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超会!  作者: シクル
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エリア21(前編)

 理安と共に、エリア21付近の雑木林で宇宙人と接触した翌日。俺は超会本部にメンバー全員を集合させた。

 全員が、俺の真剣さに気が付いてくれたらしく、快く応じてくれた。しかし、各々の予定もあって(主に理安の急速)、結局集合するのは夕方になってしまった。

 ――――話さなければならない。

 昨日のことは勿論、シロのことも……。怖がって、皆に隠したままだと先には一歩も進めない。

 ――――でも、まだやり残したことがある。

 シロが消えたあの日、確かにシロはそう言っていた。

 そして昨日、宇宙人の操作する何らかの機械による頭痛で苦しんでいた理安を助けてくれたのは、間違いなくシロだった。

 シロがやり残したことと言うのは、宇宙人やエリア21に関することなのではないか。俺はそう、仮説を立てた。

 妖精事件、清盛が失踪した事件、そして――――ボスの妹の真奈美さん。どれもが、UFOによるもの、もしくはUFO目撃後に起こった事件だ。

 これらの事件は全て、一つの目的によって繋がっている。俺にはそう思えてならなかった。

「皆、これからエリア21、及びシロについての会議を始める」

 コクリと。俺の言葉に一同は頷いた。

「ひろっち……」

 不安げな表情で、こちらを見る理安へ頷いて見せ、大丈夫だと伝える。

「久々津君、昨日の事件で何かわかったのね?」

「……確証は持てませんが、ある程度は」

 そう、と小さく答えてボスは微笑する。

「妖精事件のこと……理安から聞いたわ」

「詩安……」

「久々津君、ありがとう。理安を助けてくれて……」

「いや、助けたのはシロだ……。俺は何も出来なかった……!」

 そう答え、歯噛みする俺へ、詩安はかぶりを振った。

「理安は……。何度も貴方のことを話してくれたわ。ひろっちがいたから助かった、ひろっちが一緒にいてくれた……って」

 だから、と付け足し、詩安は言葉を続ける。

「ありがとう」

「……ああ」

 コクリと。俺は詩安に頷いた。

「まず、シロについて聞かせてもらえるかしら?」

「わかりました」

 ボスにそう答え、俺はシロが消えた日のことを話した。

 超常現象が、人の強い思いによって具現化した存在だということ。

 シロが、蝶上神社に祭られていた神、「白ノ神」だということ。

 シロの神としての力が、超常現象を具現化させていたこと。

 般若さんを具現化させてしまったことにより、工藤弘明が死亡したことを自分のせいだと感じていること。

 そして、俺達の前から姿を消したこと。

 全て話し終えた後、誰も何も責めなかった。

 シロが間接的に工藤弘明を殺してしまったことも、俺がこの事実を、皆にすぐ話さなかったことも。

 誰も、責めなかった。

「つまり、これまでに起きた超常現象のほとんどが、人の思いと、シロの力によって具現化した物……なのね」

 ボスの言葉に、俺は小さく頷く。

「シロのその力は、シロ自身が望まなくても発動されるのね?」

「はい、そうだと思います。でなけりゃ、危険な超常現象は一度も起きないハズですから」

 そうよね、と呟き、ボスは嘆息する。

「だったら……シロは何も悪くないよ……! 何で理安達の前から消える必要が……っ!」

 今にも泣き出しそうな表情で、理安は悲痛に声を上げた。それを見つつ、詩安も悲しげに瞳を閉じた。

「私達、シロとあんなに一緒にいたのに……何も知らなかったのね……」

 寂しい、そう呟いて、詩安は視線を正面から逸らした。

「シロは、『まだやり残したことがある』と言いました。ということは、シロはまだ蝶上町にいるんです」

「やり残したこと……。昨日の件と関係あるのね?」

 ボスの鋭い問いに、俺は静かに頷く。

「昨日、俺と理安は宇宙人と接触しました」

 宇宙人。言葉にすれば、どこか間の抜けた感じがしなくもない。だが、実在するのだ。現に昨晩、俺とシロはその宇宙人と接触しているのだから。

「彼らは俺達人間とは明らかに違う姿で、未知の言語を操り、未知の機械を操作していました。『宇宙人』という言葉程、昨晩の彼らを説明するのに適した言葉はないと思います」

「その宇宙人が……理安を苦しめたのね……っ!」

 顔をしかめる詩安に、俺はコクリと頷いた。

「ここからは俺の仮説ですが、恐らく彼らは、理安の記憶を操作しようとしたのではないでしょうか」

「理安の記憶を?」

「ええ。理安はあの日、『妖精事件』がUFOによるアブダクションだと言うことを俺に語りました。そして、アブダクションされた後に何があったのか……それを思い出そうとしていました」

「自分達にとって都合の悪い記憶を、理安から消そうとしたって言うの……?」

 多分な、と詩安に答え、俺は言葉を続ける。


「恐らく理安は、アブダクションされた際に、体内に何らかの装置を埋め込まれています」


「「――――っ!?」」

 詩安とボスの二人が、驚愕に表情を歪めて絶句した。

「それって……前に清盛君の体内に埋め込まれていた物と同じ金属片……?」

「その可能性は、高いと思います」

 ボスの言う通り。アブダクションされた人間には、同じ金属片が埋め込まれているのだと思う。その金属片は恐らく、宇宙人達の技術によって造られた何らかの装置。アブダクションされた人間の記憶を自由に操作するための装置なのだろう。

