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美人すぎる幽霊に告って玉砕したらラブコメが始まった件 ~0から始める小説書き講座付き~(仮)  作者: 鬼影スパナ
超基礎編

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20話 ネタ出しとサイコロ ☆


 色々なことがあったが、無事家に帰還した。

 とりあえずは『ウミガメのスープ』の問題を作ってくるのが俺の役割らしい。


『いやぁ、あの3人のうち誰でもいいから弟子の恋人になってくれたら私も安心できるんだがなぁ。なんなら3人とも娶るか?』

「無茶言わないでくださいよ師匠。日本は一夫一妻制です」

『わかってるよ、内縁の妻というやつだ』


 分かってねぇやこの師匠。


「それよりエーデルガルドさんのパンツをさっさと鞄に突っ込んどきますか。月曜に返す約束もしたし」


 と、俺は机の引き出しを開ける。そこには紙袋に封印したエーデルガルドさんのパンツが――なかった。


「あれ? 俺、ここに入れましたよね?」

『ん? 無いのか? 確かにそこに入れてたはずだけど』


 引き出しの中のパンツは、紙袋ごとなくなっていた。

 部屋の中を探す。ゴミ箱もひっくり返してみたが、パンツは見つからない。机の中も鞄の中もついでにベッドの下も探してみるが見つからない。

 あれぇ? どこ行った?


 と、ドタバタしていたからだろうか。コンコンと扉がノックされてがちゃりと開く。


「ちょっとお兄ちゃん、どうしたの?」


 そう言って、俺の妹――葉庭あつめが顔を出した。


「ああ、いやその。ちょっと探し物」

「ふぅん。それって、コレ?」


 と、あつめが俺の探していたパンツいりの紙袋を手に持っていた。

 ……あの、何で持ってるんですかね?


「あの」

「その、勝手に部屋に入ってごめん。けどその、ありがとう」

「え?」

「これ、私への誕生日プレゼント、だよね? お兄ちゃん」


 ……はっ! そういえば明日、あつめの誕生日だった!? 師匠のごたごたですっかり忘れてた!


「えへへ♪ 今年のお兄ちゃんからの誕生日プレゼント、少しびっくりしたけど可愛いパンツだったね!」

「えーっと、その」

「ちがうの?」


 こてり、と首をかしげて俺を見るあつめ。……いやその、妹にパンツをプレゼントというのはちょっとないだろう。


「私への誕生日プレゼントじゃなかったら、なんでお兄ちゃんが女の子のパンツを持ってるの?」


 にっこりと微笑んで聞いてくるあつめ。

 ……たらり、と冷や汗が背を流れるのを感じた。

 なんで女の子のパンツをってそりゃ……うん。包帯として貰ったんだよ、なんて言っても到底信じるはずもないだろう……


「いやその。……サイズ合うかどうか心配でなー」

「確かにちょっと緩かったけど、大事にするよ! ありがとう、お兄ちゃん! 来年はブラも頂戴ね、ちゃんとサイズ教えるから!」


 そう言ってあつめは部屋から出て行った。エーデルガルドさんのパンツを手に……

 あぁぁ。なんかとんでもないことをやらかした気がする。


『弟子。妹への誕生日プレゼントに同級生の使用済みパンツをあげるとかすごい神経してますね。師匠はびっくりです』

「その……他になんて言ったらよかったんですかね……」

『いやー……正直に事情を話すしかなかったんじゃないかな?』


 というわけで、エーデルガルドさんにはパンツが返せなくなった件を連絡しておいた。

 妹に見つかって誕生日プレゼントとして持ってかれたってちゃんと書いておいたけど、信じてもらえただろうかこれ……?

