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第23話

 歩きなれた道を歩くと冒険者ギルドのすぐ近くに、立派な石塔がついた建物が見える。ここが治癒院だ。幸いヴィートはここにお世話になった事が無い。闘技大会の治癒士は治癒院から派遣されていた僧だった。


 治癒院は治癒魔法を使って怪我や病気を治す施設で、運営は女神教が行っている。女神教とは、世界のどこかに女神が囚われた塔があり、そこから女神を救う事が人類の義務だと考えている宗教だ。塔を探すために、未知を切り開く冒険者を強力にバックアップしている。治癒院もその一環だ。女神教の聖職者は基本的には無欲で僧と呼ばれる。


 扉をくぐると内装はほとんどない。質素倹約を旨としているためだろう。すぐに受付の男性職員が話しかけてくる。


 「あ、オーレリアさん。お待ちしておりました。そちらの方が?」

 「ああ。“狂()”のヴィートだ。」

 「(狂犬って地味に広まって来てるな……。)冒険者のヴィートだ。よろしく。」

 「今日はよろしくお願いしますね。今回は原因不明の不調を訴える患者から、口の固い冒険者に協力を依頼してます。」

 「何か大事になってきてない?何もわからないかもしれないんだけど……。」

 「ええ、患者にも駄目で元々、とは伝えています。それではこちらに。」


 職員に案内されて治癒院の奥に向かう。手前側は比較的軽症の者が集まる大部屋で奥は重症か、訳ありの者が集まる個室となっている。


 先導されて入室すると顔色の悪い男がベッドに横になっていた。


 「例の件で来てもらっています。」

 「……お前、“怪力”か?」


 ヴィートもそこそこ名が売れてきている。同じ冒険者なら顔を見たこともあるだろう。職員が即座に釘を刺す。


 「詮索は無用、となっているはずですよ。」

 「あ、ああ。すまねえ。この体を何とかしてもらえるなら何も言わねえよ。」

 「早速ですがお願いします。」


 情報もろくにもらえないまま診察が始まる。どうにも試されている。探査魔法はかなり特殊で、使える人間は多くない。そのため厳重を期しているようだ。


 男の側により自身の魔力をゆっくりと侵入させていく。これで他人の体内もある程度はわかるようになったが、知識が足りないため自分の身体と見比べながらなんとか診察するしかない。

 全身くまなく探っていると、体内に魔力を持った何かの破片が入っているようだ。それが周囲の内臓を傷つけ痛ませるのだろう。魔力を持っているのも良くない。魔力操作ができない者にとって自由にできない魔力が停滞していると自然な流れを阻害する一因になる。


 「どうやら体内に異物が入り込んでいるようだ。魔力を持った何かの破片だな。それが内臓を傷つけている。痛みや不調があるはずだ。ちょっとどうにかできるか試してみる。」


 そのまま破片に集中し、破片を分解して魔力に還元し、自身に取り込むイメージで魔力を操作する。物質を操作したり、強化するのには大して魔力は必要ではないが、現象を引き起こす事はそこそこ魔力を消費する。今回は破片の分解が物質の操作、分解した破片を魔力に変化させるのが現象の発生にあたる。


 ちなみに最も魔力を消費するのが物体の創造でこれにはまだヴィートは手が出ない。それこそ神レベルの魔力が必要になるだろう。


 閑話休題。体内の破片を分解し魔力に還元すると、かなりの量の魔力があふれ出した。破片は魔石だったのだろう。そのまま搾り取る。一般魔法使い5人分は魔力を消費したが、ヴィートの魔力からしたら微々たるものだ。


