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超会!  作者: シクル
25/30

未確認飛行物体(会議編)

 超常現象解決委員会活動報告№049

 記録者:河瀬理安


 理安です。

 最初にまず一言。お姉ちゃん、ごめんなさい。

 今回の事件、未確認飛行物体多発地帯……本当ならお姉ちゃんと行くべきだったんだけど……。心配かけたくなくて、ひろっちと行って来ました。

 お姉ちゃんは隠しているつもりなんだろうけど、理安はお姉ちゃんが怖がりなのに超会に入った理由、知ってるんだ……。

 過去に起きた妖精事件……理安も被害者だったこと、自分でもわかってるんだ……。その原因を探るために、お姉ちゃんは…………。

 理安はもう、大丈夫。もう心配しないで、お姉ちゃん。

 それと、ありがとう。


 これにて、活動報告を終わります。





 シロが消えてから、数日が経った。

 あの日、蝶上神社で姿を消して以来、本当にシロは俺達の前に姿を現さなかった。何度か蝶上神社や、シロが行きそうな所(菓子屋くらいしかないが)を捜してはみたが、やはり一向に見つからない。神社の偶像も、消えたままだ。

 シロが消えたことを、俺は未だに皆へ言えずにいた。必要以上に心配させたくない、というのもある。だが、単純に――――怖かった。

 皆に話せば、シロが消えたことを受け入れてしまったことになるような、気がして……。

 一応皆には、シロは旅行に出かけると言っていたと伝えた。詩安とボスは訝しげな表情をしていたが、詮索されることはなかった。

 まだ誰も来ていない超会本部で、ゴロリと転がったまま、シロについて考えていた。

 ボスも河瀬姉妹も、今日はまだ到着はしていない。俺が一番早く着くことなんて、わりとよくあることだ。

 そう、いつも通り。ただ、シロがいないことを除けば。

「……シロ」

 ボソリと。名前を呼んでみる。無論、返事はなかった。

「どこ行っちまったんだよ……」

 ポケットの中へ手を突っ込み、今朝この間コンビニで買った、未開封のガムを見つめる。

 持っていれば、相変わらずの嗅覚でシロが寄って来るとでも思っていたのだろうか。それとも、帰って来たシロへ渡そうとでも思っているのか。

 そのガムを、開封する気にはなれなかった。

 ガムをポケットへしまい込み、ゆっくりと身体を起こす。

 そして部屋の隅、資料の置かれた本棚の傍へ歩み寄り、そこから一冊のノートを取り出す。

 超常現象解決委員会活動報告。ページをめくり、一番最近書かれた活動報告のページを見る。

 ――――ありがとう。

 ただそれだけ、丁寧な字で書き込まれていた。

 記録者は、シロ。

「アイツ……」

 俺の前から姿を消した後、一度だけここに来ているのだろう。この活動報告、蝶上神社へ行く前は書かれていなかったハズだ。

 活動報告を、本棚へ戻した時だった。

 ガチャリとドアが開き、ボスが本部の中へと入って来る。

「あら久々津君、今日は早いのね」

「あ、はい……」

 ゆっくりといつもの位置に戻り、その場へ座り込む。

「何か見てたの?」

「ああ、はい。UFOの資料をちょっと……」

 嘘だ。自分でもどうしてかわからない内に、嘘を吐いてしまっていた。

「UFO……ね。そう言えば最近、目撃証言が多いわね」

 言いつつボスは本棚へ近寄り、中から一冊の資料を取り出し、座り込んでパラパラとめくり始めた。

 ボスは資料をめくり終えると、すぐに本棚へと戻した。

「そう言えば、シロはまだ帰って来ないのかしら?」

「え……」

 ドキリと。心臓が脈打ったような感覚。

「いえ、まだだと……思います、けど」

「そう。今頃彼女はアメリカで、北アメリカ大陸横断レースの途中ね」

「スティール・ボール・ラン・レース!?」

「誰よりも早く、シロは全ての遺体を見つけ出したわ」

「大統領よりも先に!?」

「シロが最初にナプキンを取るのよ」

「黒幕はシロ!?」

「スタンドはDDD」

「それは奈須き○こだろ!」

「DDD(ドラゴンダイス&ダンジョンズ)、能力は出番がなくなること」

「そっちのDDDかよ! っつかなんだその能力は! 御伽とDDDに謝れェ!」

「だが断る」

「ナニッ!!」

「この藤堂鞘子の最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやることだ……」

「いや、謝れよ」



 そんな会話をしている間に、河瀬姉妹が本部へ到着した。理安は中に入るなり、シロはー? と部屋の中を見回し始めた。

「……まだ帰って来てない」

「えー」

 理安は不満そうに頬を膨らませると、いつもの位置へ座り込み、バッグから携帯ゲーム機を取り出して、何やらカチャカチャとつつき始めた。

「久々津君、貴方まさか……シロを監禁してないでしょうね?」

 えらく真剣な表情で問いかけてきたのは、詩安だった。

「してねえよ! 何を根拠に疑われてるんだ俺は!」

「だって久々津君、そういうプレイ好きだし」

「俺は一度でもそんなこと言ったか!?」

おとこは、背中で語るものよ」

「んなこと背中で語りたくねえよ!」

「『久々津弘人は監禁プレイが好きです』って、顔に書いてあるわよ」

「書いてねえし、背中ですらねえ! 会話の流れからして背中だろ!」

「言葉のドッジボール」

「ぶつけてるだけじゃねえか!」

