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テスタメント ~底辺冒険者の俺が神になるまで~  作者: 硬体
第1章 旅立ち&王都前編
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第16話

 3日後の朝、約束通りマリと遊びに出るヴィート。マリはいつもとちがって可愛らしいワンピースを着ている。


 「お、今日はかわいい服着てるな。」

 「今日は、って何?いつもかわいくないみたいに。」


 といいつつマリの表情は明るい。ヴィートの反応は間違ってなかったようだ。


 ヴィートといえばルイスの町で買ったシンプルな服だ。流石に冒険者スタイルの時とは違って鎧は身に着けていない。しかし鎧をつけていれば冒険者だとわかるが、丈夫で質素な服を着ているとスラムの住人に見られかねない。ルイスでのシンプルは王都では粗悪だった。


 「ねえ、その服どうにかならない?」

 「うーん。これ以外に持ってないしなー。服買いに行くか。」


 2人で中央区の商店へ向かった。


 「ここが最近流行なんだって。服選んだげる。」

 「ああ、せっかくだから頼むよ。」


 ついたところは服飾専門の商店“ベンジャミン商店”。今までになかったスタイルの服を次々と発表している流行の最前線との噂だ。ルート王国では服飾の流行は貴族が作る物だったが、このベンジャミン商店をはじめとして平民向け商店が生まれたことで近年平民の中での服飾文化が始まった。今日マリが着ているワンピースもその近年の流行で生まれたものだ。


 店に入るとずらりと服が並んでいる。色とりどりの生地が目に鮮やかである。これも近年の平民文化から生まれたスタイルだ。以前は御用商人が貴族に生地サンプルを持って注文をとり、一から仕立てるのが基本だったが、手間がかかりすぎたため今のスタイルが確立した。貴族も“選ぶ楽しさ”を味わいにお忍びで来ることがあるらしい。流石に社交では着れないため寝間着や部屋着にしているようだが。


 「いらっしゃいませー。今日は何をお探し?」


 店員だろう、派手な服を着たおばさんが話しかけてくる。


 「この人にもっとまともな服を見繕ってあげたくて。大丈夫、ボロい服着てるけど結構お金持ってるから。」

 「ぼろって。」

 「結構カッコイイじゃない。あなたの旦那さん?」

 「旦那って!…………旦那って!!」


 マリは恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。心なしかマリの発した熱量で部屋の温度が上がっているような気がする。


 「いや、そんなんじゃないよ。」

 「あら、じゃあ恋人?」

 「こ・い・び・と!」

 「おばさんも人が悪い。あんまりコイツで遊ばないでくれ。」

 「ふふふ。ごめんなさいね。初々しくって!」

 「服の事はよくわからないんだ。今売れてるやつって?」

 「そうね……貴族式の半ズボンを長ズボンにした半貴族スタイルはどう?」


 店員が明るい黄色のスーツを取り出す。金で刺繍されておりかなり派手だ。また体にぴっちりと張り付くほどの小ささでボディラインが強調される。


 「ちょっと派手すぎない?体のラインが出過ぎる気がするなぁ。」

 「平民の男の人は結構気にするわよね。じゃあコートなんてどう?ネアトリーデ魔国では伝統的なスタイルなんだけどルート王国の冬にもばっちりよ。」


 取り出したコートは紺のロングコートで生地は羊毛だろう。前世でも充分通用する。紺のズボンもセットとなっている。もう季節は秋半ば。ルート王国は肌寒くなってきていて季節も丁度いい。


 「へえーなかなかいい感じじゃないか。こういうコートにはやっぱりシャツを?」

 「ええ。ネアトリーデ魔国風にシンプルな白シャツを合わせたらいいかもしれないわ。よかったら首元にフリルがついたやつとか、ぱりっとした襟のついたやつとか試してみて。」

