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店員さんが大降臨!

お待たせ致しました、漸く続話です。

そして大変申し訳ありません、再び更新が不定期になります。

 誰か泳いでいるのかな? となんともな考えが浮かんだが、それを馬鹿馬鹿しいと一蹴する前にあながち間違いでは無いという事が判明した。


 というのは、先程の店員……あの客引きを諦めていた冷やかし歓迎の店の店員がびしょ濡れで入り口に立っていたからだ。何故だか知らないが。



「ちょっとぉ……あんた達何やってる訳ぇ!? メーワクなんだけどぉ!」


 ギャルかよ、と突っ込みたくなるような喋り方だが、男だ。しかも外見がそれなりに整っているせいか違和感がすごい。



 …………じゃなくて。


「えっ……メーワク?」



 服従状態(命名・僕)のアクアマリンを見られると何かとまずい気がするので、庇うようにアクアマリンの前に立ち塞がりながら少年に問い掛けると、少年は大きく頷いた。



「そぉ! 店の周り掃除してたらこの宿から大量の水が溢れて来たのぉ! 十中八九あんた達でしょ!」


「み、水……?」



 心当たりが無い訳では無いが、僕は一応「全く知りません」をアピールしつつ少年に愛想よく尋ね返す。


「あのねぇ! しらばっくれんのもいい加減にしてくれるぅ!? ボクだって馬鹿じゃない訳ぇ! そこのアクアマリンが魔法使ったって事くらい――あっ」


「……え?」


 少年は「しまった」的な表情で俯いているが、残念ながらはっきり聞こえてしまった。


 「アクアマリンが魔法を使った」と少年が言ったのに気付かない程、僕の耳もポンコツでは無かったようだ。


 何故この少年がアクアマリンの事を? 何故水の魔法が使えると知っている?


「……君」

「…………知らないよ、ボク知らない」



 あくまでもしらばっくれる少年にある意味感服だが、このまま引き下がっても少年の思うつぼなのだ。という訳で僕は、しらばっくれた少年に追撃を仕掛けた。



「……何で、知ってるんだい?」



 事態が事態なだけに押さえられない声音の急低下に、少年がくっと眉をひそめたような気がした。そのまま僕が様子を見ていると、少年が観念したように顔を上げる。



「…………申し訳ありません精霊王様、考えがあった事とはいえ、我ら精霊の頂点たる貴方様に対する非礼の限り。如何なる罰を持ってしても償う志でございます」



 顔付きから声音までまるっきり別人である。

 ……え、君あの少年だよね? うわぁ信じ難い…… と失礼な事を内心でぼやいていると、少年は流麗かつ素早い動作で膝を付いて頭を下げた。犬である。忠実過ぎる。



「さぁ、何なりとご命令ください精霊王様。非礼を詫びる事が許されるならば、貴方様のご命令とあらば、同種すらも手に掛けてご覧に入れます」


「いや、それは良いよ……」



 忠誠心すごいなこの少年。少年というより多分、精霊……それも恐らく、アクアマリンの知り合いなんだろうけれど。



 そういえば、この少年の名前なんだろう。



【統括管理精霊:ガーネット】

 ふと、アクアマリンと対峙した時と同じ感覚。同時に流れ込む、彼の情報。


「統括管理……?」



 何だろう、統括精霊とは何か違うのだろうか。彼――ガーネットの様子を見るに、精霊は上下関係が厳しいのかもしれない。だとしたら、アクアマリン、と呼び捨てにする彼は――アクアマリンと同等か、それ以上。

 そういう事になる。



「流石は精霊王様――! 隠蔽呪を詠唱無しで解くとは! シベストリア様も、粋な事をなさる」


「隠蔽呪……?」


 驚きが空回りしたらしく、言おうと思っていなかった事を口走ってしまった。隠蔽呪の方は後で聞けば良い。



「え、シベストリア、って?」


 この異世界の神にして、このはちゃめちゃ転生の一種の原因。粋な事、とか言うくらいだから、アクアマリンの言っていた通り精霊達は転生の事を知っているんだろうけれど――



「ああ……説明が遅れましたね、申し訳ありません。隠蔽呪、というのは精霊魔法の一種でして――自らの望む情報を隠す呪いです。かなりの魔法の使い手で無ければそうそう解呪は出来ません」



 一度言葉を切ってから、ガーネットはにっこりと笑う。同性とは解っていても、不覚にも綺麗だと思ってしまう笑顔。



「かなり強めに掛けたつもりでしたが、流石は絶対魔法(アブソリュート)の使い手。手も足も出ませんね」


 絶対魔法(アブソリュート)かぁ……何か厨二感満載だなぁ……

 ……じゃなくて!



「待ったガーネット、絶対魔法って何だい?」



 絶対魔法、なんて聞いた事が無い。名前からして相当なチート感が漂っているけれど、一体どういう魔法なのかは皆目見当も付かなかった。

 ガーネットは少し目を瞬かせてから、あぁ、とばかりに手を打ってまたにっこり笑う。




「貴方様の固有魔法ですよ、精霊王様。金色に舞う精霊達の術、としか伝えられておりません故、よくは存じ上げませんが」



 固有魔法。舞う精霊達の術。伝えられていない術。

 突っ込み所満載な状態のままで空気に放り出された絶対魔法の説明は、僕を瞑目させるに十分な物だった。



 金色に、舞う。

 金色。



 初めての戦いの時も、アクアマリンの暴走の時も、何度となく僕の目の奥で舞い散った色。


 絶対魔法。

 忘れもしない、これが精霊王の、固有魔法だと知った日だった。

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