学園オシア 予告2
「私たちの学園は、教育に力を入れています。優れた指導者があなたの才能を発掘し、自分自身ですら気づかなかった才能を見つけ出してくれることでしょう。優れた指導や、学園の豊富な施設、栄養豊かな食事などが、あなたの才能強化を手助けします」
黄色いパンフレットを読みながら、オシアは学園生活について考える。自分が学園に入学した後、どのようなことが起きるのかを脳内でシュミレーションしているのだ。
「……どうしたんですか、そんな難しそうな顔をして。もっとワクワクしましょうよ。これから毎日温泉ですよ。これから毎日バイキングですよ。これから毎日、一緒に遊びましょう♪」
ジェニファーは、期待に満ち溢れた目をオシアに向ける。学園生活が楽しみで仕方ないようだ。
「……そう、ですね。もっと期待した方がいいのかもしれません。お言葉に甘えて、もう少しワクワクしてみます」
頑張って笑顔を作るオシア。その様子がおかしいのか、ジェニファーも笑顔になる。
だが、二人の笑顔はどこかから発せられた奇声によって遮られてしまう。
「お前との婚約を破棄するですって? 嘘ですわよねっ、嘘ですわよねっ! 今まで私はあなたの為に過ごしてきたというのにっ! お前より魅力的な女がこの列車に乗っていたんだ。俺はそいつの心を掴んでやる……ですって? ふざけないでくださいっ! あなた、女性を何だと思っているのですかっ! ……呪ってやる、お前も、私よりも魅力的な女性もっ! 何もかも壊してやるっ!」
女性の狂気的な叫び声が、電車内に響いた。突然の出来事に驚愕の表情を浮かべるオシアとジェニファー。
「オシアさん、なんだか私、怖くなってきました」
「……私たちに害がないことを祈るばかりですね」
女性の叫び声からしばらく時間がたつと、落ち着きを取り戻したジェニファーとオシアは再びパンフレットを見始める。……だが、女性とは別の叫び声によって二人の団らんは遮られてしまう。
「あれ? 僕の顔が……ああ、あああああああああああああっっっっ!!!!!!!!!! 返して、返してっ! 僕の顔をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!」
男性の悲痛の叫びが電車内に響く。
「ひいっっっ!、……何が、どうなっているの?」
「……さあ、私には分かりません。ただ、良くない何かがあるような気がします」
涙目のジェニファーと、落ち着いた様子のオシア。二人のもとへ、一人の人物がやってくる。
「まさか、叫び声が『二回』もあるなんて、完全に予想外でしたねぇ。お二人さんもそう思いません?」
髪を肩まで伸ばした、男性のようでもあり女性のようでもある人物が、二人に馴れ馴れしく話しかける。
「叫び声自体が予想外だよっ」
「……」
突然の乱入者に、以外にも冷静に対応するジェニファー。一方、オシアは驚いた表情をしながら乱入者とジェニファーを見比べる。
「そういわれればそうですね。でも、面白かったので良かったです。……おっと失礼。レディたちの集いを荒らしすぎてしまいました。それではごきげんよう。おさらば」
謎の人物はバックステップでその場から退く。
「オシアさん、まさか今の人……」
「ええ。女性との婚約を破棄した男、もしくは男性の顔を奪った存在かもしれません。……何故私たちに話しかけてきたのかは分かりませんが」
「水色の姫君に、運命的な何かを感じたからさぁ! ……おっと失礼、レディたちの内緒の部分に触れてしまいました。今度こそおさらばを」
撤退していたと思われた人物は、二人の会話に参加してから再び去っていった。
「まるで、嵐のような人だったね」
「嵐、ですか。私には強力な毒のように思えてきます」
オシアとジェニファーは、先ほどの人物について話し合う。印象が強すぎたため、しばらくの間は話題が変わることがなかった。
「フウゥっと。あのお方が私について話してくれるなんて。……興奮してきちゃいますねぇ。おっと、レディたちをのぞき見するだなんて個人的領域の侵害じゃないですか。とっととやめないと」
去っていったと思われた例の人は、天井に張り付いて二人の会話をこっそりと聞いていたが、急に罪悪感を感じ始めたのか、彼はいつの間にかその場から姿を消していた。
ハーメルンでもこの小説の連載を始めました。内容は大きくは変わらないと思いますが、細かい所を変更するつもりです。
続編投稿はまだまだ先になりそうです。
 




