式の後で
「…い!…起き…!」
レーヤはガクガクと肩を揺さぶられる感覚で本日二度目の微睡みから浮上しつつあった。
「君!起きなさい!」
「…あと、少し…。」
式は終わっていたようで、どうも心優しい方が起こしてくれ…
「10秒以内に起きなかったらぶっ殺します。10…9…腹が立つので3…1…」
「おはようございます!」
レーヤ自身信じられない速度で飛び起きてそのまま椅子から立ち上がった。
危ない、死ぬところだった…!
心優しい方じゃ無かった!
心なしか変な汗が吹き出している。しかし、これで終わりではなかった。
「さーて、人が話してる目の前で居眠りなんぞいい度胸ね。それ相応の覚悟は持ってるでしょうね。」
ぼきぼきと不穏な音を手から鳴らし、威圧感たっぷりに目の前の少女ーシルヴァは言った。大層お怒りのようだ。
「いや、持ってないし!ごめんって!今度美味しいもん作るからさ!約束する!」
慌ててズレかけた帽子を抑えそう叫び、大きく後悔した。
相手は皇族なのに何故こんな事を口走っているのだろう。これではまるで旧知の友達のような弁解ではないか。
普段なら寝起きだとしても、さっきのオルカみたいに自分は恐縮しまくってる筈なのだ。でも何処かでシルヴァにはこの話し方で問題ないと確信している自分がいる。何故、なのか自分でも全くわからない。
シルヴァは少しキョトンとした表情で固まった。お陰でシルヴァがいきなり殺気を引っ込めたので少し拍子抜けする。
「あはははははは!」
そしてシルヴァは突然爆笑し始めた。
「ごめんなさい、何だか私が昔会った人にそっくりで…あははは!」
余りにも爆笑されるので一つ間を置いて釣られて笑ってしまった。
「何だそれ。」
「しかも久し振りに初対面で私を特別扱いしない者に会ったからさ。おまけに食べ物で私を釣りに来る人なんて…ふふふ。」
「いや、俺も学園外だったらシルヴァさまさまだけど…駄目だったかな?」
「いや、いいの。こっちの方がむしろ良いな。肩の力が抜けるからね。」
シルヴァはさっきまで怒っていたのが嘘のように上機嫌になっていた。
「あなたの事気に入った!それに約束は守ってね。今日の夜ご飯は楽しみにしてる。」
ビシッと指を突き刺すとシルヴァは立ち去ろうとした。が、振り返って思い出した事を告げた。
「さっきの事は美味しかったらチャラね。不味かったら即殺す。」
「…了解。」
当面の危機はよく分からないが脱したか。
シルヴァ様……さん?が「問答無用ー!」とか言って斬り掛かる人じゃなくてほんと良かった。
俺よく生きてんな。
ところで
謎のデジャブを感じるのだが……
あれ?何か…ん?
周りを見渡すとその理由は一目瞭然だった。
また、
誰も、
いない。
「あああああああああ!ホームルーム始まってる!やばい!」
この日二回目の全力疾走でもっても遅刻確定なのは辛かった。
ほんとに辛い。