 「ほら、マリいつまで呆けてるんだ。どれが似合う?」


 オーバーヒートして別の世界に行っていたマリを引き戻す。


 「あ、ああごめんなさい。えぇと?」

 「このコートがいいな、って思うんだけど、どのシャツが似合うと思う?」

 「そうねぇ、基本的に鎧着てて余所行きなんて滅多に着ないでしょう?それだったら少し派手でもいいんじゃない?」

 「なるほど。じゃあコートとセットのズボン、フリルのシャツを下さい。あ、せっかくだから色違いの茶色の一式も。」

 「それじゃ全部で金貨2枚ね。」

 「はい金貨2枚。着て行っていいかい?」

 「ええ、奥の着替え室で着て行ってちょうだい。」


 奥の小部屋で着替えてくるヴィート。農村で生まれ育ったヴィートは服を選ぶという経験が無く、前世でのファッションセンスが元となっている。フリルや派手な物を嫌うが、せっかくなのでマリに任せてみる事にしたのだ。


 「着てみたけどどう?」

 「うん。男前になったね。」

 「あらあら、素敵!せっかくだからアクセサリーも買っていったら?」

 「アクセサリーはさておき普段履けるブーツが欲しいんだけど。」

 「残念だけど革製品は革加工ギルドの領域だから手が出せないの。ごめんなさいね。近くに革を扱う商店があるから行ってみるといいわ。」

 「そっか。じゃあ後で行ってみるよ。せっかくだからマリも選んでみれば?まあ手持ちに余裕もあるし奢ったげるよ。」

 「いいの?私、おしゃれな冬服欲しかったの!」


 この3時間後、ヴィートは安易な気持ちで服を奢ると言ったのは失敗だったと後悔するのだった。


 昼になるとヴィートの知っている店は飲み屋かいつもの煮込み屋なので必然マリが店を選ぶことになる。そこでマリが選んだのは中央区の食堂。法国の伝統料理であるパスタを使った料理を扱う食堂だ。


 結構繁盛しており、よく出ているメニューは王都名物の魔牛肉を使ったミートソースのようだ。他にも保存のきくチーズを使ったものやベーコンを使ったものが安く人気がある。本来法国では海鮮を使っているのだが、うまくルート王都風にアレンジしている。


 「こんな店があったのか。」

 「ええ。いいところでしょ?休みの日はたまに来るの。」


 ヴィートはミートソースを、マリはチーズを絡めたものを注文した。


 「これはうまい。肉感というのかな。しっかりと肉の味。でも単純じゃないいろんなものが混ざった奥深い味がするな。」

 「わかる?一度ご主人と話したけど元のスープにかなり手が込んでるって話よ。」

 「ふーん。やっぱりうまい物を作るって大変なんだなぁ。」

 「そうよ。感謝なさい。」

 「いや、別にお前んとこの煮込みをほめた訳じゃないんだけど。」

 「それじゃうちの煮込みがマズイって訳?」

 「いや、うまいよ。実際。そうじゃなきゃあんなに毎日来ないって。」

 「私に会いに来てるんじゃないのー?」

 「まぁ少しはそれもあるかな。さ、食べたら次の店を見よう。」


 マリが何度目かの赤面をした所で食事を終え革製品の店を見る事にした。いくつか余所行きの黒いブーツと牛革の鞄を買ったが、まだまだ日は高い。そこで大劇場に行ってみることにした。


大劇場は貴族たちが住む北区にある大きな建物だ。王都では生活に余裕があるおかげで芸術が盛んだ。大きいものから小さいものまで多くの演劇場が点在している。北区にある大劇場は一際大きな劇場で唯一の王立劇場である。

 平民用の低い位置に作られた座席に、2人で並んで座る。


 「今日は“創世記”だって。“最新魔道具を使用した超豪華演出で魅せる一大スペクタクル!”だってさ。」


 先進的な技術を使って大規模な演出を行う際に、題材を宗教に絡めるのは前世でも行われていた事だ。“天地創造”や“十戒”を思い出させる。


 「へぇー。田舎育ちだからそういうのってあんまり詳しくないな。」


ヴィートの住んでいた村でも老齢の兄弟神教神官が神話を語ってくれるのだがそれよりも狩りの練習や、読み書きの訓練に時間を費やしていたためヴィートはほとんど神殿に顔を出していない。


 「あんたねぇ……もうすぐ銀級って聞いてるわよ。腕っぷしだけじゃなくて知識や気品も身につけなさい!」

 「うーん。銀級だからって別に変わらないと思うけどな。ソロだから護衛依頼もほとんど受けないし。まあ、嫌いじゃないからいいけど。」

 「あ、始まるみたい。」


 明るかった場内がだんだんと薄暗く変わり、周囲が自然と静かになっていく。緞帳がゆっくりと上がると舞台上は何もなかった。どこからともなくおごそかさを感じさせる声が客席全体に響く。


 “世界の始まりは完全なる無。全てを飲み込む混沌であった!”


