とある王子の話
「あれ? 何か体の感覚が変だぞ?」
1人の小さな子供が、体の違和感を感じているようです。
「髪が長くなってる。それに、手もきれいになってる」
あら大変、姿が変わってしまったようです。
「朝目が覚めたら、別人みたいな姿になっちゃうなんて……やったぜ、これで俺も7不思議の一つになれたな」
この少年に、自分の姿が変わってしまったら大騒ぎするという普通の行動を期待してはいけません。彼は我々のはるか先を行く人間ですから。
「お父さん、姿が変わっちゃったよ」
「そうか、まあいい。15歳になったとき、期待通りの力を身に着けてくれればそれでいい」
彼のお父さんは自分の息子の変化に、大して関心を持っていないようです。関心があるのは息子に将来付与される王族専用スキルと、もう少ししたらやってくる女の子の事だけです。
「うひひっ、あの女も粋なことしてくれるぜ。私ににあんな上玉を無償でくれるなんてな。あの国は本当に都合がいい」
数年後
「面白い。私を失望させてくれるとはな」
「……私、また何かやっちゃいましたか?」
おや、どうしたのでしょうか?
「私たちの国の王は、代々強力なスキルを受け継いできた。……だが、何だお前のスキルは。『結合』だと? 笑わせるな。指に乗る程度の大きさのものしかつけることが出来ないなんて、ふざけすぎもいい所だ」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか。王族専用スキルは努力とは関係なく勝手に生えてくるものですから? 私何かやっちゃいましたか~」
「……お前をこの国に残すことは我々にとって大きな恥となる。お前には、ザーマ国の例のあの場所を納めてもらう」
15歳になったばかりの王子は、親に追放されてしまったようです。
「例のあの場所って、あそこですか? 私達の国が侵略して機能停止してしまった、例のあそこですか?」
「そうだ。あそこでの活躍を期待しているぞ」
「任せてく~ださい♪」
王子さまは、追放されてしまったのに随分と元気そうですね。
「アゼアっ、ローレっ! 無事かっ!」
巨大なクレーターの中心で、私は二人の少女を探す。
……恐ろしいです、急に森が崩壊してしまうなんて。それにスキルのせいで凄く不快な気分です。でも、今はそれどころじゃない。アゼアとローレの無事が最重要だ。
「オシアちゃん……ごめんなさい、守ってあげると言ったのに。そこにいるのに、こんな危険な目に出会うなんて」
「……浮かんでいた、バカだった。森がおかしいところを疑うべきだった。実はオシアを守らなければならなかった」
二人とも、凄く悲しんでる。……でも、今はそれどころじゃない。ドラゴンが少しずつこちらに向かってきている。
「……私の力なら、あいつの攻撃を防ぐことが出来ます。その隙に、アゼアさんの……くっ」
ものすごい不快感。口がうまく動かない。立っているのも、やっとだ。
ああ、あいつらの姿が見えてきた。あの子供たち、あのおばさん……そしてあいつらが。ああ、ああああっ、
「あああああああああああああああああああああっっっ!」
「「オシアちゃぁあああああああああああああああああああん!」」




