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超会!  作者: シクル
20/30

人の面せし犬(会議編)

 超常現象解決委員会活動報告№039

 記録者:河瀬理安


 やっほー! 理安だよー!

 それじゃあ今回の事件、人面犬事件について……。

 人面犬って、すっごく有名でベタな都市伝説だから、今までの超常現象とあまり変わんない存在だと思ってたんだけど……。なんか、違う。

 ひろっちが超会に入った時の活動報告……チュパカブラに関する報告をお姉ちゃんがしてて、お姉ちゃんはチュパカブラについて「今までの超常現象とは何か違う」って書いてるんだけど、今回の人面犬事件も……お姉ちゃんの言う今までのと違う超常現象……かも知れない。

 理安には難しいことはわかんないけど、何だか最近、この蝶上町のことが怪しくなってきた気がするんだ……。

 あ、これって人面犬と関係ないね。ごめんなさい。


 これにて、活動報告を終わります!





 人面犬。その名の通り、人の面をした犬。要は犬の身体に人間の顔が付いてる生物のことを指す。

 怖いとも感じられるし、えらく滑稽だとも感じられる。なんともよくわからない存在だ。

 そんなよくわからない人面犬が、この蝶上町に出没するらしいのだ。どうもこの蝶上町、花子さんと言いネッシーと言い、ベタな超常現象が好きらしい。そう言えばもう一週間程ネッシーの所に行ってないな……。今関係ないけど。

「人面犬……ねえ」

 ゆったりとした動作で、詩安は持っていた一枚の用紙を机の上に置いた。用紙には、人面犬のイラストがプリントアウトしてあり、昨晩理安が用意したものらしい。

「詩安……お前、怖くないのか?」

 俺の問いに、詩安は平然と何が? と問うてくる。

「いや、何がって……人面犬だよ」

「犬の身体に人間の顔が付いてるだけじゃない。何も怖くないわ」

「お前の基準がわからねえ!」

「基準はかわいいかどうかよ」

「人面犬はかわいいのか!?」

「かわいくない。むしろ気持ち悪いわ」

「基準から外れてんじゃねえか!」

 結局謎のままだった。



 いつもの超会本部。今回の議題は、最近頻繁に出没している人面犬についてだった。

 最初は噂程度だったのだが、次第に目撃情報が増えていき、ついに写真まで撮られ、新聞に掲載される程になってしまっている。

 出現場所は特に定まっておらず、様々な場所に出没しているらしい。コンビニ周辺でゴミ箱を漁っているという目撃証言もあれば、他の犬と喧嘩している所を見た等、様々なものがある。

「今回、理安達が動く必要あるのかなぁ」

 呟くように、理安が言う。

「あら、どうしてそう思うの?」

 静かに、ボスが理安へ問うた。

「だって人面犬ってさ、別に悪いことしてる訳じゃないじゃん」

 言われてみれば、そうだ。

 今回の人面犬、目撃証言は大量にあるのだが、被害があった等の報告は一切ない。ただ単に見た目が気持ち悪い、という報告ならあるが、だからと言って何も悪事を働いていない珍生物を駆除するのは、少しどうかと思う。その理屈で駆除しなければならないのなら、遠の昔に蚯蚓やゴキブリは絶滅しているハズだ。

「それもそうね……。これだけ目撃証言があるのに、一度も襲われたとかいう報告はない訳だし……」

 動く必要はないかしら、とボスは呟く。

「人面弘人」

 隣でボリボリとポッキーをかじりつつ、シロが呟く。

「意味がわからない上に何の脈絡もねえな!」

「人の顔した弘人」

「まるでオリジナルの俺が人の顔してねえみたいじゃねえか!」

「オリジナルの弘人は、カビ顔」

「どんな顔の奴を指す言葉だよカビ顔って!」

「顔中にカビがビッシリ」

「気持ち悪ッ!」

「自分のこと、気持ち悪いなんて言っちゃ駄目」

「何て酷いこと言うんだこの幼女は!」

 結構傷付いた。



 精神内傷心旅行と言う名の、果てなき精神世界への旅に出る俺をよそに、人面犬に関する会議は進んでいく。

「でもボス。わざわざ議題にしたってことは、何かあるんですよね?」

 詩安の問いに、ボスは小さく頷く。

「ええ、一応……ね」

 そう答えると、ボスはバッグから一枚の用紙を取り出すと、机の中心に置いた。

「久々津君、いい加減帰って来なさい」

「いえ、もう少し……アイルランド共和国(精神世界内の)に辿り着くまでは……」

「貴方がボケてどうするの! ツッコミ続けなさい!」

 キレられた。



 どういう訳か俺だけボケ禁止。理不尽だこれ。

 まあ今に始まったことじゃないし、俺がツッコミポジションであることは重々承知してるので、とりあえず会議に復帰する。

「これって、最近撮られた写真ですよね?」

 机の上にある用紙を指差し、俺が問うと、ボスはコクリと頷く。

 そこに写っているのは、何かの建物の壁をひたすら引っ掻いている、人面犬らしき生物の写真だった。

 後ろを向いているため、顔を見ることは出来ないが、頭の部分だけ毛が黒い。まるで髪の毛のようだった。犬らしい耳は生えておらず、代わりに人間と同じ位置に、人間と同じ耳が付いている。