 すると舞台の中心で光が瞬き、その光がどんどん大きくなっていく。


 “混沌より光が生まれそれは大きさを増していく。世界で最初に生まれた物は光だった。光から最初の神が生まれた。彼は創造神として世界を作り出す使命を持っていた”


 光の中から白髭を蓄えた老人が現れる。老人は白いローブを着て長い杖を突いている。


 「まずは、光に溢れた神の世界を作ろう。それから闇の住まう闇の世界を。そして最後に新たな生命の住まう世界を作ろう。」


 『え、ローランドってあんなジジイなん?』

 『そもそも人間と同じ姿ではなかったぞ。生まれたばかりの頃は力も弱く、光の玉のような姿をしていた。』


 壇上の創造神が杖を振ると舞台の袖から金色の雲がふわふわと流れて舞台上に溢れた。舞台の下からは大きな白い柱がせり上がり、一気に舞台上は天国さながらの様相だ。


 「はぁー、少し疲れてしまった。神の世界と闇の世界は完成したが新しい世界を作る余力は無さそうだ。そうだ、新しい世界ならば新しい神に作らせるのが道理だろう!」


 そう言って杖を振ると、舞台を漂う雲の中からたくましい3人の男たちが姿を現した。皆一様にたくましい体つきで白い布のような服をまとっている。


 「おお、我らが父よ!我らをお産み出し下さりありがとうございます!」

 「おお、我らが父よ!我らに何なりとご命じ下さい!」

 「おお、我らが父よ!我らはどんな難題でもこなして見せましょうぞ!」


 「よしよし、それでは最初に口を開いたお前を長男、次に口を開いたお前は二男。そして最後に口を開いたお前を三男としよう。」


 『あれが息子たち?』

 『ああ、そうだ。あんなに体格は良くなかったが。』


 「それでは長男よ、お前には生命を生み出す力を与えよう。」

 「ありがたき幸せ。」

 「二男よ、お前には大地や海を作り出す力を与えよう。」

 「ありがたき幸せ。」

 「三男よ、生命に心と法を与える力を与えよう。」

 「ありがたき幸せ。」

 「それからお前たちにはそれぞれ剣を授けよう。皆で力を合わせ、立派な世界を作り出すのだ。私は少し体を休めようと思う。」

 「「「は、かしこまりました!」」」


 そういうと創造神は体を横たえるとそのまま雲の中に消えて行った。するとそこから光が飛び出し剣を形作った。兄弟神は剣を手に取ると天に掲げている。小声でマリが聞いてくる。


 「あれってどんな仕組か知ってる?」

 「いや、全然わからん。魔道具なのは間違いないだろうけど。」

 「ふーん。」


 創造神がいなくなった壇上では3人の兄弟神が話し合いをしていた。


 「さて、父に賜ったこの役目、どのような世界を作るべきか。」

 「まずは生命を作り、大地と法を生命に沿うように作るべきだ!」

 「いや、心と法を先に定め、それを守るように生命と大地を作るべきだ!」

 「貴様長男である私に逆らうつもりか!」

 「兄とはいえ法を軽視するようなことは許さん!」


 喧嘩になる長男神と三男神。二男神が止めに入るが大して効果はない。


 「まてまて、2人とも。父は我らに力を合わせて、とおっしゃったではないか。」

 「うるさい!お前は引っ込んでいろ!」

 「こうなれば互いにどちらが正しいか決めねばなるまい。」

 「言うではないか。行くぞ!」


 そう言って腰の剣を抜く長男神。三男神もそれに呼応するように剣を抜いた。剣がぶつかる硬質な音が幾度となく響く。そして最後、2人が互いの胴に剣を突き刺したのをきっかけに照明が真っ赤に染まった。


