隣国へ(2)
女将さんの話によると、城下町の南の方に乗合馬車の停留所があるからそれに乗ってアルノアに行けるらしい。丁度そろそろアルノア行きの馬車が来る頃らしい。
(その前に魔石を換金しなきゃな)
魔石は宿の近くの素材屋で換金してもらえると聞いた。素材屋のおじいさんの前に魔石を全部出し、査定してもらって金を受け取る。金貨が数枚、銀貨と銅貨が数十枚入った袋が渡された。結構重い。それをストレージに入れる。何も重さを感じない。
現金も手に入ったことだし乗合馬車の停留所に向かい、南の方へ進む。
ー歩くこと数十分ー
それらしき所に到着した。馬車の御者が「アルノア行き」という看板を掲げながら人が入ってくるのを待っている。
(ちゃんといたな……)
その馬車に運賃を払い乗り込む。他の客もぞろぞろと入ってくる。
「では出発〜」
馬に鞭をあげながら御者がそう言う。
(結構揺れるな…酔いそうだ)
ー馬車に揺られること2時間ほどー
突然、馬車が止まった。
「命が惜しけりゃ金目の物を置いていきな。逆らえば、わかるよな?」
「お客さん方、盗賊です!逃げてください!」
客の中に動揺が走る。
「おっと逃しはしねぇさ。客からも搾り取らねえとな。」
いつの間にか馬車を盗賊の一団に包囲されていた。
(やるしかねえか。)
見たところ敵は7人。遠くから魔法で数人仕留めてから剣で斬り殺すか。この世界では盗賊に生きている価値がないらしいから殺しても平気だ。
俺は馬車の中から、
「ウィンドスラッシュ!」
風の刃を一番近い距離にいた盗賊の首目掛けて打ち出した。
盗賊の首が切断され鮮血がプシューッ!と上がる。
「うわっ!?何だ!?」
「おいっ!どうしたっ!?」
周りの盗賊たちが焦る。俺は続けて風の刃を打ち出し、
ザシュッ!ザシュッ!スパーン!スパーン!
盗賊2人の首が連続で飛ぶ。残りは4人。
馬車から降りて剣に魔力を通して盗賊に斬りかかる。お前で試し斬りしてやる!不意をつかれた盗賊は何の抵抗も出来ずに絶命する。
(中々切れ味いいな!)
魔力を通したからか元々の性能がいいのか、すんなりと刃が通った。
次の盗賊の元に向かい剣を振り上げる。相手は腰に差していた長剣で迎え撃つ。
両者剣を合わせて拮抗した状態になる。
俺は左手を剣から離し、そこに意識を集中させ、盗賊の顔に向かって、
「ファイアーボム!」
盗賊の顔の前で爆発が起きる。
それに驚いた盗賊は仰け反る。
(隙を見せたな!)
右手に持っていた剣で胴体を横薙ぎに払う。返り血が俺にかかる。腸を剥き出しにして盗賊はこと切れた。
(あと3人!)
2人固まっているところを、
「エアプレッシャー!」
重力を局所的に増大させ、地面にうつ伏せに倒す。そのまま、
「アースニードル!」
地面から巨大な針が2人を貫く。腹部に大きな穴が空き、血をだらだら垂らし、喘ぎながら盗賊は死亡。
最後の一人を、と思ったら逃げ出そうとしていた。
(逃がすかよ!)
「アースプリズン!」
土の壁が盗賊を囲み、身動きを封じる。
俺はそいつに向かって走り出し、
ー剣で心臓を一突きしたー
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「どうも助けて頂きありがとうございました!何のお礼も出来なくて申し訳ありません…」
御者が俺に言う。
「お礼なんて別にいいですよ。むしろ盗賊に遭遇出来たことがお礼の先払いになってます。」
「?」
御者が不思議そうな顔をする。スキルを盗賊から奪えたから俺は満足なんだが。
新たに短剣術Lv2と弓術Lv1、治癒魔法Lv1、敏捷増強【大】を獲得していた。あいつらの中に治癒魔法が使えるやつなんていたのが一番の驚きだ。
ちなみに盗賊からは持っていた金と武器類を頂戴してストレージに入れて置いた。死体は放置したままである。
ーそこから馬車はまた動き出し、何の問題もなくアルノアに到着したー
「着きましたよー」
馬車を降り、御者と別れる。
ここがアルノアか。立派にそびえたつ門が特徴的だ。向こうに見える建物は城だろうか。まあそれも入ってからだな。
門を通ろうとすると、
「何か身分を証明出来るものは持っているか?ないのなら銀貨1枚で仮身分証を発行できる。」
(そういや身分の証明出来ねえな)
「では仮身分証を」
そう言って銀貨1枚を渡す。犯罪歴を魔法の水晶とかで調べられたが何もない。盗賊を殺しても犯罪にはならない。
「よし。では通っていいぞ。それと冒険者ギルドに行けば身分証の発行が出来る。そこに行くといい。」
門番が親切に教えてくれた。門番から概要を詳しく聞いてから、
「ありがとうございます。そこに行ってみます。」
ギルドか。楽しみだな。
名前:神崎文哉
スキル:憤怒之化身 暴食之化身 基礎属性魔法Lv1 治癒魔法Lv1 筋力・魔力・敏捷増強【大】 再生 威圧 斧術Lv1 剣術Lv5 短剣術Lv2 弓術Lv1
次回:冒険者ギルド
お楽しみに。