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美人すぎる幽霊に告って玉砕したらラブコメが始まった件 ~0から始める小説書き講座付き~(仮)  作者: 鬼影スパナ
超基礎編

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14話 師匠の手紙


 チーン。

 居間にある仏壇にお線香をあげ、鐘を鳴らす。


 仏壇に飾られた写真は、生前の師匠だ。うん、俺の部屋で見る師匠そのまま……いや、少し若いか? それと、師匠の書いた本が添えられていた。


『やだもー、これ大学の時の写真だし! ちょっとハズいんだけど! ああでも私写真とかあんまり撮ってなかったからこれしかなかったのかぁ……もうちょっといい写真とっとけばよかったなー』


 師匠がうるさいけど、十分美人だと思うなこれも。


「どうぞ、召し上がって」

「あ、どうもです」


 と、師匠のお母さんに麦茶とお茶菓子を出されてしまった。煎餅だ。

 そして師匠のお母さんは家事があるとかでさっさと居間から出て行ってしまった。

 結果、俺と伊万里さんが仏壇のある居間に残るわけで。


「……それ食べたらさっさと帰りなさいよ」

「あー、うん」


 伊万里さんに睨まれつつ、煎餅をぽりっと齧る。


「って、ちょっとまった。いい機会だから、葉庭君にしっかり聞きたいことがあったの」

「ん? 何?」

「……ここじゃなんだから、私の部屋で聞くわ」


 嫌な予感がするが、ここまで来てしまっては断るわけにもいかない。

 いよいよ俺と師匠の事をしっかり伊万里さんに話す時ではないだろうか? と言うか別に秘密にすることもないんだし、そもそも俺は前に幽霊と知り合いみたいなこと言ってるし、実はそれが師匠だったっていうだけで。


 というわけで、残っていた麦茶をグイっと飲み干して伊万里さんについていく。

 伊万里さんの部屋は、全体的に白とピンクが多く、いかにも女の子の部屋って雰囲気だった。白くて丸い小さなちゃぶ台テーブルが可愛らしい。


「ここが、女の子の部屋……いやまぁ妹の部屋とか入ったことあるけど」

「……匂いとか嗅がないで。というか息しないでくれる?」

「死ぬわ! ……で、聞きたいことって?」

「ええ。ちょっとまちなさい。……これよ」


 と、伊万里さんはあたかも事件の証拠品のように透明なビニールのパックに入った、セロテープでくっつけられた手紙を取り出した。……間違いない、あの日、俺が伊万里さんに渡した師匠の手紙である。


「それ……って」

「ええ。あなたが持ってきた、姉からの手紙よ」

『おやまぁ。破り捨てたって言ってたのに』


 手紙をテーブルに置く。内容は、下書きのそれと全く同じだ。


 ~・~・~


  さびしい思いをさせてごめんね? 私、死んじゃった。

  色々とやり残したこともあるけど、後悔はしてないよ。ほんと

  姉としては不出来だったし、伊万里はしっかりしてるから私が

  いなくても、きっと大丈夫。長生きして、お母さんたちの老後

  の面倒をみてあげて。

  あと最後に一つだけ言わせてほしいの。

  ねこ大好き。

                    神原 加古


 ~・~・~



「……破り捨ててなかったっけ?」

「あれは、その。後で回収したのよ。冥府からの手紙とかいうから……万一、本当に姉からの手紙だという可能性もあったし……」

『それだけでゴミ箱から手紙の破片を回収しちゃうとか、あれ、伊万里ってば私のこと本当は好きだった? やだツンデレ? 胸キュンしちゃう』


 そんなこと言ったっけ? 覚えてない。あと師匠心臓動いてないでしょうが幽霊なんだし。


「でも、神原さんのお姉さん――加古さんは、犬好きなんでしょ?」

「そう、そうなんだけど……引っかかるのよ。……ねこ大好き、って、どこかで。……でも本当に姉は犬派のはずよ。だって昔私があげた犬のぬいぐるみ、大事にベッドに置いてあったもの……」

