困った表情の少女のカード。


「女難の相です。クリム様には、これから先、ずっと、女の子の事で悩まされることになります。」


メイリーンの言葉を聞いたクリムは、アンジェと顔を見合わせ、ちらっと俺を見た後「しゃぁーないかぁ」と呟く。


「次にこれです。」


そう言ってメイリーンが手にしたのは天秤のカード。


「これは正しい判断を指し示し、、その判断の先に立ちふさがるのが、この2枚のカードです。」


そう言って、メイリーンが手にしたのは、引き込まれるかと思うくらいの蠱惑的な微笑みを浮かべる女悪魔のカードと、とても美しい、だけど、その表情は少し構っている天使のカードだった。


「最後に、行きつく先のカードがこちらです。」


少しイヤそうに持ち上げる真っ黒なカードと、反対に、清廉さ溢れる眩く輝く、カード。


「少し辛いので、しまいますね。」


そう言って、2枚のカードをしまうメイリーン。


メイリーンがカードを戻した途端、その場に残っていたイヤな気配も清廉さも何事もなかったかのように消えうせる。


「で、結局どういう解釈になるの?」


アンジェが訊ねると、メイリーンがカードに視線を落としてから、答える。


「まず、最後のカード、アレはクリム様が行きつく先の未来を表しています。深く昏い絶望の未来か、光あふれる穏やかで美しい理想の世界……クリム様のこれから先の行動でどちらかの未来が確定します。」


「極端すぎない?間はないの?」


「残念ですが……。あれほど力のこもったカードが出ることは殆どないです。前に出たのは世界の崩壊を告げるカードでした。」


「つまり避けようがないって事ね。」


「えー、真っ暗な世界って嫌すぎぃ。」


「光輝く未来もありますから。」


ブーブーと文句を言うクリムを宥めるアイリ。


「どうすればいいのよ?」


「クリム様の場合、すごく単純でわかりやすいです。まず、クリム様は、先程も申したように女難の相がありますので、女の子関連で判断を求められることが多々あります。その際の判断の積み重ねの結果が光か闇のどちらかの将来へと続いている、という事です。」


「えー、って事は、女の子に優しくすればいいって事?」


「そうとは限りません。天使の困った表情、悪魔の魅力あふれる表情から判断するに、天使のような慈愛溢れた判断が、間違っている場合もありますし、時には、悪魔のように思われる判断が実は正解だちう事もあります。」


「うぅー、ソーマぁ。」


クリムが状況の難しさのあまり、俺の胸に飛び込んでくる。


「よしよし。クリムの思ったとおりにすればいいよ。俺はクリムの判断ならきっと光あふれる未来へ導いてくれると信じているからな。」


俺がそう言うと、アイリも追随するようにクリムに声をかける。


「そうですよー。クリム御姉様は、私を助けてくれたじゃないですか。もっと自信を持ってください。」


「そうなの?」


クスンと涙ぐみながらアイリに聞き返すクリム。


「そうですよぉ。私が派手に自爆して、どうしようもないって思っていた時に、クリムお姉さまが、ソーマさんにしっかりとお話しする機会を与えてくれたじゃないですか。だから今、姫様もここに居るし、私も笑っていられます……まぁ、方法はアレでしたが。」


「そう?じゃぁ、今夜、「捕らえた女スパイを心ゆくまで嬲り調教する」イメプレで、女スパイ役をアイリにすることに決めた判断も間違ってない?」


「……イエ、ソレハマチガッテマス。ダカラ、カンベンシテクダサイ。」


クリムのカミングアウトに、ハイライトの消えた瞳で虚空を見つめるアイリ。


……きっと、未来もこんな風に平和なんだろうなぁ。


クリムを見ていたら、しみじみと、そう感じるのだった。



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