「昨晩理安が訴えた頭痛の原因……。それは、宇宙人が機械を操作したことによるものです。金属片の中にはセンサーも仕込まれており、『特定の記憶』を思い出そうとすると向こうにデータが行くのだと思います」

「だから、理安が思い出そうとした途端に、頭痛がしたんだね……」

「恐らく……な」

 俺の説明に、ボスはしばらく考え込むような仕草を見せ――――嘆息する。

「全て、仮説の域を出ていないわね」

 でも、と付け足し、ボスは更に言葉を続けた。

「もっともらしいわ」

 ニコリと。ボスはその表情に笑みを浮かべた。

 どうやらボスは、俺の立てた仮説に同意してくれたらしい。

 他の二人も、納得したように俺を見て小さく頷いてくれた。

「そしてこれらのことと、エリア21が無関係だと、俺は思えません」

「その根拠は?」

「エリア21付近で出没するUFO。そして、真奈美さんがアブダクションされた時期と一致する、エリア21が建てられた時期。何か関係があると考えても良いと思います」

「そうね。それで、久々津君はどうしたいの?」

 薄らと笑みを浮かべ、ボスはそう問うた。

 わかっている癖に、そう問うた。

「俺達超会は、謎を解くためにエリア21に潜入する必要がありますッ!」

 勢いよく机を叩き、俺はそう主張した。


「だそうよ、美耶ちゃん」


 ボスがそう言うと同時に、一斉に全員の視線がボスの視線の先――――ドアの方へと向けられる。

 ガチャリとドアが開き、本部の中へ入って来たのは一人の女性だった。

「私が来ていたの……気付いていたんですか?」

 苦笑しつつそう問うた女性へ、ボスは小さく頷いた。

「美耶さん……」

 驚いた様子で、詩安は美耶と呼ばれている女性を見つめていた。

 この人が――――日比野美耶。俺が超会へ入る前、超会のメンバーだった女性。工藤弘明の死亡とほぼ同時に、超会を脱退した女性。余談だが、エリア21付近に住んでいる日比野さんは、美耶さんの祖父なのだとか。

「私が呼んだのだもの」

「でも私は、行かないと答えたハズです……」

「でも、来たじゃない」

 そう言ってクスリと笑うボスを見、美耶さんは嘆息した。

「そう……ですね」

 靴を脱いで畳へ上がり、俺の隣へそっと正座する。

「貴方が、ボスの言っていた久々津君ですね?」

「は、はい……」

 やや緊張した面持ちでそう答えた俺に、美耶さんは優しく笑みを浮かべた。

「不思議ですね……。全くの別人なのに、隣にいると、何だか弘明さんと一緒にいるみたいです……。雰囲気が、似ているのでしょうか……」

 どこか寂しげに、美耶さんはそう言った。その後すぐに詩安と理安へ交互に視線を向ける。

「ごめんなさい、久々津君は貴方達の――――」

「「ちょ、ちょっと美耶さん、その先は言わないでっ!」」

 どういう訳か二人同時に狼狽する様子を見て、美耶さんはクスリと笑った。

「話は、聞いていたわね」

「……盗み聞きしていたみたいで、悪いです」

 構わないわ、とボスは答え、俺の方へ視線を向ける。

「この事件は『超会』で解決するのよね?」

「はい」

「それは、超会のメンバーの誰かが? それとも、メンバー全員で?」

「……全員です」

 そう、と答え、ボスは再び美耶さんへと視線を向ける。

「全員で、だそうよ」

「私……もうメンバーじゃ、ないです」

「何を言ってるの。この本部に足を踏み入れた時点で、『超会』へ入会したようなものよ。ね?」

 そう言ってニコリと微笑み、ボスは俺達へ肯定を求めた。

「えへへ……お帰り、美耶さん」

 嬉しそうに美耶さんを見つめる理安。

「美耶さん……私、待ってました」

 今にも泣き出しそうな表情で、そう言う詩安。

「これから、よろしくお願いします。美耶さん」

 美耶さんの方を見、俺がそう言うと、美耶さんは困ったように苦笑する。

「さ、どうするの? 美耶ちゃん」

「…………わかりました。よろしく、お願いします」

 肩をすくめた後、微笑すると美耶さんはペコリと頭を下げた。

「それで、これからどうするの? 久々津君」

 俺へと視線を向け、ボスはそう問うた。

 これからどうするか――――そんなこと、既に決まっている。

「今晩、俺達『全員』でエリア21へ潜入します! 一度十九時に超会本部へ集合し、そこからエリア21へ向かいます!」

「それなら、私が車を出すわ」

「お願いします」

 ボスはニコリと微笑み、気にしないで、と答えた。

「エリア21へ行けば、シロは確実に関わって来るハズです。その際に、シロも連れ戻します!」

 シロは、俺達のかけがえのない大切な仲間だ。俺達超会のメンバーだ。

 あんな勝手な理由で、目の前から消えられてたまるか。

 シロを連れ戻し、エリア21の謎を解く。これ以上、宇宙人達に好き放題される訳にはいかない! もし何かの陰謀があるのなら、必ず俺達超会が食い止める!

「決まり、ね」

 ボスの言葉に、俺達全員が力強く頷いた。



 中編へ続く。

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