ぼっちは冬休みに愛されない
冬休み!楽しい!嬉しい!けど坂墓は生徒会の仕事があり、学校に行くことに……
心と体にしみるほろにがいコーヒー。本来、甘党の俺ならカフェオレを飲むはずだったが、なぜか微糖にしてしまった。
もう少し砂糖を入れてもいいくらいだ。だが、この苦さが無ければコーヒーとは呼べないのかもしれない。そう考えると、金沢もエロゲをやるから金沢であって、エロゲをやらない金沢は金沢ではないのかもしれない。
だがまあ、俺にはあまり関係のないことだ。金沢が金沢であってもなくても俺の素晴らしい人生にはなんの問題もない。
コーヒーを飲み終えて、カンをゴミ箱に捨てた。
「坂墓ー、伝えたいことがあったのよ」
金沢がゲームショップから出てきて、声を張り上げて言った。
俺もそれに気づき、耳を傾ける。
「なんだ?伝えたいことって、告白?」
冗談交じりの返答をした。だが、たいして重大なことでもないだろう。
「冬休みも、生徒会はあるからねーー!」
俺の脳内では、あるからねー、るからねー、からねー、らねー、ねー、ーーと反響して脳内一周ぐらいしていた。
先ほどは重大なことではないと思っていたが、誤算だ。命に関わるほど重大なことだった……。
えっ、まじヤバい、ぱないわー。冬休みも生徒会?あー、はいはい、生徒会ね、うん。
「じゃ、伝えたから」
そう言い、さっさとゲームショップに戻って行ってしまった。ちなみに俺はショートしている。
冬休み→生徒会→休みじゃない→でも休みだよな→あー、冬休みだ。とループしている。
俺の脳内計算機が導きだした答えは、「つんだ…」だ。つみげーだ、こんなもの。
休みじゃない冬休みなんて、カレーの無いカレーパンみたいなものだ。
カレーの無いカレーパンをただのパンとすると、休みじゃない冬休みはただの冬になるな。
結局、今日買ったゲームカセットは意味をなさないようだ。あー、神がいるならばスクッテクレタマエ。
だが、決まったことをくつがえすほど俺は力を持っていない。この運命を受け入れることしか出来ないのだ。
けどまあ、しゃーないか。そう心に刻み込めばメンタルはどうにかなるな……。メンタルのメタル化は得意なんだよ、俺。
俺は流石に寒くなり、自転車のペダルを漕ぎ始めた。空からは、雪が降り始め、本格的な冬が始まったんだと認識するしかないのだった。
◇◇◇◇
やあ、みんなおはよう!今日は冬休み!でもね、僕は学校に行かなきゃだめなんだ。どうしてか分かるかな?……分かってくれ。
セットしてあった目覚ましがまだ鳴っている。俺の脳内整理も昨日のうちにしておくんだった、まだ脳内が理解できてない。現実を。
しかし現実を理解出来なくても、時間は進む。仕方なく制服に着替え、朝食も休みの日より二時間も早く食べた。
誰もいない家に「いってきます」と言い、玄関から外へ出た。
学校に着いた。登校中に気づいたのは、部活やってる奴らは、冬休みのはずの今日、学校に来ていることだ。
いやしかし、こいつらも友達やら恋人やらとはしゃぎたいだろうに。こんな寒い中登校なんて……ザマア。
まあ、俺もなんですけどね。
心を落ちつかせ、生徒会に向かった。
気持ちは正直のらない。冬休みに仕事ある?って感じだ。
「おーす」
俺は調味料のさしすせそに入ってるような言葉で挨拶をした。なんかすっぱそう。
「坂墓、ちゃんと来たわね、寝坊するかと思ったわ」
金沢もいつも通りのようだ。いつも通り小さい、胸無いようだ。ーー安心。
「坂墓君、来てくれて安心したよ、なんか凄いめんどくさいと思って、インフルエンザにかかったとか言って休むかと思ってたよ」
奈津は全てを理解してそうな顔で言ってきた。くそ!なぜ俺のプランBを知っているんだ⁉︎
「坂墓君、悪いわね、冬休みなのに」
瑠美は申し訳なさそうに言った。どうやら俺が冬休みに愛着があるのを理解してくれているらしい。
「気にすんな、どうせ一人で一日中ゲームやってるだけだからな」
席に座り、今日の仕事、もとい雑務をこなすのだった。
今回の話を読んでいただきありがとうございました。冬休みに入り、休みなのに仕事をする生徒会の日常を書いていけたらいいなと思っています。




