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参加決定

結構展開早いです。



「……駄目?」


「何か妙にロリな言い方だね!?」



目を潤ませ小首を傾げ、これでもかと言うくらい可愛らしく尋ねてくるアクアマリン。いわゆるロリコンならば女神と崇め讃えるであろうお姿だ。

嫌が否でもロリコン心を刺激する目に悪い姿から目を外しながら、慌てて否定する。



「そ、そうじゃないさ……でも、僕はアクアマリンの事をよく知らないだろう?」



何とかそれっぽい言い訳を思い付いてアクアマリンを宥めようと試みつつ、相変わらずロリ姿のアクアマリンをちらりと見てみる。



「……なラ、精霊王様の質問に何もカモ答えル……さぁ、質問しテ?」


「えぇ……」


確かに聞きたい事は山ほどある。よってこの申し出は非常に喜ばしいのだけれど……爛々と「さぁ、さぁ……」的な目をしているアクアマリンには誰もがドン引きするだろう。いくらロリコンでも。

まあ、否定する理由も無いんだけど……



「じゃあ……」



暫しの悩みタイムの後、先ほどから少し気になっていた事を質問する事にした。理由はなんとなく察する事が出来るが、とりあえず聞いておく。



「アクアマリン、さっきから僕の心読んでるでしょ?」



そう、まさかいつぞやのように僕が思った事を口に出している訳じゃあるまいし……僕の考えている事にあたかも会話しているように反応してきた現象は、アクアマリンが心を読んでいるとしか考えようが無い。


というかじゃなきゃ流石に羞恥心で死ねる。



「……うン」



何処か拍子抜けした様子で頷くアクアマリン。何を質問されると思ってたんだこの精霊……



「……スリーサイズとか?」


「変態!? 変態なの!? ていうかまた心読んだでしょ!」



「うン……」


僕の怒涛の突っ込みを完全スルーして短く返しつつ、またロリコンを刺激する仕草で首を傾げるアクアマリン。


「いちいち心読まないでくれないかい……?」


「無理に……決まっテる」



「きっぱりだね!?」



何だか茶番のような事を繰り広げていると、人通りが無い訳では無い場所のせいか、道行く人々の笑い声が聞こえてくる。全く、羞恥心がぶり返してきたじゃないか。



「アクアマリン、場所変えよう」



小さな子供がこちらを指さしてゲラゲラと品の無い笑い声をあげ始めた辺りで、ようやく僕はそう提案した。前世で「一周回ってすごい」と評されたほど僕は周囲の反応が耳に入らないのだ。



「……そうだネ」



目をぱちくりさせたアクアマリンも、一瞬の間の後理解したらしく賛同してくれた。やや迷ってから「冷やかし歓迎」とやけに強調された店に入る事にする。

入っても僕ら……アクアマリンはどうだか知らないが、少なくとも僕は一文無しである。冷やかし歓迎の方が幾分ありがたい。



***



「……いらっしゃいませぇ」



店に入ってみると、冷やかし歓迎のせいで客が呼び込めないのか何なのか、やる気無しという雰囲気を漂いに漂わせた少年が出迎えてくれる。色素の薄い髪に隠れぎみな顔は端正だが、表情がなんとも、だ。



「お好きな席へどうぞぉ。どーせ客居ないんで」


こら店員、既に客引き諦めてるじゃないか。良いのか少年。


……と脳内で熱いナレーションをかましながら適当な椅子に掛け、腰かけて興味深げにキョロキョロしているアクアマリンに視線を向ける。



「えぇと……質問は他にもあるんだ」


一応、先ほどの会話は水に流すよう心掛けながらアクアマリンを見る。アクアマリンはキョロキョロしていた視線をゆっくりと僕に向け、「どうぞ何でも」と言わんばかりに頷いた。



