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テスタメント ~底辺冒険者の俺が神になるまで~  作者: 硬体
第1章 旅立ち&王都前編
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第15話

 ギルドの訓練所は石壁に囲まれた簡素な訓練所だ。しかし貴重な魔法使いを動員し、石壁を土魔法で強化しているため多少の戦闘ではびくともしない。とはいえヴィートの本気には到底耐えられないのだが。


 ギルドではある程度の戦闘訓練を行える人材を確保している。その人材に昇格試験や緊急調査などを任せているのだ。彼らはギルド選任冒険者と呼ばれて、同じランクでも発言力が違う。ヴィートは後輩を指導する選任冒険者に声をかけた。


 「おっす、おっさん!手合せお願いしますー。」

 「げ、お前“怪力”か!俺はまだ死にたくねえ!」

 「あ、俺の事知ってる?そう言わずにー。頼むよー。依頼人がさ、俺の実力に疑問があるって言うから証明しないといけないのさ。」

 「そのために俺に命を賭けろって?嫌だ。」

 「……あの、ヴィートさんってそんなにお強いのですか?」

 「ん?あんたは?」

 「この人がその依頼人さん。錬金術師のイドリスさん。」

 「ああ、学者先生ね。コイツ強いなんてもんじゃないぜ。並みの銀ランクなら相手にならんだろう。見た目に騙されちゃいけねえ。この前の道場合同大会なんて滅茶苦茶だったし、その翌日には3メートル近い化け物みてーな魔物をソロ討伐してきたんだぜ?しかも素手でだ。はっきり言って俺は闘いたくねぇ。」

 「いやーそんなに褒めるなよおっさん。」

 「褒めてねーよ。」

 「申し訳ないのですがそこまでと言われている腕前を一度見てみたいのですが……。」

 「げ、学者先生もかよ!はぁー……わかった。ただ、絶対に手加減しろよ。こんな銅貨1枚にもならねー試合で怪我したくねぇ。」

 「了解!まぁ見ててよ。」


 そして相対する両者。ヴィートは素手を構え、選任冒険者の男は練習用の刃をつぶした鉄剣を構えている。流石に選任冒険者に選ばれるだけあって隙のない立ち姿だ。道場生とは違った野生の雰囲気がある。


 「それじゃ、行くぞ!」


 冒険者が気勢を上げヴィートに襲い掛かる。次々と襲い掛かる剣を余裕をもって避ける。側転やバック転を挟む遊び心まで見せている。


 「まだまだ!」


 冒険者の剣戟が激しくなる。洗練されていないが絶妙に嫌なタイミングで放たれる斬りはヴィートの動きをうまく制限していた。


 「流石にやるなおっさん!」

 「俺も現役冒険者だ。ただで負けるわけにはいかねえ!」

 「それじゃ俺も行こうかな。」


 反撃にでるヴィート。蹴りや掌底も混ぜながら牽制していく。徐々に互いの間合いが狭まり、剣の間合いから拳の間合いに近づいていた。ほどなくして決着の時が訪れる。


 冒険者の顎をヴィートの掌底がかすった。急激に動きが鈍る冒険者。一瞬踏ん張ったが耐えきれずにその場に崩れ落ちた。ヴィートは決して本気ではないが、それでもかなりの速度で放たれた掌底は冒険者の意識を刈り取るのに十分な威力を備えていたのだ。


 「これで決着ってな。」

 「はあー、強いんですねヴィートさん!」

 「ふふふ。見直してくれたかい?」

 「もちろん!今まで疑ってすみませんでした。」

 「いいって。それより、おっさんを医務室に連れて行ってくるからちょっと待ってて。」

 「あ、私も手伝いますよ。」

 「いや、大丈夫。普段担いでるものに比べたら何十分の一だ。」


 そう言って倒れた冒険者を軽々と担いで訓練所を出る。その場に残されたイドリスに周囲で見ていた冒険者が話しかける。


 「学者先生、これが今最も銀ランクに近い男“怪力のヴィート”さ。実力はお気に召したかい?」

 「ええ。しかしあれほどの実力があって何故私の依頼を受けるのでしょう?」

 「さあ?まああいつは気まぐれで有名だからな。」


 イドリスはその場を立ち去るヴィートの姿を茫然と眺めていた。


 しばらくすると駆け足でヴィートが戻ってくる。


 「お待たせ。それじゃ今度はイドリスさんの実力を見せてもらおうか。」


戻ってくるなりイドリスに促すヴィート。普通の魔法使いが使う魔法を初めて見るため少し興奮している。


 「ヴィートさんの腕前を見た後では、私の魔法は拙くて見せられるものではありませんが。」

 「いやいや、どの程度のものかわからないと戦闘で任せられないから。」

 「……それもそうですね。私の契約精霊は火の下級精霊。攻撃に適した精霊です。それではご覧ください。“偉大なる火炎よ、原初の光に最も近きものよ、現れ出でて敵を討て〈ファイアボール〉!”」


