第二章 会話集
「あなたがオシアちゃん? ……可愛い♪ 私よりもおっきいのにオシアちゃんを見ているとすっごく癒されちゃう。オシアちゃんはほんわかお姉さんだね♪ 私の名前はミーコ。オシアちゃんの同級生だよ♪」
「オシアちゃん、逃げないでよ。私と、お友達になろうよ♪」
「私の妹がどうもすみません。ちょっとだけ人懐っこい子なんです……私の名前はフーコ。ミーコの姉です。年は少し離れているけど、私たちはあなたの同級生として学校に入学します。どうぞ、よろしくお願いします」
「あそこの子たちを見てください。とってもかわいらしい獣人の子供たち。……ムーソ王国からやってきた不届きものたちにさらわれ、奴隷にされてしまった子供たちなんです。どうやらドラゴン騒ぎの混乱に乗じて『近くの森』に隠されていた収容所から逃げ出すことに成功したようです」
「まさか『近くの森』にそんな恐ろしい施設があったなんて。でも、良かった。逃げ出すことができたんだね。……でも、どうして私にそれを伝えたの?」
「彼女たちは、奴隷商から逃げ出すことはできました。しかし、身元が特定できないのです。どこの町で生まれたのか、そもそもどこの国で生まれたのかすらわからない状態です。このままではこの国に彼女たちの居場所はありません」
「そんな、それじゃ彼女たちは……」
「そこであなたにお願いがあります。先ほどの報酬で、彼女達を冒険者学校に通わせてあげてください。卒業証明書さえあれば、彼女たちは人間として認められます。彼女たちはこのままでは居場所がなく、まともな生活を送ることが出来ません。どうか、あなたのやさしさで彼女たちをすくってくれませんか?」
「道理で報酬が多いと思ったわ。この交渉の為に多めに報酬をくれたのね」
「いえいえ、先ほど送ったのは正当な報酬ですよ。もしあなたがドラゴンを倒していなかったらギルドは複数のSランク冒険者にドラゴン討伐を依頼せざるを得ませんでした。依頼する人数が多い分、より多くの報酬を送らなければならなかったでしょう。……それで、この提案を受け入れてくれますか?」
「……このお金でみんな学校に通えるようになるなら、私はその提案を受け入れるわ。私はオシアちゃんを危険から守るためにドラゴンを倒しただけ。ドラゴン討伐で報酬が発生したことは、私にしてみれば空からお金が降ってきたようなもの。そのお金でみんな助かるなら、私は遠慮せず支払うわ」
「交渉成立ですね。彼女たちもきっと救われることでしょう」
「おしあちゃん、彼女たちはオシアちゃんの同級生になる子たちですよ。今のうちに、お友達になってみようよ」
「『ラブラブ』のライラはどうだろうか? 俺の友達が彼女と親しいんだ。格安で依頼を受けてくれると思うぜ」
「いいや、彼女は人間に近い感情を持つモンスターにしか強くない。もしあのドラゴンに人間らしさがなかったら無駄に死体を増やすだけだ。ここは『叫び』のトールに依頼しよう。彼なら連絡手段もあり、移動手段も持っている」
「それはいい考えだ。あんた、トールに連絡してくれよ。……俺は、『色仕掛け』のダーラを押すぜ。彼女に勝てる男はいないぜ」
「……あんた、さっきの話聞いていたのか?」
「おや、だれだい?」
「私の名前はオシアです。森の中でドラゴンに襲われました」
「ドラゴンが、あなたを襲った? ……ドラゴンは、もうこの近くまでやってきているのか!」
「……あぁ、とても恐ろしいドラゴンなら、アゼアさんによって倒されました。嘘だと思うなら、ランディさんに確認してみてください」
「ランディさん、ドラゴンは……え、本当ですか? それじゃ、この町の危機は救われた……?」
「……私達にとっての脅威であった恐ろしいドラゴンの残骸、とても貴重な素材になると思っていました。ですが、その予想は大外れのようですね」
「ランディさん、何かわかったんですか?」
「この物質は、ムーソ王国で使われている調理器具の残骸に極めて近いことが分かりました」
「ムーソ王国の調理器具 ……たしか、ムーソ王国の経済を考慮したうえで開発されたザーマ国の発明品だね。ムーソ王国でよく取れるフレム鉱石を使用しているため安価で購入できる一方、長く使いすぎると火力が暴発してしまう事から5年に一度の買い替えが必要だって聞いたことがあるけど」
「良く分かりましたね。そうです、これらは期限の過ぎた残骸に過ぎないことが分かりました」
「私たちは既に学校を卒業していて、ある程度年を取っています。そんな私たちは、違和感なく学生たちに溶け込めるのでしょうか」
「……そんな時には、この化学薬品。『ワカガ・エステオイル』」
「これを顔に塗れば、-5歳顔に。大人になる直前の私達が使うことによって、学生時の輝きを取り戻すことが出来ます」