 「今、破片を除去した……どうやら魔石か何かだったようだ。あとは、内臓に治癒魔法をかけてもらってくれ。それで治るはずだ。」

 「すぐ、手配します。」


 職員はすぐに外へと出る。


 「魔法を使われている間は痛みなどはなかったか?」

 「なんか身体の中を動いてるのはなんとなくわかったが、そんなにいやな感じじゃなかったな。すこしくすぐったいぐらいだ。それにしても本当にもう終わったのか?」

 「まぁそれは治癒魔法が終わったら実感できるはずだ。」

 「しかし、探査魔法だけなんじゃなかったか?原因の治療が出来るとは聞いてないが。」

 「初めてやった。出来そうだったからな。」


 「「…………。」」


 「嬢ちゃん、コイツちゃんと見張っておいた方がいいぞ。何するかわからん。助けてもらっておいてなんだが。」

 「ああ、しっかり見張っておこう。こんな性格していたことを忘れてたよ。」

 「いいだろ!?別に!おっさんは助かったんだし。」

 「すみません、只今戻りました。」


 職員が治癒士を連れて戻ってくる。あの大会の時に世話になった僧侶だ。


 「あ、あの時の。手の調子はどうですか?」

 「さっき詮索は厳禁だ、って説明したばかりじゃないですか!」

 「あぁすみません。すぐ治療にかかりましょう。」

 「せっかくだから俺も手伝うよ。探査魔法を掛けながらなら治癒魔法も捗るだろ。」

 「そうですねお願いします。かける場所がわからないと、結局内臓全部に治癒魔法を掛ける事になりますから。」


 そう言って治癒魔法を使う僧侶。ヴィートはそれに合わせて探査魔法を使った。放たれる治癒魔法を魔力を使って誘導し、傷ついた場所へと当てる。


 20分後には全ての部分を癒し終えた。


 「よし、これで傷ついた内臓は元通りだ。」

 「確かに痛くないぞ!事故の前に戻ったみたいだ!」

 「事故?」

 「治療も終えましたし、もう話してもいいでしょう。この方は魔石の搬送を護衛していて、魔物の襲撃にあいました。その際、馬車の下敷きになってしまったのです。」

 「それで急いで治癒院まで搬送されて、傷を塞いでもらったんだがどうにも腹の中が痛んでな。治癒魔法を掛けてもらっても、その度に痛むから困ってたんだ。」

 「あー、それは多分、魔石の破片に治ろうとした内臓が食い込んでたんだな。」

 「しばらく様子をみて、何事もなければ退院となるでしょう。ご依頼の探査魔法が人体にどう影響するのかの件もその折にお伝えします。」

 「ああ、ありがとう。世話になったな。」


 狭い病室に5人もいると流石に窮屈だ。今後の事を少し話して、その場は解散となった。


 ヴィートとオーレリアの2人はクライグ伯爵邸に帰っている。付き合わせた詫びにと夕食に誘われたのだ。


 「ヴィート、今日はすまなかったな急に。何かと忙しくしているようだから、来た時に済ませてしまおうと思ってな。」

 「いや、構わないよ。」

 「しかし、あんな魔法も使えるとは……誰かに師事したのかい?」

 「訳あって誰に習ったのか言えないけど、まぁ師匠の腕はいいだろうね。多分世界一じゃないかな?」

 「世界一とは大きく出たな。」


 そんな話をしながら歩いていると、いつぞやの派手な馬車がすぐ横に止まった。サンドラ子爵家の馬車だ。それに気が付いたオーレリアは渋い顔をしている。御者がすまなそうな顔をしている……。


 「おお、探しましたぞオーレリア嬢!」


 馬車から出てくるなりそう言い放ったのは小太りの男だ。顔が横に大きい。平均的な顔立ちの人間を上からぎゅっ、と潰すとこんな顔になるだろうか。馬車に負けず劣らず派手な服を着ている。黄色の服に金で刺繍がされており全身が光っているように見える。とてもではないがこれを着る勇気は無い。


