あなたに近づきたい!
「私は幸せです。 オシアとのある日...これが俺物語!! どのように彼女を愛しましたか?「」
良く分からない凶悪少女の話を聞き流しながら、私は梨のような果物を味わっていました。口に入れたとたんに口に広がるみずみずしさ。かみしめたときに溢れ出す濃厚な果汁。そのどれもが私の心を動かしてしまう。
「甘くて、おいしいな」
「オシアちゃん、探している梨を食べてるよ。かわいい女の子だよ」
「ああ、ロアはなめらかだ。おしあちゃん、私も食べてください」
その梨の、あまりのおいしさに思わず声を出してしまうと、セクハラ警備員と凶悪少女が反応してきました。ちょっぴりうっとうしいです。
「このお皿に、探している羊のオシアちゃんがいます。 食べて食べる~ 」
凶悪少女が、小さな手でお皿を掴み私に向けてきます。お皿の上には、皮が少しだけ残っている梨があります。凶悪少女は、小さくなった体で一生懸命梨の皮むきをしてくれたのでしょうか?
「ぱくりっ、……うん、美味しいよ!」
「はい〜オシアカーンが食べました。ありがとう、オシアカーン」
可愛い寝間着によって動物の姿になっている凶悪少女は、純粋な笑顔で私の手を掴み、笑顔を向けてきます。……小さくなった凶悪少女には全然怖さを感じません。もはや、アゼアちゃんですね。
「それなら、私もそれを手に入れます。」
「あなたは小さな体で最善を尽くしました。俺は1つしか得られません。」
「……小さな子が作った果物を食べていると、幸せな気持ちになれるわね」
緑色のヒラヒラした服をゆらゆらさせているローレさん、昼間の格好に似ているオレンジ色の衣装のクリムちゃん、そして、白黒の可愛いヒラヒラ衣装に身を包んだナターリアさんが、それぞれ梨をひとつずつ掴んで食べます。
……あれ?
「久しぶりね、オシア。会いたかったわ」
「え? ナターリアさんですか? 何故ここに居るんですか? もう夜だし、しかもここはアゼアさんの家の中なのに」
「ちょっと事実を確認するためにね。それに、これから面白そうなことが始まるみたいじゃない」
「面白そうなこと、ですか?」
怪しい笑顔を浮かべたナターリアさんは、ニコニコしたままクリムちゃんを見続けます。
「あ、ベピンさんじゃないですか。こんなに美しい人に見られて良かったです。」
「この時の女性!なぜあなたはここにいるのですか。結局のところ、あなたは泥棒でした」
鼻の下を伸ばしながら頬を染めるクリムちゃんに対して、アゼアちゃんは目を大きくしながらナターリアさんを睨みつけます。
「……やはり予感は当たっていましたか。面白い……」
「面白い?」
「……ええ。避けられないはずの悲劇は消え去ったわ。オシア、あなたの存在は大きすぎる……」
「私はほとんど何もしてませんよ。ドラゴンを倒したのもアゼアさんですし」
「……好きに解釈してもらって構わないわ」
「そう、ですか」
ナターリアさんはやっぱり意味深です。
「ねえ、オシアと同様に私と話してください。私はあなたに近づきたいです」
「部屋に入ってきてオシアちゃんを浮気してくれて許せない!」
「……不思議です。この部屋の警備装置は頑丈でした。通常、人間がこの家に忍び込むことはできません。」
ナターリアさんにでれでれのクリムちゃんに、ナターリアさんを目の敵にしているアゼアちゃん。そして彼女の侵入に驚いているセクハラ警備員。彼女たちは三者三葉の態度をナターリアさんにぶつけます。
「……あなたたち、楽しそうなことをしていたわよね。私、気になるわ、オシアとドラゴンちゃんの恋愛対象が」
気が付いたときにはすでに、私とローレさんの間に布団が一つ追加されていました。