 エーデルガルドさんからは『了解だよ』と返事があったが、少なくとも俺なら信じないな。



 ~~~



『そうだ弟子よ。メカクレ図書委員ちゃんが弟子の作品を読みたいと言っていたな。そろそろ弟子もなんか書こうか。月曜にメカクレちゃんに見せてあげるのを目標で、短編なんてどうだい?』


 気を取り直して、師匠から課題を出された。


「といっても師匠。俺今日プロットの存在教えてもらったばかりなんですけど?」

『なぁに、文章を肉付けする術は教えてるわけだし、すぐできるさ。なにせ短編なんてたった2500字も書けば十分。3000字も書けば重畳。気が乗ったらもっと書いてもいい。プロットも適当でもいいし』

「といっても、ネタが出ません」

『練習なんだし、適当でいいよ。……いいことを教えてあげよう。ネタなんてのは、1言(ひとこと)2言(ふたこと)の『キーワード』と、『疑問』から作ることができる』


 師匠がまた極端なことを言い出した。


『……そうだな、弟子、好きな食べ物は何だい?』

「え? えーっと。カレーですかね」

『じゃあ、「異世界」で「カレー」が食べたくなった勇者の話でも書いてみたらいい』


 なんと適当な。

 だが俺がそう思ったのが顔に出たのか、師匠は逆ににまりと笑う。


『おっとぉ? だが弟子よ。異世界にカレーなんてものが存在すると思ってるのか?』

「え? ……いわれてみれば、異世界にインドはないですもんね。材料から集めますか」

『そもそも材料も、お米があるのかすらも分からん』

「パンにカレーという手もあるのでは?」

『それで君の勇者は満足できるのか?』

「ふむ……」


 異世界でカレーを食べるためには結構な苦労がありそうだ。



『もう一ついいことを教えてあげよう。物語作りの簡単な基本は、「成功」「失敗」「その過程」だ。主人公が目的を持ったら、それを成功するか失敗するか考えてみよう。そして、その過程と結果が物語になる』


 尚、結果は成功しても失敗してもいいらしい。

 まぁコップを落として割っただけでも物語になるんだし、何かして成功か失敗かしたらそりゃ十分物語にできるんだろう。


『成功させるか失敗させるか、その匙加減は作者に委ねられる――が、それも面倒ならダイスを振って決めてもいい。1なら大失敗、10なら大成功、みたいに』

「え、師匠。何言ってんすか。ダイスってサイコロでしょ。サイコロで10とか」

『……弟子よ。サイコロは1~6までの物だけじゃないんだぞ。120面ダイスなんてのもあるんだから』


 師匠のおススメ的には10面ダイスらしい。

 ネットで検索したらクリスタルみたいなカッコいい形のダイスや、古いサッカーボールみたいなダイスが出てきた。100面ダイスとかゴルフボールじゃん。へぇ、こんなのがあるんだ。


『まぁ6面ダイス2つで2~12、でもいいがね。この場合期待値的に7が一番出やすく端の数字が出にくい。たまに出る極端な数値が思いがけない演出になってくれたりもしていいもんだぞ』

「そういうもんですか」

『そういうもんなのだ。常に成功し続ける上に都合の悪いことが一切起こらないご都合主義な物語も悪くはないが、私は多少の波乱があった方が好きでね』


 とりあえずサイコロがたまたま机の引き出しの中に1つ入っていたので、これを使って成否を決めてみることになった。


『折角だ。スパナ式プロット作成術と少しだけ組み合わせてみようか』

「え? でも今回これ短編で1話だけなんじゃ?」

『より細かい展開毎に分ければいいだけだ。材料の入手毎とかな。今回は文字数を無視して成否だけ決めてみよう』


 というわけで、俺は簡単にプロットを書いてみる。

 難易度の簡単そうな順に並べてみた。


 ▼・▼・▼


 1.異世界でカレーが食べたくなる

 2.材料を探しに行く

 3・野菜の入手

 4・お米の入手

 5・スパイス(カレールー)の入手

 6.結果


 ▲・▲・▲



『そうそう。良い感じだな。あ、じゃあ結果から振ってみようか。6なら大成功、1なら大失敗だ。間はそこそこの成功失敗だな』

「はーい」


 コロコロコロ……6。


『よかったな、無事にカレーは食べられそうだ』

「大成功、ってことは余程おいしいカレーが出来たんですかね」

『店を出したら大繁盛したとかでもいいぞ。大成功だし』

「なるほど。カレーがおいしかった以外にもそういうのもアリですね。んじゃ、他も振ってみましょう」


 コロコロコロ……



 ▼・▼・▼


 1.異世界でカレーが食べたくなる

 2.材料を探しに行く

 3・野菜の入手          3(やや失敗)

 4・お米の入手          1(大失敗)

 5・スパイス(カレールー)の入手 1(大失敗)

 6.結果             6(大成功)


 ▲・▲・▲



 結果が出るや否や、師匠は腹を抱えて大笑いした。


『あっはっはっはっは! いや、いや、持ってるなぁ!』

「あの……師匠。振り直してもいいですか?」

『だが断る! これで考えてみろ!』

「えぇぇ。スパイスもお米も、ついでに野菜も失敗してるのに超おいしいカレーが食べられたってことですか?」