 「サッシュ殿、何か用ですか?用が無いなら帰らせていただく。」

 「はっはっは、ご冗談を。どうです夕食を一緒にいかがかな?」

 「お断りします。男女が会食などどう噂されるかわかったものではありません。」

 「噂など言わせておけばいいのです。さ、参りましょう。王都一のレストランへご招待しますよ。」

 「くどいですよ。あまりにしつこいようであれば人を呼びます。」


 ヴィートは小声でオーレリアに聞いてみる。


 「こいつが例の?」

 「ああ。サッシュ=サンドラ。サンドラ子爵家の一人息子だ。」


 「なんだ貴様!平民風情が私とオーレリア嬢の会話に割り込んでくるとは!」

 「なんだ、って言われても。元々俺たちが歩いてた所にあんたが割り込んだんだろ。」

 「何だと!……ん?貴様その腰の剣は!?」

 「あぁー、見つかっちゃったか。」

 「その剣は私の(・・)水晶剣だぞ!貴様風情が持っていいものでは無い。すぐに返すなら不問にしてやろう。さあ返すがいい。」

 「いやいや、あんたのじゃないだろ。ちゃんと店で買ったものだ。」

 「平民が貴族に尽くすのは当然だろう。私の剣を横取りしたのを大目に見てやると言っているのだ。私は貴様を斬って捨てても構わんのだぞ!」

 「…………へぇ、抜くのか。俺の前で。剣を。」


 ヴィートの身体から殺気が噴き出す。周囲の空気が2、3度低くなり、異常な緊張感が辺りを包む。何か一つでも間違えれば死人が出るような、一触即発の空気。御者とサッシュは空気に飲まれてしまい顔色が青い。


 「待て!ヴィート!流石にマズイ。落ち着くんだ。」

 「何おかしな事言ってるんだ?オーレリア、俺は落ち着いているよ。」


  そうは言うもののヴィートの眼はギラついていて、どろりとした闇が覗いている。切り捨てても構わない、口にしたのはサッシュの方だが、その覚悟が済んでいるのはヴィートの方だ。


 オーレリアの脳裏には今までのヴィートの行動が蘇っていた。それらの経験が確かに言っている。ヴィートはヤると言ったらヤる男だと。常人には踏み越えられない一線を時として何食わぬ顔で踏み越えてしまう、そういう男だと。サッシュが死ぬのは構わないが、数少ない友人を犯罪者にするわけにはいかない。


 「頼む、ヴィート。抑えてくれ。頼む!」

 「……そこまで言うのなら。」

 「き、貴様、なんだその顔は!ふ、不愉快だ!帰らせてもらう!」


 オーレリアがヴィートをなだめている間にサッシュが騒ぎ、慌てて馬車へと乗り込んだ。サッシュの姿が見えなくなると共にヴィートが発していた殺気が収まっていく。


 「はぁ……なんとかなったか。ヴィート、相手は曲がりなりにも貴族、いくら腹が立っても、殺したらルート王国全体を敵に回す事になるんだ。考えて行動してくれ。」

 「悪かったよ。本当に殺す気はなかったけど、やりすぎたと反省してる。大事にしてる剣の事を言われて、冷静じゃなかったみたいだ。」

 「私の事情に巻き込んだのだからあまり強くは言わないが。」

 「なあオーレリア、さっきのサッシュだったか、このまま引き下がると思うか?」

 「うん、私も気を付けるが……ヴィート、君は特に気をつけろ。あの男、というかあの男の父親であるホルスト=サンドラ子爵は黒い噂が絶えない方だ。」

 「ああ、やっぱりトラブルの匂い……いや引き起こしたのは俺なんだけど。」

 「大いに反省したまえ。」


  安心したようで、微笑みながらオーレリアが茶化した。その笑顔に一瞬引き込まれる。サッシュの事は理解できなかったが、ただ一つ、オーレリアに言い寄る気持ちだけはわかる気がした。


 その後当初の予定通り、クライグ邸に夕食をおよばれすることになった。とは言っても貴族のマナーに疎いヴィートの為に、オーレリア、ニコラスとヴィートの3人というごく私的な食事会だ。用意した部屋もしっかりと内装は整っているものの8帖程の小さな部屋だ。


