黒服の犯罪者?
「ふぎゃぁああああっ!」
凶悪少女の両手が、私の腰にいぃっ! 私はこのまま……あれ? 何だろう、この雰囲気?
まるで、夜のような雰囲気だ。程よい怖さと妖美さを感じる。当然、凶悪少女が持つ雰囲気ではない。セクハラ警備員の物でもない。じゃあ、この雰囲気は一体……
「異界からの使者、オセニアン。……いえ、こちらではオシアでしたか。やはりあなたは騒動と共にある」
「本来なら私とかかわりをもたない存在。でも、もし例外が存在したら……私に、希望を……」
……分かるけど、分からない。私が転生者だという事はバレてるみたいだけど。
入口の方を向くと、そこには一人の女性がいた。膝まで伸びている真っ白のロングヘアーに、漆黒に染まった高貴な貴族の装い。男くさい2ベンチャーアドベンチャーギルドには似つかわしくない姿。
「いずれ、二人だけでは守れなくなる時が来る。自衛手段はあるに越したことはない。……少し借りるわ」
凶悪少女の腰から、例の棒を取り出す謎の女。彼女は右手でその棒を軽くなでる。すると、新聞紙を裂くような痺れる音と共に激しい光が棒にまとわりつく。
「はい、これ。この辺りのモンスターならこれでイチコロね」
驚きのあまり私への接触を諦めた凶悪少女を無視して、私に向けて電気棒を差し出す謎の女。そして、彼女はクールに去ろうとした。……彼女とは、話が通じる。もしかしたら、私を助けてくれるかもしれない。
「あの、私を保護してくれませんか? あなただけが頼りなんです。私は、あなたとしか通じ合うことが出来ないんです」
「……あなたには、もう素敵な仲間がいるじゃない。私では決して手に入れることの出来ない、尊い仲間たちが」
「全然信用できないんです。一人はセクハラしてくるし、もう一人は凶悪だし」
「……逃げる必要なんかないわ。彼女たちはあなたを光へと導く存在。いずれ、分かり合える時が来るはず」
「そう、ですか。……あなたの、名前を聞いてもいいですか?」
「私はナターリア。この世界ではそれが私の名前。……それじゃ、さよなら。あなたと再び会える時を楽しみにしているわ」
「私もです。いつか、また会いましょう」
彼女は外へと向かっていく。そして、私のそばには不機嫌になった2人の少女が残されていた。
「ウシアちゃん♪」
「オセアニアちゃん♪」
二人とも笑顔だが、陰鬱なオーラを発していることから機嫌が悪いことが分かる。
「おしゃちゃん、あなたは私を守ってくれている。私だけがあなたを守ってくれる。だから他の子供たちと浮気しないの?」
「不審な目でホセアを見ることはありませんが、ホセアはとてもかわいいので連絡したいだけです」
怖い目で私たちを見る二人。凶悪少女に右手を、セクハラ警備員に左手を掴まれてしまう。そして、彼女たちに力強く手を握ぎられてしまった。
「私は許せません、あなたはオシアをしようとしている不審な女性でなければなりません!...私はたくさんの存在感を持っていて、自由に学ぶことを怠りませんか?」
「どこかで聞いたと思います。『世界の娘、白髪、黒服の犯罪者に気をつけてください。闇はめちゃくちゃになります』この地球の最後の言葉が伝わった」
凶悪少女の謎の発言の後、セクハラ警備員が気になることを言ってきた。……白髪、黒服の犯罪者? まさか、ナターリアさんは犯罪者なの? あの人が犯罪なんてするはずないと思うんだけど。
ナターリアさんの謎は深まるばかりだ。