「おい、デュエルしろよ」

「会話しろー!」

 しかし、超会ではよくあることだった。



 シロがいないため、現時点で全員がそろったことになる。

 シロが消えてから数日、大したことは起こっていなかったのだが、今回は何か話し合う必要があるらしく、ボスは俺達を定位置に座らせ、理安にゲームを止めさせた。

 理安は何度かボスに反逆してゲームを再開していたが、最終的にはゲーム機ごと没収された。

「それじゃ、会議を始めるわよ」

 不満そうな顔をした理安をよそに、ボスは理安のゲーム機をバッグの中へ押し込んでいく。

「久々津君、後で反省文百枚ね」

「何故俺に課せられた!?」

「いや、だって……久々津君だし」

「理由になってないですから!」

「理由にしかなってないわ」

「なってないですって!」

「理安が反逆=久々津君が反省文。当然でしょ」

「どこが当然だよ!? 理安も満足げに頷いてんじゃねえ!」

「さ、無駄話はさておき、会議を進めましょう」

「振ったのはアンタだー!」

 無茶苦茶だった。

 かなり不服だったが、俺の意見をボスが聞きいれるハズもなく、会議は普通に開始された。何この理不尽さ。

「とりあえず、これを見てくれるかしら?」

 そう言って、ボスがバッグから取り出したのは一枚の写真だった。夜空に、青白い謎の物体が浮遊している写真。

「これってまさか……」

 コクリと。ボスは俺へ頷いた。

「お察しの通り、これは未確認飛行物体。通称、UFOよ」

 ボスを除く三人から感嘆の声が上がると、理安はすぐにその写真を手に取り、ジックリと眺め始めた。それも、かなり真剣な表情で。

「……お湯をかけて三分だね!」

「それはカップ焼きそばだろ!」

「理安はぺヤングの方が好きだなぁ」

「お前の好みは聞いてねえよ!」

「あ、でもラ王の方が好きかな」

「焼きそばじゃないじゃん!」

「でもやっぱり……お母さんの作った焼きそばが、好きかな」

「良いこと言ったみたいな顔すんな! 結局会議と関係ねー!?」

 どこまでも不毛だった。



 理安のアホはさておき、ボスが苛立ち気味の咳払いをし始めたので、会議を続行する。

「この写真、どこで撮られたんですか?」

 写真を眺めつつ、詩安はボスへ問うた。

「この写真を撮影したのは、日比野さんよ」

「日比野さんって……あ!」

 口元に手を当て、詩安は表情を驚愕に歪めた。

「チュパカブラ事件の時の……最初の被害者ですよね?」

 ボスがコクリと頷いたと同時に、俺も日比野さんのことを思い出す。

 直接会ったことはないが、チュパカブラ事件の時に、最初に被害に遭った人物。日比野さん宅の付近には――――

「エリア……21」

「その通りよ。この写真、エリア21付近の雑木林で撮られたものよ」

 また、エリア21か……。

 この間の人面犬事件。人面犬の言葉を最後まで聞くことが出来なかったが、明らかにエリア21の中に何かが隠されているかのような、そんな雰囲気だった。チュパカブラと言い、人面犬と言い、そして今回の事件。一体この町には、何が隠されているんだ……?

 ――――アンタらがエリア21って呼んでるあの建物は――――

 人面犬の言葉と共に、脳裏を過るのはその場に倒れ伏す人面犬の姿。人面犬が真実を明かしかけた途端、何者かに人面犬は射殺されたのだ。

 UFOとエリア21……。塀の向こうに隠された何か。そして人面犬……。もしかすると、俺達は、何かヤバい事件に首を突っ込もうとしているのかも知れない。

「最近、蝶上町ではUFOの目撃情報が多発している……。それも、この雑木林付近――――エリア21付近でばかり、ね」

「UFOとエリア21に、何か関係が……?」

 さあね、とボスは肩をすくめると、いつの間にか机の上に戻されている写真をバッグの中へ戻した。

「もし関係あるんだったら、これって何だかヤバいんじゃ……」

「ええ。でもこの事件、超会として放っておくわけにはいかないわ」

 理安の言葉を遮るように、ボスはそう言った。

「アブダクションとかは、起きてないんですか?」

 俺の問いに、ボスは首を横に振った。

「今回はUFOの目撃だけで、アブダクションは起きてないみたいよ」

 アブダクションが起きていれば、真奈美さんについて何か手がかりが掴めたかも知れないのに……。まあ、アブダクションなんて起きない方が良いに決まっているが。

「ねえ、今回の調査さ……理安が行っても良いかな?」

 不意に、理安はボスへ問うた。すると、ボスは小さく頷いた。

「構わないけど、どうして?」

「……なんとなく」

 なんとなく……か。あまりそういう表情には見えないが……。何か理由があるような、そんな表情だった。

「誰と行くの?」

 詩安が問うと、理安はすぐに俺を指差した。ってまた俺かよ……。

「久々津君と?」

「うん。ひろっちと行って来るよ」

 そう言って、良いでしょ? と理安は俺へ問うた。しょうがない、と呟いて俺はコクリと頷いた。

「ボス、何時頃が良いですかね?」

「そうね……。二十時くらいで良いんじゃないかしら……。他の目撃証言も、大体そのくらいの時間だし」

 筆舌し難い不安を感じつつも、俺と理安は今日の二十時、エリア21付近の雑木林に集合することにした。



 調査編へ続く。

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