 「ちゃんとした晩餐ではないから、くつろいでくれ。」

 「貴族の家に呼ばれた事ってないから、こういうのはありがたいよ。」

 「冒険者を続けていると、貴族家からスカウトがあるそうじゃないか。少しずつ慣れていった方がいいんじゃないか?」

 「いや、スカウトされても受けないから。冒険できなくなっちゃう。」

 「そうですよね。冒険してこそ冒険者!って感じがします。」

 「ニコラス、世の中ヴィートみたいな冒険者ばっかりじゃないんだ。大抵の冒険者は生きていくのに必死で、貴族家からスカウトされたらすぐ飛びつくと思うぞ。」

 「そうなんですか?うーん……。」

 「まぁ、下っ端の冒険者はほとんど狩人と一緒だからな。俺も1年前位までは田舎で獣ばっかり狩ってたし。」

 「その1年前に何があったか聞いても?」

 「師匠と出会った事かな。それで魔法が使えるようになって、戦闘剣道場に入門したんだ。」


 話をしていると食事が運ばれてくる。メインは王都らしい、牛肉のステーキと川魚を焼いたもの、野菜の漬物、それから白パンだ。


 料理は全ていっぺんに並べられている。ヴィートは前世の一皿ずつくる形式を思い出していた。


(そういえば、寒い地方で温かい料理を食べるために一皿ずつ持ってくるようになったんだったか。)


 王都は近くに川が流れており、皆が生活に使用している。現代の様に科学洗剤や工場排水がある訳では無い為、生物が生きていける環境にある。排水が多いためかなり濁っており、ナマズやコイといった汚い環境でも生きていける生物が生息している。王都の住人にとっては牛肉の次になじみ深い食材と言えるだろう。

 今回の夕食に使われているのは鱒の一種で、王都よりも上流の綺麗な所に住んでいる魚だ。王都においては高級品だったが、ヴィートの故郷はすぐ近くに清流が流れており、結構食べ慣れている。


 食卓に料理が並べ終えるとオーレリアが音頭を取った。


 「それでは乾杯。」


 注がれたのはワインだ。口に入れると濃厚な香りと渋みが広がる……市井で飲まれているような薄いワインとは違いかなり濃い。正直に言って初めてちゃんとしたワインを飲むヴィートには口に合わない。かなり渋い顔をしているとオーレリアに笑われてしまった。


 「ふふふ。濃かったかい?」

 「ああ、町のワインはもっと薄いから。渋くってびっくりした。」

 「貴族や金持ちが飲むワインは一番搾りと言ってブドウの果汁しか使われていないんだ。一般に出回っているワインは二番搾り。一番搾りを搾った後の皮や果実に水を加えて作る物だ。正直に言うと私も二番搾りの方が好きなんだが。」