 「おお、何てことだ……。」


 『大丈夫か?ローランド。なんなら外に出るか?』

 『大丈夫だ。所詮は芝居だし、昔の話だ。いつかはお前に聞かせねばならなかったからな。よい機会だろう。』

 『ならいいんだけど……。』


 「1人生き残った私が役目を引き継ごう。しかし、2人が死んでしまった事を父に話す訳にはいかぬ。どうにかごまかすしかあるまい……。まずは海よ、それから大地よ、山よ、河よ、現れよ!」


 雲や柱は消え、袖からは山や海が描かれたパネルが現れる。


 「兄弟の亡骸は深き海と高き山にそれぞれ隠そう……。」


 二男神がパネルの裏に亡骸を隠していく。


 「兄が残した血よ。今は亡き兄に代わり生命を作り出せ!」

 「弟の残した血よ。今は亡き弟に代わり心と法を定めよ!」


 “こうして人間とそれを取り巻く生き物たちが生まれたのだった。しかし死した兄弟の血から作られた生き物は不完全であり、完全な生き物ではなかった。”


 舞台の下から粗末な服を着た男と女、それから着ぐるみのようなものなのだろう、少し違和感がある犬や猫といった動物たちがせりあがってくる。しばらくすると再び白い服の老人、創造神が現れる。


 「はあー、よく寝た。おお、もう出来ておるではないか……ん!?なんだこの生命は!これ、息子たちよ!どこにいるのだ!」


 「は、ここに。」

 「何故不完全な生命しかおらんのだ?」

 「は、兄弟3人の不和により力を合わせる事が出来ませんでした。」

 「何故お前しか現れないのだ?」

 「2人は不完全な生き物しか作れない事を恥じ、遥か彼方へと身を隠しました。」

 「嘘をつくな!この生命たちには濁りを感じるぞ!お前が2人を殺して力を奪ったのだろう!そうでなければこのような濁った生命にはなるまい!」

 「誤解です!そのような事は決して!」

 「ええい、うるさい!お前には罰を与える。永遠に世界を動かし続けるがいい!」


 舞台の下からよくわからない機械が現れる。船の舵の様な輪が地面と水平に取り付けられており持ち手が長い。二男神が暗い顔で輪を回すとゆっくりと太陽を模した舞台装置が右から左へと流れていく。


 「善にも悪にもなりうる生命、人間か。その真価をはからせてもらおう。」


 “こうして二男神は世界を回し続ける宿命を負い、父神は人間を世界に存在する価値のある生命かどうか確かめていくのだった。”


 そこで静かに緞帳が下り、場内アナウンスが流れる。それと共に場内が明るくなっていく。


 “以上で第1部創世の時代を終了します。続きまして第2部英雄の時代は10分後の再開となります。”


 「はー、知ってる物語でも演出が凄いと新鮮ね。」

 「剣の光とか雲の質感とかが凄いなー。」

 「知ってる?この“創世記”、貴族のご婦人方にも人気なんですって。」

 「ご婦人が?こういうのって男の方が好きそうだけど。」

 「ほら、兄弟神様方の衣装って露出度が高いでしょ?」

 「あ、そういう事……確かにイケメンだったしな。」


 しばらく会話をしていると場内の照明が暗くなっていく第2部が始まるようだ。


 緞帳があがるとそこには城砦のセットが組まれており、たくましい男が立っている。傭兵の様な佇まいで荒々しい。


 “創世から長い時間が経ち、人間は数を増やしていった。数が多くなった人間は国を作り次第に国は大きくなっていく。国ができると、国同士で諍いがおこり戦いが始まった。”


 たくましい男の元に小男が駆け寄っていき跪いた。


 「表を上げい。」

 「は!」

 「戦況は?」

 「首都を落とし王の首を上げましてございます!」

 「でかした!はっははは!」


 舞台の袖から1人の老人が出てきてその様子を眺めている。第1部の父神だ。悲しげな表情をしている。


 「はぁ……来る日も来る日も戦いばかり。人間とはなんと愚かな生き物か。このような生命が生まれるのであれば自らの力で世界を作るべきだった。決めたぞ、人間という種を滅ぼそう。そして新たに完全な生命を生み出そう。」


