変わり者の寮
学校はうんざりするほど広かった。学校内の主な施設を回っただけでも並の人間なら足が棒になるほどだった。その証拠にリョウの顔には疲労感が滲み出でいる。レーヤは魔法が使えない代わりに体力は人一倍鍛えていたのでそんなに疲れてはいなかったが。
「…とまあ大事な所はあらかた回ったかな。これで暫く困ることらないと思うよ。それじゃあ僕らの部屋に行こうか。」
リョウに連れられたところは都心のマンションの様に高くそびえ立った5つの建物の一つだった。しかもマンションと違い玄関ロビーは高級感溢れるホテルの様だ。
「なあ、本当にここで合ってるのか?」
「ん?ここが寮だけど何かおかしい事あった?」
自分が場違いなのではないかと疑いだすレベルだ。
…流石、帝国屈指のエリート校だな。
そんな自分も一様この学園の生徒だという事を棚に上げてレーヤは唸った。
「それでは、ようこそ!僕らのフィフス寮へ!」
そう言われて中へ入るとやはり外から見た通り、とても豪華な内装だった。床は全て白い大理石で埋まっている。二階まで吹き抜けの天井には煌びやかなシャンデリアがかかり、壁は一面全てガラス張りでそこからよく手入れされた日本庭園が見える。
珍しい…日本庭園を採用するとはここの管理人は日本に友好的なのか?
「フィフス、とは5thという事か?」
「そうだな。ファーストは火属性の魔法使い、セカンドは水属性の魔法使い、サードは木属性の魔法使い、フォースは土属性の魔法使いがいる。フィフスはそれ以外の者が集まるんだ。」
「つまり光属性、闇属性、無属性、使えない者という事か。」
「そう。要は変わり者の集団さ。」
自虐的な言葉の割には楽しそうな感じだ。
ポーンという音と共にエレベーターが12階へ着いた。エレベーターの真正面がちょうどレーヤ達の部屋らしかった。
部屋に着いた途端ボフンとリョウは部屋に二つある内の一つベッドにジャンピングダイブを決めた。レーヤは少しムッとなった。
「おい。風呂から上がってからベッドに上がれ。」
「え?」
「ベッドから退けと言ったんだ。」
突然怒り出したレーヤの覇気に負け、リョウはそそくさとベッドから退く。レーヤはささっと持っていた銀のスーツケースからさっとハタキを取り出し簡易的に掃除をした。消臭リファッシュを吹きかけ、最後に布団のメイキングも済ませる。
一連の作業を終えて布団の前で胸を張るレーヤを見て、リョウはため息をついた。
「君は僕の母親か。」
「このくらい当然だろう。」
家事に対して全く引かないつもりのレーヤはしれっとそう返した。
「ところで、きょうの料理は和食にしてもいいか?」
「君はやっぱり僕の母ににているよ…。というか君が作る前提なんだな。」
フィフスに新しく来た少年の変わり者振りに仕方ないかと、フィフスには珍しく常識人のリョウはまたため息をついた。