「見るからに人面犬……って感じだな」

「見るからに人面弘人」

「しつけえよ!」

「弘人、カビ臭い」

「何か今日、俺に対して酷くない!?」

「最近出番少ない」

「時系列的にその発言はおかしいだろー!」

 時の運航が乱されてしまった。



 全くと言って良い程会議が進まなくなってきたため、ボスが若干苛立ち始めた。他のメンバーも察したらしく、無駄な会話をやめ、ボスの方へ注目する。

 机を指でトントンと叩く仕草からは、明らかな苛立ちが感じられた。ごめんなさい。

 ジッと。俺達の視線がボスへ集中する。

「……そんなに見つめられると、恥ずかしいわ☆」

「アンタがボケんのかよ! さっきまでの苛立ちはどうしたー!」

 っつか☆って何だ☆って。

「さて、それでこの人面犬の話なのだけど……」

「何事もなかったかのように進めた!」

「人面犬が引っ掻いているこの壁……この建物、何だかわかる?」

 スルーされた。

「町内……ですよね?」

 詩安の問いに、ボスはコクリと頷く。

「ボスがわざわざ聞くってことは、何かがある建物……」

 呟き、思索する。

 この町内で、何かがあるような建物……。超常現象の発生数を除けば、普通の田舎町とさほど変わらないこの蝶上町。そんな町の中で、何かがあるような建物……。

「エリア21か!」

 コクリと。ボスは俺の言葉へ頷いた。

「その通りよ」

 エリア21……。蝶上町内にある謎の建物で、名前の由来はアメリカのグレーム・レイク空軍基地――――通称エリア51からだ。

「エリア21の壁……。何で人面犬はそんな所引っ掻いてるの?」

 理安の問いに、ボスはわからない、とだけ答えると、もう一枚の用紙をバッグから取り出す。

「チュパカブラ……ですか?」

 机の上に置かれたその用紙にプリントアウトされていたのは、チュパカブラのイラストだった。

「随分と前に、チュパカブラについて調査したじゃない?」

 コクリと。俺達はボスの問いへ頷く。

「チュパカブラが出現した日比野さん宅の付近に……エリア21があるのよ」

「……!」

 日比野さん家の付近、確かにその建物は存在する。どういう訳か地図には記載されていないが、エリア21は確かに存在するのだ。中学生の頃、面白半分で友人達と行ったこともある。

「チュパカブラと言い、この人面犬と言い、怪生物がエリア21付近で二度も現れる……エリア21の怪しさから考えて、偶然とは考えにくいわ」

 二度くらいなら、偶然でもあり得る。だが、その偶然が何故、エリア21付近でだけ起こる? 他の超常現象の発生場所はランダムだと言うのに……。

「調査する意味……ありそうだね」

 理安は言うと、納得したらしくうんうんと繰り返し頷いている。

「ボス、エリア21に関しては何かわかっていないんですか?」

 詩安の問いに、ボスは首を横に振る。

「いいえ。建てられた理由も、中に誰がいるのかもわかっていないわ。ひっそりと建てられたみたいで、いつ頃建てられたのかもわかっていないわ……。私が初めてエリア21を見たのは、六年くらい前だったかしら……」

 そこまで言い、ふとボスは何かを考え込み始めた。

「六年前……。真奈美の失踪と、時期が少しだけ被るわね……。エリア21が建てられたのが六年前だと仮定すると、真奈美が失踪したのは五年前だから……」

「エリア21が建てられてから一年後……になりますね」

 コクリと。俺の言葉にボスは頷いた。

「関連性があるかどうかはわからないけれど……少し引っかかるわね」

「今回の人面犬……本格的に調査する必要がありそうですね」

「ええ」

 エリア21の存在、人面犬の出現、真奈美さんの失踪……。この三つが関連している可能性がない、とは断言出来ない。

「それじゃ、決まりだね」

「ああ」

「調査に行こう! 理安とひろっちで!」

 ちょっと待て。

「何で既に決まってんだよ!」

「さっき理安が決めたー」

「勝手だな、おい! 真奈美さんと関連性があるかもだから、ここはボスが――――」

 真顔で横に首を振られた。

「これはもうひろっちが行くしかないね! 今日理安すごい暇だから!」

「暇潰しに使われている!?」

 どういう訳か、俺と理安で行くことが決定した。



 調査編へ続く。

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