訓練
翌朝、目が覚め、召喚されたときの広間に呼び出された。
「昨日も言ったとおり、今日から訓練をしてもらう。最初にこちらの世界の基礎となる教養を身につけ、次に魔法を学んでもらう。午後からは肉体を鍛えてもらう。あとは王国騎士団の指示に従うように!では解散!」
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「俺は騎士団長ライオス!今から俺の指示に従ってもらう!」
王の言った通り最初はこの世界の基礎を学ぶらしい。具体的に言えば常識とか歴史とか魔物の生態についてだな。別にただメモを取るだけなので楽だ。
問題は次、魔法の授業だった。スキルがないし異世界に来たのだからせめて魔法くらいは使いたかったが俺にはどうやらその才能がないらしい。
周りの奴らにも使えないやつが何人かいるが少数派で全員運動神経がいい。俺は運動神経も悪く魔法も使えない。これ、結構やばくね?
魔法担当の教師によると自分の中にある「魔力」の流れを感じて、それを何に置き換えたいかをイメージして放出するらしい。
(うーん……妄想は得意だから出来てもおかしくはないんだが…
やっぱり魔法適性みたいなスキルがないと無理なのかな?)
まあ使えないものは使えない。ショックだがそう割り切ろうとしたとき、
「お前、魔法使えね〜の?オタクで運動神経も悪いくせに魔法まで使えないとかとゴミじゃん〜」
「ただの役立たずじゃ〜ん」
「生きてる意味あるの〜?」
クラスの不良とその取り巻きたちが俺をそうやって囃し立てる。すごく癪に障るが事実だからしょうがない。とりあえず実害はなさそうだし軽く流しておいた。
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ー午後ー
城で用意してくれた昼食を食べ、少し休憩をしてから訓練へと移る。
「ではこれからお前らには基礎体力を身につけてもらう!まずは素振りをしてもらう!ここの箱から1人1本ずつ訓練用の剣を取れ!」
箱の中には刃を潰した剣が雑に入っていた。とりあえず1本取って持ち上げてみる。
(ぬ……!想像以上に重い…!)
「とりあえず素振り100回!」
(この重さでその回数は無理だろ!正気か!?)
「では俺に合わせて 1! 2! 」
「いーち…… にー……」
仕方なくやることにした。
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そのあとも厳しい訓練は続き、
「王城の周り10周!」
「腕立て500回!」
一応やり切ったが肉体的にも精神的にも瀕死だった。
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おかしい。何かがおかしい。訓練2日目から生徒達と騎士団の連中から敵意を向けられている気がする。それに王国側の待遇が明らかに冷たくなっている。危険な感じだ。
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そんなこんなで1週間。
騎士団長ライオスがこんなことを告げた。
「そろそろお前たちも訓練に慣れてきた頃だろう!だから明日から実際の戦闘を経験してもらうため迷宮に行ってもらう!そのためにも装備が必要だ!とりあえずついてこい!」
と案内された場所は倉庫のようだった。
「この中からそれぞれ自分の得意な武器を選べ!それと鎧を選べ!名前を呼ぶから順番に来い!」
次々と生徒達が呼ばれ俺の番。
「お前はスキルもなく魔法も使えないんだから装備などいらん!明日は後ろについてくるだけにしろ!」
クソッ!スキルなしの俺には俺には冷たいのか。
「解散!しっかりと休むように!」