 オーレリアはそう言いながら涼しい顔で飲んでいる。酒精も二番搾りに比べて強いのだが酒に強いのだろうか。

 ニコラスはビールを飲んでいる。この国のビールはハーブが入っておりほんのりと甘く、酒精もかなり低い。滋養にいいとされており子供もよく飲む。


 川魚のソテーを頬張る。バターとハーブが効いた繊細な味だ。ホクホクの身が口の中でほどけるのがたまらない。

 牛肉のステーキにはキノコを使ったソースがかかっており香りが良い。結構な厚みがあるがかなり柔らかくなっている。肉を柔らかくするように漬け込んであるようだ。

 野菜の漬物はキャベツとカブだ。酸っぱくて爽やかな味がする。ソテーやステーキの合間に食べると口の中をスッキリさせてくれる。


 田舎の方はまだまだ調理技術が未熟だが、貴族の食事は美食の最先端。王都における美食の萌芽を感じさせた。


 「これはうまいな!魔牛肉は飽き飽きしてた所だけど、まだまだ食べられそうだ。貴族って毎日こんなの食べてるのか?」

 「今日はもてなし用のメニューだな。うちは軍に所属している者がほとんどで、質実剛健を宗としているから豪快な物が多い。焼いた肉だの、デカいパンだの。」

 「なんか貴族って言うより山賊みてーだ。」

 「ヴィート、私たちの前だから冗談だとわかるが、余所ではそういう事言うなよ。貴族はプライドが高い者が多いからな。」

 「わかってるよ。そもそも貴族と関わる事もそう無いとは思うけどね。」

 「わからんぞ?お前ももうすぐ銀級だろう?接触してくる貴族も多いと思うぞ。」

 「ヴィートさん、銀級に昇格されるのですか?」

 「あー、明後日に試験やるとは聞いてる。何やるかは知らないけど。それ次第かな。」

 「おめでとうございます!」

 「ありがとうニコラス。嬉しいよ。」


 満面の笑みで祝福してくれるニコラスの顔を見ると、その純粋さが眩しく、少し照れくさくなってしまう。適当に流すこともためらわれて真摯に返礼した。


 食事を終え、お茶が供される。茶葉自体は良い物なのだろうがキュッパーの出すお茶に比べると少し物足りない。クライグ家のお茶がまずい、というよりはキュッパーのお茶のクオリティが高すぎるのだが。


 お茶を飲んでいると急にドアがノックされた。


 「私だ。入るぞ。」


 入ってきたのは立派な髭を蓄えた頑健な男、3、40代だろうか。髪は赤い短髪で肌は浅黒い。かなりしっかりした体つきで鍛えているのが分かる。しかし服装から見るにかなりの高位な人物であるようだ。


 「父上!今お戻りですか?」

 「あの石頭のオーレリアが男を連れ込んだというじゃないか。顔を見たくってね。」


 父上、という事は彼は当主アーメット=クライグなのだろう。不敵な笑みを浮かべている。軍人という話だったが、なるほどいかつい顔だ。


 「オーレリア、なんとなく誰かはわかるが紹介してくれ。」

 「ああ、こちらは私の父であるアーメット=クライグ伯爵。父上、彼は友人で冒険者のヴィートです。」

 「ヴィートと言います。よろしくお願いします。」

 「ああそんなに硬くならずともよろしい。私もそういうのは苦手なのだ。聞いたところによると新進気鋭の冒険者らしいな?」

 「師や友人にと恵まれて何とかやってますよ。」

 「私もグラニットと親交があってな。最近見どころのある冒険者がいるとしきりに話していたぞ。例の剣を買い取ったと聞いたが。」

 「ああ、宵闇ですか。はい、買いました。」

 「見せてはもらえんだろうか?」

 「構いませんよ。」


 腰に差している宵闇を抜いて魔力を込める。


 「おお、なんと美しい……魔力を実戦レベルで使える者はかなり少ないのだ。ヴィート君は王軍に入るつもりはないかな?」

 「申し訳ないのですが冒険者を辞めるつもりはありません。」

 「本当に?1日3食、4日に1日休日が入るぞ?」

 「いや、冒険者はもっと休みが多いですよ。」

 「何だったらその戦闘力を見込んで准士官から始めてもいいんだぞ?」

 「准士官ってどのくらいもらえるんです?」

 「月に金貨6枚だ。」

 「やっぱり冒険者の方が稼げますよ。」

 「うーむ……やはり駄目か。」

 「父上、勧誘はその辺にしてもらえますか。」

 「おお、すまない。ついな。ニコラス、夕食は全部食べられたかい?」

 「はい、父上。最近調子がいいのです。」

 「それは良かった。でも、油断してはならないぞ。これから冬が来るからしっかり体を温めなさい。」

 「はい。僕も身体を良くしてヴィートさんのように強くなります!」

 「はは、ヴィート君の様にか。随分慕っているようだな。ヴィート君、オーレリアとニコラスをよろしく頼むぞ。」

 「はい、もちろんです。2人とも大事な友人ですから。」


 クライグ卿が顔を近づけ小声で話をする。


 「オーレリアも年頃だからな。君が良ければ友達から踏み込んでもいいんだぞ?」

 「い、いやそう言うのは……。」

 「?何の話をなさっているんです父上?」

 「い、いや何でもないんだ。なぁヴィート君。」

 「は、はい。アーメットさん。」

 「ふーん?」

 「あぁ、そろそろ私は失礼するよ。ゆっくりしていってくれ。」

 「ありがとうございます。」


 そしてクライグ卿が部屋を出ると、部屋の空気が弛緩する。相手がフランクだからとはいえやはり伯爵、どこか緊張していたようだ。


 その後しばらく話をしていたが、いい時間となったためヴィートは宿に帰った。

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