追放
僕はカイト。勇者パーティの一員だ。
僕の職業である「盾テイマー」は才能のなかった人間の最後の墓場である。
自分で戦う力を持たない者、特化した才能がない者が最終手段として成るありふれた職業だ。
しかし僕は、そんな最低で最弱の職業でありながらも勇者パーティに加入し、辛うじてその中で貢献してきた。
「お前、今日から首な!」
「え……?」
「いや、いい加減気づけよ(笑)自分が足引っ張ってること。いやね、最初の頃は頭数(魔物)を増やせて攻撃を受けてくれる存在は有り難かったけどさ。今のパーティの方針は「バフして高火力でゴリ押し!」がモットーだからお前要らないわけよ」
「で……でも! バフする間に攻撃を受ける存在は必要だろ!?」
「それがな、昨日クレア(賢者)が2重バリア魔法覚えちゃってさ、それ使えばタンク役要らないわけ」
便乗してクレアが言う。
「私も大人だから、あんたに存在意義がある内は何も言わなかったんだけど、今なら言わせてもらうわ。まず、強い弱い以前にあんた陰キャ過ぎ。一緒に街を歩くのが恥ずかしかったんだけど。基本挙動不審で初対面の人にはキョドッて必ず語頭に「あっ」って言うし、そのくせパーティ内では自分の趣味の事めっちゃ話してきてマウント取って来てウザかったし。後ついでに息も臭いし。ちゃんと歯ぁ磨いてる? みんな大人だから何も言わなかったけど、全員あんたのこと嫌ってたよ」
僕の中で何かが割れる音がした。
「うっ……ううっ……」
「おいクレア! 言い過ぎだって! ……まぁそう言うことだ。悪いが今日をもって俺たちのパーティを抜けてくれ」
「うわーーーん!!!!」
僕は悲しくてその場から走り、立ち去る。
みんな僕のことをそう言う風に思ってたなんて……。
あの僕に向けてくれた笑顔は作り笑いだったって事か???
それになんだよ、新しい魔法覚えたからって僕のこと用済み扱いかよ……。
僕は当てもなく町を歩く。
すると、どこからか怒号が聞こえてきた。
「何やってんだよっ!!馬鹿ギツネ!!」
男は狐耳に少女を殴る。
「うっ……」
奴隷の獣人か?
何やら失敗をして主人に殴られてるみたいだ。
「本当に使えないなお前は! 俺がこれから躾をしてやるから、反省しろ!!!」
男は拳を振り上げる。