ぼっちと職場体験は関係無い
ついにラジオ収録が始まる!坂墓のぼっち解答で空気が⁉︎
昼飯を食べ終わり、俺は一人本をよんでいた。木場達はわいわいお喋りしている。
俺はペラペラ本のページをめくりながら、聞こえてくる話し声に迷惑していた。
木場君すごい!とか木場君かっこいい!など中身の無い会話をしている。
なんなの?君たち太鼓持ってるの?
今日はイヤホンがないので我慢するしか無かった。…イヤー、ホントミスった。訳してイヤホン。
寒いダジャレで寒がっていると、ドアから清水さんが入ってきた。
「では、収録を始めましょうか」
そう言って現場に緊張感が広まった。清水さんの後ろにどうやら一緒にラジオに出演する人のようだ。
「初めまして、根元です。今日はよろしく」
そう言ってきたので俺たちは「よろしくお願いします」と返事をした。
流れの説明を受けて、なぜか俺は足がガクガク震えていた。静まれ!足!
緊張をほぐして、ホッと一息をついた。どうやらもうすぐ始まるらしい。
清水さんがカウントダウンをする。
「3.2.1.始め!」
その合図を聞いてから、根元さんが喋り始めた。
「どうも!サーモンラジオが今日も始まりました。今日は職場体験で来てくれた特別ゲストが来ています。どうぞ」
自己紹介がこっちに振られる。
「金谷高校から来ました木場と」
「山野です」
「さ、坂墓です」
自己紹介を終わると早速話題を振られた。
「君たちは学校生活で何か思い出に残ったことはある?」
や…やばいぞ。これは思い出が無くて答えられないパティーンだ。
「そうですねー、今年の体育祭で優勝したことですかね」
「おー、体育祭かー。いい思い出だね」
さすが木場だ。そつなくこなす。
てか俺のクラス優勝したの?知らんかった。
次は山野が喋り始める。
「えーと、部活の大会ですかね?テニスの大会で優勝できました」
「おおー、すごいね。じゃあ次どうぞ」
どうでもいい山野の話が終わると、俺に話が振られる。
だ、だだだだだだだ大ピーンチ!ここで恥をかくわけにはいかない。
「そ、そうですね。僕も体育祭のことですかね」
よし、同じ話題で話を終わらす。強制会話終了を発動した。
だがだめだった。
「へー、どんな思い出?」
詳しく聞かれて、つい本音が出てしまう。
「せ、先生と組み体操したことですかね?」
とっさに出たのがこんなことだ。一瞬、部屋が固まった。
どう返したらいいか分からないらしく、すごい適当な返事が返って来た。
「そ、それはすごい思い出だねー」
おい、すごいってなんだよ!どうすごいの?ねえ!
どうやらこの空気をどうにかしたいらしく、すぐに別の話題が振られる。
「じ、じゃあ木場君は高校生活のどんなところが楽しい?」
すぐさま木場に話を振ったのはさすがと言っていい。この状況でも、木場の空気支配があれば大丈夫だろう。
空気を支配するとかマジかっけー!
「やっぱり友達といろいろな行事をすることが楽しいですね」
この解答は「もし高校生活について質問されたら⁉︎」のテキストの解答例だな。
完璧すぎる解答に、根元さんもほっとしている。
「じゃあ山野さんは?」
「私はやっぱり恋をしてる時ですかね」
まるで恋する乙女のような振る舞いをする。…乙
俺が心でそう唱えていると、
「じゃあ…さ、坂墓君は?」
どうやらまだこりないらしく、もう一回俺に話が振られてきた。
話が振られるとは思わず、思ったことをつい口にする。
「ひ、一人で本を読んでいる時ですかね…?」
俺の生態系に誰も反応してくれず、根元さんなんかもう黙っちゃっている。
どうやら俺の能力は空気破壊らしい。
更新しました(白目