 そうして杖を振ると証明がフラッシュし、轟音が響く。雷だ。城砦のセットが崩壊した城砦に差し替えられている。


 「人間どもよ!お前たちは同族同士で争い続け、まったくもって愚かしい!お前たち人間という種を1人残らずこの地上から駆逐することをここに誓う!」

 「ひ、ひいぃい!」

 「か、神だ!神の怒りをかったんだ!!」


 人間たちは恐れおののきながら舞台をはけていく。そののち幾度となくフラッシュがおこり舞台が暗くなる。


 『これが例の人間を滅ぼそうと戦った件?』

 『ああ。そうだ。まぁ小さい違いはいくつかあるが概ね事実に沿っている。』


 再び明るくなると舞台には凛とした目鼻立ちの美丈夫が寝そべっている。彼は戦士であるらしく鎧姿だ。


 “起きよ……フェロス……起きよ!”

 「な、なんだ?」


 “私は二男神。我らが父が人間を滅ぼさんと決意したぞ。探せフェロスよ。私が囚われている世界の中心を探せ!”

 「……なぜ俺なんだ?」

 “お前は力をもっていながらそれに腐ることなく清らかな心を持っている。お前にしかしか出来ん。私を解き放ち父神に対抗する力を得るのだ。旅立ちの時だフェロスよ!人類を救うのだ!”

 「こ、これは!」


 フェロスの身体を光が包む。


 「体の奥底から力があふれるようだ……!俺にしか成せない事を成す。男の生き方ではないか!」


 その後、しばらくフェロスの冒険が続いた。ドワーフやエルフ、竜人といった種族を屈服させ、古龍に認められて世界の中心に至る様子が数々の魔法エフェクトを使って大胆に舞台上で演出されていった。


 「来たか、フェロスよ。おお、いちだんとたくましくなって……。」


 ぼろぼろな服を着た二男神が世界の歯車を回し続けている。


 「ああ、あなたを助けに来たのだ!今こそ父神の掟からあなたを解き放とう。」


 フェロスの身体から光が走り、二男神を包む。光が消えると二男神の服は綺麗な服に戻っており肌艶も戻っているように見える。


 「フェロスよ。お前にこの剣を授けよう。弟が兄を殺した際に使った剣で、心と法の剣という。神殺しの力が宿っており、父神と対峙するのならば必ず必要になる。」


 恭しく剣を受け取ると天に掲げるフェロス。フェロスの見目麗しさも相まって、まさに神話の1ページといった雰囲気だ。


 二男神の力により神界に送られたフェロスは父神と対峙する。


 「来たか、人間の英雄よ。全ての人間がお前の様であったなら人間を滅ぼさずともよかったのだ。しかし人間は道を違えた。行きつく先は破滅のみよ。」

 「父神よ!あなたは決断を早まった!人間は確かに争ってばかりで愚かかもしれん。しかし人間には可能性がある!日々成長しているのだ!生まれたばかりの赤子が暴れたからといって殺す親がどこにいる!」

 「ならばその可能性を私に見せてみるがいい。人間の存亡を賭けてな。」


 父神と英雄フェロスの戦いが始まった。流石に剣士として力をつけたヴィートにとってはお遊びのような剣舞だったが演出と演技によって緊迫感をもって舞台を眺めていられる。

 剣と杖の打ち合いがしばらく続く。


 「これが、協力し成長を続ける人間の力だ!」


 剣から光がほとばしり父神を貫く。


 『いくらなんでもこれは芝居だからな。実際はもっと殺伐としていたし、奴も私を殺す気だっただろう。』

 『ちょっと黙ってて!今良い所だから!』

 『す、すまん。』


 「ぬ、ぬおおぉぉ……ふ、ふふふ……認めよう。人間という種を。しかし、必ず私は戻ってくる。いま一度の審判の時だ。その時まで人間を導いてやるのだ。よいな英雄フェロス……。」

 「ああ、もちろんだとも父神よ。あなたが戻ってきた時、人類を誇れるよう導いてみせる!」


 父神が光と共に消えると再度剣を掲げるフェロス。この剣を掲げるのが決めポーズの様だ。荘厳な音楽と共に舞台の幕が下りたのだった。

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