「あれ? 何だか体が縮んで……うひゃんっ。ちっちゃくなっちゃったよ!」
「学校入学は、10年後になりそうですね♪」
「まってたら、おしあちゃんがおねえさんになっちゃうよぉ……」
「あんた、凄く可愛い顔をしているよな。まるでハーレ王国のお嬢様みたいだぜ」
「あなたみたいな素敵な人に褒められると、恥ずかしくなってしまいますね。ありがとうございます」
「あはは、よしてくれよ。……もう少し俺が若ければ、あんたとも仲良くなって見たかったぜ」
「俺の名前はテッカ。各国の建築様式の違いについて研究しているぜ。利便性を追求したザーマ王国の民家、耐火性と防弾性に優れたムーソ王国の要塞家、外観の美しさを重視したハーレ王国の芸術住宅。
国によって、家に求める要素が違ってくることが非常に興味深い」
「テカさんは、国ごとの家の違いについて詳しいんですね」
「ああ。人は価値観によって、ほしいものが変わる。その性質が、家の建築様式にまで現れているという事が面白くてたまらないんだ。」
「独特な視点で物事を研究しているようですね。私は物事を単純にしか捉えることが出来ないので、テカさんのような人に憧れちゃいます」
「ははは、褒めても何も出ないさ。……おい、誰かがあんたのところに来てるぜ」
「おしあちゃん、そろそろおうちに帰る時間だよ」
「オシアちゃん、大丈夫? 凄くうなされていたけれど。怖かったら私に甘えてね」
「私のところに来てもいいんですよ。……一番心が安らかになる人に甘えてください」
「オシアちゃん、私が向いた梨を食べてくれているんですね。可愛い子ですね」
「あ、ローレさんずるい。おしあちゃん、わたしがむいたなしも食べてね」
「おしあちゃん、こっちのお皿にあるのが私が向いた梨だよ。たべてたべて~
「やった~ オシアちゃんが食べてくれたよ。ありがと、オシアちゃん♪」
「それじゃ、私もいただきますね」
「小さな体でよく頑張ったじゃねえか。俺も一つだけもらうぜ」
「
「おお、ベッピンさんじゃねえか。こんなにきれいな人が俺のことを見てくれるなんて、良いこともあるもんだぜ」
「あの時の、女っ! 何故ここに。やっぱりあなたは泥棒だったのね」
「おおい、オシアちゃんだけじゃなくて俺ともお話してくれよ。俺はあんたとお近づきになりたい」
「勝手に私の部屋に入ってきて、しかも私のオシアちゃんをたぶらかすなんて。本当に許せないっ!」
「……おかしいですね。この部屋の防犯設備はしっかりしていましたのに。普通ならこの家に人間が忍び込むなんてありえないはずです」
「な、いつの間に私とオシアちゃんの間に……」
「……ちょっと、オシアちゃんの隣を取らないでください。せめて、おしあちゃんを真ん中にしてください」
「では、あちらの間に入ったらどうですか?」
「おお、そうだぜ。……あなたは美しい。ぜひとも俺の隣で眠ってください!」
「……ちょっと、クリムちゃん。そいつは不法侵入者で、さらに私からオシアちゃんを奪おうとした奴だよ。この家から追い出さないとだめじゃない」
「私達をからかわないで。そして、この家から出ていって」
「クリムちゃん、ごめんね。あいつとの夜を邪魔してしまう事になっちゃって」
「いや、別にいいぜ。確かに彼女と一晩過ごしたかったけれど、ここはあんたの家だしな。俺には不法侵入者の対処を邪魔する権利はないぜ」
「俺の方こそ済まねえな。ホントはあんたはオシアちゃんと一緒が良かっただろうに、俺なんかと一緒になってしまって」
「別にいいのよ。あなたはオシアちゃんのお友達でしょ? オシアちゃんの友達とは仲良くしたいもの。それに、ちっちゃくなってしまった今の私よりも、ローレさんと一緒にいたほうがオシアちゃんも安心できると思うわ」
「あんた、本当にオシアちゃんが好きだな……」
「うん♪」
今まで「死んだのでチートを貰ってちやほやされるはずが、スキル「翻訳EX」のせいで何もかもおかしくなってしまい、助けてくれた少女をサイコパスだと思い込んで彼女から逃げる羽目になってしまった」を読んでくれてありがとうございました。皆様の応援のおかげでここまで続けることが出来ました。このお話は次回で最終回になります。次回からは、だらだらとした展開にならないように、きちんとお話を完成させてから投稿するようにしたいと思います。
続編「死んだのでチートを貰ってちやほやされるはずが、ヤバイ学園に通うはめになり、破滅と隣り合わせの学園生活を送ることになってしまった(仮)」制作予定です。お話が完成したらこの小説の最終回を投稿して、続報をお伝えしたいと思います。時間はかかると思いますが、読んでくれると幸いです。