 呪文が唱えられるとイドリスの周囲に火の玉が3つ浮かび的をめがけて飛んで行った。木で作られていた的は火の玉が当たると一瞬で燃え上がりそこには灰しか残らなかった。


 「おおーこれが精霊魔法か。」

 「はい。今のファイアボールならあと15発は打てるはずです。周囲の魔素量と精霊の気分に左右されますが。」

 「気分って……それ緊急時に大丈夫か?」

 「ははは……仕方ないですよ。元来精霊は気まぐれですから。でも契約者を守ろうと、いざという時こそ奮起してくれると思いますよ。」

 「木の的程度だったら一瞬だけど魔物相手にはどの程度通用するもんなの?」

 「ゴブリン程度なら一撃、オーガやオーク相手には2、3発。それ以上の魔力耐性が高い魔物は効果があるか不明、って所です。」

 「運用次第ではかなりの効果がありそうだ。頼りにさせてもらうよ。」

 「ダンジョンの魔物は魔力耐性が高い事が多いですから、牽制程度にしか使えませんよ。こちらこそお願いしますね。」

 「よし。それじゃ依頼は本決定、ってことでいいかい?」

 「もちろんですよ!逆に断られたらこちらが困ってしまいます。」

 「それじゃ、ダンジョンへの遠征はまた後日、日取りを決めよう。」

 「はい。いつでも研究所までいらしてください。大体いつもいますから。」


 イドリスとはギルドで別れて、ギルド裏手の解体所へ向かう。アステリオスの解体状況を調べる事とオークションがいつ開催されるかを確かめるためだった。


 「おいーす。親方いるかい?」

 「おお、ヴィート。今日は何の用だ?」

 「アステリオスの解体はどうなってる?」

 「ああ、いってしまえば金の角以外は硬いミノタウロスだからな。解体のノウハウはある。今回はオークション需要を見越して剥製にしてる。見ていくか?」

 「じゃ、一応。」


 親方に連れられて解体所の奥に行く。そこには今にも動き出そうとしているアステリオスの姿があった。かなりの躍動感だ。親方は解体の腕だけでなく芸術の才能もあるらしい。


 「これは凄い!生きてるみたいだ。大斧は?」

 「流石に大斧を支えるだけの丈夫さは無かった……お前が何かに使うなら引き取ってもいいが?こっちもあれだけの大斧は動かすだけでも大変で、売り手に困るだろうしな。」

 「うーん……ちょっと振ってみるか。」


 奥に置かれていた大斧を手に取り外へ出たヴィート。アステリオスが振るっていただけにかなりの重量がある。柄まで金属でできており普通の人間に振ることはできないだろう。そもそもパッと見の重さと手に取った時の重さが違いすぎる。感覚で言うならマッドバッファローの1頭強程度。大体2tくらいだろうか。明らかに鉄ではない。常人に比べはるかに高いステータスを誇るヴィートでも身体強化を使わなければ思う通りには振るえない。


 ゴオゥ、ゴオゥゴオゥ、と振るたびに異様な音が鳴る。やはり使い勝手は悪いし、異次元収納がばれる恐れがある。とはいえ二束三文で売るには惜しい。


 『どうにかならないかな?できれば使いたいんだけど。』

 『うーむこればかりは……異次元収納はなるだけ秘匿したい。が、とりあえず持って帰ればどうだ?こんなもの盗める奴もおるまい。宿の庭に置いておいて頃合いを見て異次元収納に納めればいい。』

 『使う時はどうすれば?』

 『異次元収納がばれてもやむなし、という機会に出すしかないだろうな。』

 『普段使いはやっぱ無理か。』


 脳内会議により、とりあえず持ちかえることに決まった。


 「親方、持って帰るわ。いつか役に立つかもしれないし。」

 「済まねえな。気を遣わせて。その分オークションでは力を入れるから見といてくれ。」

 「そのオークションなんだけどいつなの?」

 「毎月15日に行われている定期開催のオークションにのせるから、あと1週間程度だな。」

 「よし。じゃあそれ以降に取りに来るわ。よろしくな。」


 大斧を担いで帰るヴィートは完全に周囲から浮いていた。大斧は血糊こそ拭かれたものの血の染みがついている。恐れられるのも当然である。その後宿に大斧を持って帰るも女将と揉め、こっそりと街の外に出て異次元収納に納める羽目になった。

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