『あー、それあれかな。たしか5巻くらいのあとがき』

「5巻?」

「え? あっ!」


 俺の呟きを拾った伊万里さんの動きは迅速だった。

 本棚にきちっと並べてあった『凸マジ』。その5巻。そのあとがき。そして、その中にある「ねこ大好き」の文字を見つけた。「ねこ大好き。犬超好き!」と書かれている。


『え、なにこの子。なんで今のであとがきって分かるの? 弟子、5巻としか言ってないよね?』

「葉庭君。やっぱりあなたがこの手紙を用意したの? だから、5巻って?」

「い、いやっ! 違、違わないけど違う! 俺は代筆しただけだから!」

「代筆?」



 と、その時だった。


「伊万里! 大変、伊万里、ちょっときて!!」


 慌てた様子で師匠のお母さんが伊万里さんを呼んだ。


「加古からの手紙! 加古から手紙が届いたの!!」


 ……あ。さっきポストに入れたヤツぅ……何と言うタイミングだ……


「……葉庭君も来てくれる?」

「ええと……はい」


 俺は、有無を言わさぬ顔の伊万里さんにつれられ、リビングへと向かった。



 リビングでは、師匠のお母さんがハンカチで涙をぬぐっていた。そしてリビングのテーブルの上には昨日俺が師匠としたためた手紙が。封が開き、中身が開かれた状態で置かれていた。


『ちょ、お、お母さん!? あ、あれぇ、そんな泣くようなこと書いたっけかなぁ……』

「……ちょっと葉庭君。あの手紙って、葉庭君の仕業?」

「……いや、その。確かに俺の仕業だが、悪戯じゃないんだ……」

「ああ伊万里、見て、これ、加古の!」


 伊万里さんの腕を引っ張り手紙を見せる師匠のお母さん。


「落ち着いてお母さん。こんなの悪戯よ。タチの悪い……」

「いいえ、私には分かるわ。これは加古の手紙よ。筆跡は全然違うけど、内容が間違いなくあの子の文体だし、それに、アレもあるもの」

「アレ?」


 ~・~・~


  ハロー、お母さん。お元気ですか?

  私は死んでます。これは弟子に頼んで書いてもらう予定です。

  いやだって、自分の遺言とか恥ずかしくて直筆できないしね。

  一応、行き違いが無いように言っておくと伊万里にも手紙を書

  きます。既に伊万里には届いてるかもね。伊万里は私の事嫌い

  だったからきっと手紙を破って捨ててるかもね? でもまぁ、

  言いたいのは長生きしてねってくらいだから。そんじゃね。


                    神原 加古


 ~・~・~


 今回は前回の反省点を踏まえてあらかじめ用意しておいた遺言風に、と師匠がまとめた文章だった。

 そういや師匠、何気に弟子って俺の事書いてあるんだよな……


「……これがどうかしたんですか?」

「ここを見て」


 師匠のお母さんが、そういって指さした先。それは、各文章の先頭だった。


「『ハ私い一きだい』……? お母さん、これがどうしたの?」

「全部ひらがなにして、先頭の文字をつなげると……濁点は外して……」

「……『ハワイ行きたい』?」

『さすがお母さん。私の仕込みをよくぞ見破ったね! あっはっは!』


 何仕込んでんの師匠!? あっ、だから改行とか文字の間隔とかめっちゃこだわってたんすか師匠! そんなにハワイ行きたいんですか!?


「……それだけじゃないの」

『ッ』


 師匠の笑い声が止まった。


「斜めもよ」

「斜め?」

『ちょ、ちょま! 弟子、止めろ、早く止めるんだぁ!』


 もちろん俺は止めなかった。


「『ハはだ行既き長』……『母大好きな』……? 母大好きな、神原 加古……」

『のわぁあああああ!! バレ、バレたぁあああああ!? くっそぉおおお!』


 恥ずかしさのあまりのたうち回る師匠が俺には見える気がする。なんてこった、まさか二重に仕掛けられていただなんて……!?


「ちょっと待ってお母さん」

「伊万里?」


 と、伊万里さんは自分の部屋から、例の手紙を持ってくる。


「……ああ、これは分かりやすいわね。わざわざヒントまで……」

「『さ色姉いのあね』……『最愛の姉』……って……!」

『で、弟子ぃ……殺してくれ……私をっ! こ、こんな羞恥プレイッ……! あ、ちなみに伊万里のは即興でやったから他には仕込んでないよ……』


 師匠、あんたもう死んでるから……



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― 新着の感想 ―
[一言] 「……匂いとか嗅がないで。というか息しないでくれる?」 おお、テンプレ……ではなく王道。 シンプルだけど分かりやすくて、 匠の技が所々に散りばめられている。 さすがと感想を残したいけれど、…
[一言] やはり師匠がメインヒロイン
[一言] たて読みはすぐわかったけど斜めもあったのか よう仕込めるなぁと驚きました
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