「これは質問ってより確認だね……アクアマリンは、精霊だよね?」



というか、ある意味そうじゃなきゃいろいろ辻褄が合わない。


「……そウ。水の精霊ヲ束ねる統括精霊ノ一人」


今の言葉から察するに、精霊を束ねる「統括精霊」は何人かいて、アクアマリンはその一人なのだろうか。

あれやこれやと考えていると、また読んだのかアクアマリンが横から口を挟んだ。



「統括精霊、一つノ属性に四人ずツ……」


「なるほど……ってまた読んだね!?」


「……駄目?」


「またロリ!?」



「あのぉ……注文ありますぅ? 無いと思うけどぉ」



再来した茶番をアクアマリンと仲良く演じていると、「何こいつら」的な雰囲気が醸し出された声が面倒そうに茶番を断ち切る。

慌てて振り向いた先には先ほどの店員の姿。相変わらず諦めてる。



「い」


「ですよねぇ」



諦めるの早っ。まだ「い」しか言ってないぞ、僕……確かに「いえ、結構です」って言おうとしたけど。あまりにもな店員の態度に苦笑いしながら、改めてアクアマリンに向き直る。

今日は何度、茶番と現実を行き来すれば良いのか知りたいものだ。



「でまぁ……心を読むのはほどほどに。それで良いね?」



かなり強引な締めをした自覚が無い訳では無いが、流石にこれ以上同じ事を繰り返していると疲れてきてしまう。僕の対応が不満なのか頬を膨らませるアクアマリンだが、「精霊王様が言うナら」と引き下がってくれた。


……良かった精霊王で。



「えぇと……次の質問。アクアマリン、何故僕らを襲撃したんだい?」



僕がそう尋ねた理由はただ単に個人的興味だ。アクアマリンが何故僕らの泊まっていた宿の窓ガラスを大破させて宿に突入してきたのか、何故いきなり襲撃してきたのか……

まあ、襲撃の理由に関してはただ単に「人間が嫌い」という理由でも当てはまるかもしれないが。



「……人間ニ、襲撃さレた。水の精霊、守るたメニ……戦い、人間吹き飛ばした……反動デ、あのボロ屋に吹き飛ンダ」


「ボロ屋!?」



……じゃなくて。



「人間に襲撃された……? どういう事だい?」


僕の素朴な疑問に、アクアマリンはゆるゆると首を振ってから顔を上げた。



泣きそうな、いままでの無表情とは雲泥の差すらある、悲観したような悲しい顔をしていた。


「人間するコと……いつモ、意味不明。我らヲ、「反乱材料」ト罵って、襲撃しタ。沢山の仲間、死んだ……」


「反乱、材料……」



ミワが語っていた両親の死を思い出す。

あの時の光景を鮮明に記憶していた脳が、ミワの言葉に、声に、拒絶の悲鳴をあげるのを抑えながら一つの憶測を捻り出した。



精霊達の反乱。

人間の精霊に対する扱いに耐えきれなくなった精霊達の暴動。

きっとそれだ。


何故アクアマリン達水の精霊を襲撃したかは解らないが、きっと再びの反乱を恐れて統括精霊でもあるアクアマリン達を襲撃したんだろう。

もしかしたら、反乱を起こしたのが水の精霊だったのかもしれない。

でも、でもだからといって……



心の奥底の奥底、はらわたすら透かした場所から沸き上がるこれは、憤怒だろうか。

精霊王としての、精霊を想う怒りだろうか。



「でモ、部下達、我を逃がシた。部下達の想い、無駄にしたくナクて……逃ゲた。けれド、追い付かれ……人間ニ、必死に抵抗しテ……人間吹き飛ばした。そしタら、反動デ」


宿に突入し、人間のミワを見て敵意を抱き襲った……という所だろうか。

今度は読まなかったらしく、僕の心にアクアマリンは反応しなかった。



「精霊王様、居たの気付イた……戦いの最中、精霊王様が魔法使っタ時」



よく跪かなかったな、あの時……というか、その時から気付かれていたのか。

僕は、頭の中でゆっくりと事を整理しながら「そっか」と頷く。



「ありがとう。質問はそれくらいだね」



そう返してから再び事項整理に入ろうとした僕に、「待ってました」と言わんばかりの喜色満面の声が飛び込んでくる。



「やっタ……それナら、トライアスロン……一緒ニ、参加」



あー……

そんな事もあったな、と薄情な事を考えながら、思わず意図しない苦笑が頬をひきつらせる。その表情に気付く様子も無く、アクアマリンは「さぁ……頑張りましょう……」的な表情で僕に迫ってきた。




「うん……頑張ろうね、アクアマリン」



「……うン!」



こうして、ほぼやけくそな僕とやる気満々のアクアマリンは、トライアスロン参加を決定した。

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