決意
「オシアちゃんはどうしたの?気分が悪いみたい」
ローレさんは心配そうな表情で私を見つめてきます。……どうやら私の様子がおかしいことはバレバレみたいですね。
「……少し、考えていたんです」
「結局のところ、あなたは元の世界を気にしますか?」
「はい。あの後どうなったのか心配です。私の両親はどうなったのか、私を殺した子供たちはどうなったのか、色々と気になります」
私は、ローレさんの質問に対して思ったことを口にします。……正直、この世界に来てから感情を動かされてばかりで、元の世界について考える機会がありませんでした。
「あなたは子供に殺されましたか?...どうやらオシアがあまり静かな場所ではなかった世界」
「オシアちゃん、あなたの時間は大変です...」
「この世界も静かではありませんが、あなたよりも安全な場所のようです」
いつの間にか、凶悪少女とクリムちゃんが会話に混ざってきました。二人とも、私のことを心配してくれているのかな。
「ねえ、オシアちゃん。何かおかしなことをしたの?そんな愛で」
クリムちゃんも私の様子のおかしさを指摘してきます。……おかしな事、ですか。
「いえ、今の自分がここに居てもいいのか考えていたところです」
「わかっています。オシアは男の子です」
「……男の子と呼べる年齢ではなかったのですが」
凶悪少女はうきうきとした様子で私の頭をポンポンと撫でてきます。……なんだか変な感覚です。
「オシアちゃんは細かいことを気にしすぎています。だらぁと緩和されるといいですね。クリームちゃんを見習ってください。姿の変化を最大限に活用して私の膝の上で気持ちよさそうにゆっくりでいます」
ローレさんの膝の上で、クリムちゃんは幸せそうな表情をしながら彼女によりかかっています。……クリムちゃんには悩みがなさそうで羨ましいです。
「ねえねえっ」
突然、凶悪少女が私の服の袖を掴んできました。……小さな姿で一生懸命服を引っ張る姿は、まるで本物の子供みたいです。
「オシアちゃん。今は小さい私よりも大きい♪……ロアに甘やかされているクリムちゃんがうらやましい。ねえ、私もやってくれ♪」
凶悪少女は甘えた声で私におねだりをします。
「……いえ、私にはローレさんのまねする権利はありません。良い年した大人であった私が、年ごろの子供とくっつくなんて。社会的に、合ってはならない事です」
「それは一般的に望ましくないとされていた?」
「ええ。前の世界では、決してやってはいけない事でした」
「誰にも迷惑をかけませんが? 」
「まあ、そうだけど……でも、やっぱり精神的に良くないことだと思うんです」
「そう……」
私がおねだりを断ると、凶悪少女は儚い視線を私に向けてきました。……ちょっと、酷いことを言ってしまったかも。
「……それで、オシアはそれを維持して幸せでしたか?」
「えっ?」
大人しくなったはずの凶悪少女は、突然鋭い視線を私に向けてきました。……純粋な子供の瞳ではありません。すべてを悟った大人の目を向けてきます。
「目が多いところで社会的行動をとる。確かに他人との関係を築く必要がある…。でも目が少ないところでは?」
「目が少ない所?」
「少人数のグループでは、正義に反対できる人が有利だ……。オシアちゃん、クリムちゃんの話を覚えていますか?」
「ええ。確か、軍隊の話でしたよね」
「私、ロア、そしてほとんどの国の人々にとって、クリムは正しいことを言った。軍事力の圧倒的な違いを残すと、最終的には別の国に攻撃されるだろう。……しかし、それらの軍隊にとっては、クリムは奇妙な妄想でした。世界中にクリムを支持する人は圧倒的に多いですが、ザマの軍隊、狭い範囲に限定するとほとんどの人を拒否します。クリムちゃん...幸せになるには、うまく行動する必要があります。法律に違反している場合でも、少人数のグループで」
凶悪少女の長話は、あまりうまく翻訳できないみたいです。……でも、何故だろう。彼女の話を聞いていると、なんだか不思議な気持ちになってきました。
「アゼアさん。頼りない私の事、守ってくれますか?」
「うん! ええ、その通り ♪」
気が付くと、私はアゼアちゃんを抱きしめていました。
そして、抱きしめられた彼女は興奮しながら私のお腹に頭をこすりつけ始めます。
……この世界では、うまく立ち回ろう。前みたいなことにならないように。




