よくよく考えたらNAISEIって難しくね?
異世界に転生した現代主人公が中世風()の不便な世界にWikip○diaやサイトで得た知識を使って生活を豊かにし、果ては富国強兵を実現する。
なろう小説では王道に準じた人気テーマでテンプレに近い……いや、もうなってますね。テンプレとして使われています。
でも、実際に運用しようとするとこれがとても大変です。
実現不可能だろうとか、デメリットを無視した夢のような理論でリアリティーの無いテーマは除外して、いや、それも勿論問題なのですがそれを無視してもNAISEIが如何に大変かを考察してみます。
まずひとつ目は個人で行う場合の時間的制約です。
現代の便利な物ってその原理があるからこそ
便利なものを作るための道具があったりします。便利なものを作るための便利なものってやつですね。
知識の無い異世界にはそれがないから無から作り出そうとするととてつもなく時間がかかります。
ここで「○○を作ったら暮らしが良くなった」みたいなことをやっちゃうとリアリティーが消え去りご都合臭がきつくなります。
かといって実際に時間を経過させようとすると少し暮らしが改善された辺りで主人公は老齢になり、ストーリーが幾何も進まないうちに息子に夢を託してしまうことになります。
だからといって魔法やスキルでパパッと済ませてしまうと、魔法世界だったらいつでも都合のいい魔法が使えるんだから別にNAISEIを取り上げなくても生活は困らないんじゃないかとモヤモヤしたり……。
ということでその道の専門の人に丸投げって形をとったりするんですよね。
技術を提供して「こ、こんな方法があったとは!」ってさすが主人公をさせる方法です。
でもこちらもなかなかデリケートだったりします。
技術提供と言うかアドバイスをする主人公は、現代で言うとこのコンサルタントにあたります。
経営が逼迫していたり、現状を何とかしたいと困窮している人ならともかく、自分のやって来た事にこだわりのある職人はなかなか言うことを聞いてくれません。
この道何十年のラーメン屋が一見さんに「もうちょっとスープの味を薄くして麺は堅めにゆでるともっと美味しくなるよ」って言われても納得するどころか自分の今までの人生を否定されたように感じます。
「なるほど、言われたようにやってみよう」とはなりません。
如何に時間効率を説いて、今の作業の無駄を指摘しても歳を食った人間ほど否定してきます。
果ては仕事を減らして怠けたいだけだと考えたりします。
徐々に仕事内容をスライドさせて効率のいい方法に変えようとしても「そんな時間が作れるわけではない、考え方は理想であって実現できるものではない」と考えます。
ではこちらから必要な物を全部用意して手伝いますとなっても職場を侵食されるように感じるのでまず入れてもらえません。
職人は自分のやって来た事が正しい。間違っているのは周りで本来なら自分は評価されているものなんだ。
周りが邪魔をしているなかで生活を維持できている。もっと周りが自分を正しく見てくれさえすればいいだけだと思っています。
そんな中でポッと一目みただけのガキがあぁしろこうしろと言ってきたところで聞けるはずが無いんです。
だからNAISEIの一番難しいところって言うのは聞いてもらえるところだと思っています。
頑固な人ほど邪道()を嫌って自分の信じることだけをやりたがりますから。
後は大きいことをしようとすると変化に気付くまでに結構長い時間が必要になります。
農業なんかは早くても半年かかるし長い期間なんのへんてつの無い生活が続いた後だと「あ、そういえばそんなこともあったね」って事にもなりかねません。
頑固親父を何とかして説き伏せたのに見返りが物凄く小さくなる可能性もあります。
そしてNAISEI後の世界でも山のように問題が出てきます。
まず既得権益を得ていた人間が潰しにかかってきます。
シェールガスを見つけてエネルギー革命が起こりかけた時も、原油の価格が暴落してシェールガスの採算が合わなくなりました。
当時シェールガスを普及させようとしていた企業や投資していた人達は大打撃を受けます。
新興宗教だった日蓮宗も国教にしようと画策しますが佐渡に島流しにあいます(これはただの無謀な蛮行ですが)。
新しいことを始めると妨害は必ず起きます。機械化が進んで大量生産が可能になり、価格を低くできるようになると企業も消費者も豊かになりましたが、企業の大規模化に乗れなかった中小の工場はどんどん閉鎖されていきました。
変革にはどこかしら痛みが伴います。
皆が皆NAISEIを享受して主人公を崇めるというわけにはいきません。
先ほど言った職人も変革の波に乗れないと現状の生活すら危ぶまれます。
NAISEIってのは始めるときも終わったあともごちゃごちゃします。
現実的な事を考えるとどうしてもモヤモヤしてしまいます。
まぁここにあるのはファンタジーだからごちゃごちゃ言っても面倒臭いだけなんですけどね。
個人的に後味の悪い話が好きなので、NAISEIを頑張るんだけどそのせいで混乱が起きて都市が壊滅する話を考えたんですけど、プロットの段階で面倒くさくなったんでこんなエッセイを残そうかなと思って書いてみました。