 うーん。あり得るのかそんなの。無茶ぶりが過ぎる。

 師匠は浮いたまま腹を抑えてまだぴくぴく震えるように笑っていたが、落ち着いたのか息を大きく吐きながらひょいと手を挙げた。


『あー笑った笑った。あと私は思いついたぞ』

「本当ですか? 教えてください師匠」

『少しは自分で考えろ。と、だがここは師匠らしくヒントを出してやろう。……これを見る分に、主人公は材料の入手には失敗したらしい。だが、ほかの手段でカレーを手に入れることができた……弟子なら、カレーの材料が買えなかったとき、どうやってカレーを食べるかな?』


 ううん? カレーの材料が買えなかった時……どうやってカレーを食べるか……


「店に行って食べるとか」

『そうか。つまり異世界でカレーを売ってる食事処を見つけられた、でも大成功だな』

「材料見つけられなかったのに、そんな店はあっていいんですか?」

『その店の店主が独自の仕入れルートをもってたりしたらあり得るだろう?』

「店主が……なるほど」


 それを言っていいなら、店主が魔法でカレーの材料を創り出していたとか、日本に通じる倉庫があったとか、なんでもアリだった。

 ああ、そうか。こうやって『ウミガメのスープ』的な発想で、話の穴を埋めてくのか。



『お、これついでにウミガメの問題にもなるな。「異世界でカレーの材料を揃えられなかったのに、カレーを食べることはできた。なぜ?」って。いや、店主に日本へ還してもらえたって結末にして「異世界でカレーを食べたいと思ったら日本に帰還できた、なぜ?」とかでもいいなぁ……これは捻り過ぎか』

「……いいんですかそれで?」

『いいんだよこれで。まぁ、難易度調整に問題文やヒントは工夫する必要があるだろうが、こじつけに近い駄問になっても、初めて作る問題ってことでそのくらいが丁度いいだろ。そこは伊万里がなんとかしてくれるんじゃないか? 2人の共同作業! ひゅう、恋が芽生えるね!』


 しかし……元をただせば『異世界』と『カレー』から短編もウミガメのスープの問題もできてしまうのか。

 物語って、簡単に作れるんだなぁ……師匠が凄いのもあるんだろうけど。



 そう思って師匠を見ると、にしし、といつものように得意げな笑顔を浮かべていた。

 ……うん。凄いっていうか可愛いだなやっぱり。



 ちなみに、小説の方は師匠のアドバイスままで作るのもなんだったので、7つ集めると願いが叶う勾玉を集めてカレーを日本から召喚した、という結末にしておいた。





『そうそう、いいことを教えてあげよう。話のオチについてなんだけどね』

「オチ……っていうと漫才とか落語とかのあのオチですか?」

『そうそう。あれについてもいくつかパターンがある。これを覚えてると、面白い話を作りやすいんだ。特に落語は歴史が長くて洗練されてるから、参考にしてみるといい』


 というわけで、落語のオチを調べてみることになった。……と言っても今の時代、検索すれば一発で出てくるもので。


 ・地口落ち  :ダジャレや言葉遊びで〆るオチ

 ・拍子落ち  :とんとん拍子に進んで〆るオチ。「めでたしめでたし」等

 ・逆さ落ち  :立場が入れ替わってしまうオチ

 ・考え落ち  :ぱっとは分からないが、考えると分かって「フフッ」ってなるオチ

 ・まわり落ち :話がループして最初に戻ってしまうオチ

 ・見立て落ち :見立て違いの、意表をつく結末になるオチ

 ・間抜け落ち :間抜けなことを言って終わるオチ

 ・とたん落ち :決め台詞で終わるオチ

 ・ぶっつけ落ち:全く関係のないことで終わりにしてしまうオチ

 ・しぐさ落ち :身振り手振りで終わるオチ

 ・冗談落ち  :時間切れで「冗談言っちゃいけねぇ」で〆るオチ。定番の打ち切り



『と、だいたいこんな感じだな。単品だけでなく複合で使うのもあるぞ。……で、詳しい例文はおいといて……短編だと間抜け落ちとか使いやすいぞ。読者の反応としては「馬鹿だなぁ、ハハハ」ってなる。分かりやすい』

「なるほど、覚えときます。具体的なところはよく分かりませんけど」

『落語の話とセットで確認すればすぐ分かるさ。検索するとどういう話かとかも出てくるから調べてみろ。百聞は一見に如かずという言葉があってな、こういうのは私が細かく説明するより見たほうが理解が早い』


 尚、百見は一考に如かず、と言う言葉もあり、見るだけでは意味がないので「こういうのがこのオチか」というのをちゃんと考えて見るように、とのことだった。



 え、話のオチもサイコロで決めようかって? それってアリなんすか師匠。


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― 新着の感想 ―
[一言] 妹も兄の部屋を勝手に探るとかヤンデレのけがある? 「デッキ一つで異世界探訪」だと実際にデッキ作ってシャッフルして引いてみた手札で小説書いてるらしいですね 落語だと三題噺も小説の参考になる…
[一言] 同級生の使用済みパンツを妹への誕生日プレゼントにするとか業が深い……
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