9章「恩人か敵か」
猫達は私を構わず罵詈雑言を浴びせている。
大きな鳴き声で、頭がおかしくなってくる。
「早く言え!」 「この国をどうするつもりだ女王!」 「お前のせいで俺の娘は死んだ!」
胸が高鳴る。自分でも分かるほど心音は大きくなってくる。息が荒っぽくなって・・・
「もう、限界ニャ!」
私は猫達の死角に逃げた。
そこにはジェンティーレが立っていた。
「どうなされたのですか、女王陛下」
今なら、私の本当の姿を打ち明けられるかもしれない。
「実は・・・」
・・・・・・
「ふむ、にわかには信じられませんな。ですが、信頼する女王陛下の体を扱っている詩織様なのです、私は貴方を信じます。ここは私めにお任せ下さい。詩織様は自室でお休み下さい」
私は自室に向かったふりをして、影からジェンティーレの言葉を聞いていた。
「皆の者静まれ!!女王陛下は体調が悪くなられた!今日は皆帰るように!!」
猫達が従ったかどうか分からないが、ジェンティーレが近付いて来るので急いで自室に向かった。
・・・・・・
「失礼します」
ジェンティーレが自室に入って来た。
「詩織様は、これから変装させてお帰り頂きます。貴方様の、その『トラさん』というお方も悲しんでおられるでしょう」
「私は、どうしても貴方が信じられないニャ。だって、私をトラさんの所から無理矢理引き剥がして、私をさらっていった張本人だもの。貴方は」
ジェンティーレは悔いているようだった。
「私が信じられないのは、仕方ありません。さあ、お帰りください。詩織様」
私は半ば強制的に国を出ていかされた。