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さよならの合図 ~また…明日ね~

「今日はね…」

帰りの電車の中。私は彼と隣に座って今日会った事を話している。

「そうなんだ。大変だったね。…で、俺の方は」

私の話が終わると、今度は彼が今日あった事を話してくれる。

文系と理系と分かれているから、互いのクラスの話はとても

新鮮で、自分の知らない彼を知ることができる。

それは逆に彼と同じクラスにいる女の子に対して焼きもちを焼くことに

なってしまうのだが…

「こらっ、また焼きもち焼いただろ?」

「…ごめんなさい」

私は俯いてしまう。だって…素敵な人なんだもの。

私の横にいることが未だに信じられない。彼と付き合い始めてもうすぐ1年。

それでも…まだ私は慣れていない。



「そんな事を言うと…俺だって図書委員に焼きもち焼いているんだぜ?」

文系クラスに私はいるけれども、私のいるクラスは女子クラス。

だから男子と話すのは図書委員の時位しかない。

「そ…そうかな?」

「そうだよ。お前がかわいいんだから」

「そんなことないよ」

「俺がかわいいって言うんだからかわいいの」

ぶっきら棒に彼がいうと、頭に軽くゲンコツが降ってきた。

「うーん、痛い」

「お仕置きです。もっとされたいか?」

「いいえ。丁重にお断りします」

毎日似たようなやり取りを続けている。

マンネリになりそうな光景かもしれないけど、それが私には楽しい。



「そういえば、こないだの模試も結果はどうだった?」

同じクラスではないけれども、同じ大学なら受けられるかもということで

第一志望の大学は二人で同じ大学を受ける予定だ。

「私…なんとかなりそう」

「俺も同じだな。一緒に行けそうだな」

二人で顔を見合わせて微笑みあう。春になったら、4年間一緒に通える。

まだ実現していないけれどもつい嬉しくなる。

「でも…油断しないで頑張ろうな」

「そうだったね。明日は…同じセンター対策があるね」

「そうだな。明日も隣を用意しておくよ」

「ありがとね。よろしくお願いします」

私は彼の気遣いに感謝する。彼の教室からの方が授業の教室に近いから。

いつも、適度によい席がキープされている。

もちろん、ちゃんと授業を受けるから前の方の席だ。

「そういえば、センター対策の宿題終わったか?」

「うん、分からないの?テキストある?」

私は英文科希望なので然程難しくはない。けれども彼はちょっと手こずっている。

「ここのところなんだけども…」

「そこは…構文になっているんだよ」

私は構文になっている個所にシャープペンでラインを引いていく。

「そうか。答えが分かったよ。ありがとうな。後は授業前に聞くよ」

電車は私が下りる前の駅に着いた。あと2分で今日のデートは終わる。

かなり寂しい。そう思っているのは私だけなんだろうな。

私は俯いて床を見ていていた。



電車がゆっくりと私が下りる駅に着いた。私と彼は立ちあがってドアに近付く。

「じゃあ…また…明日な」

「うん」

そう言って、彼は私のおでこに軽くキスを落とす。サヨナラの合図。

キスが終わるとドアが開いた。私はもう少し一緒にいたいと思ってた。

受験生の今はそんなことを言えない。ローカル線のこの電車は1時間に1本しか

ないのだから。彼に迷惑をかけれない。

「ちょっと…いい?」

彼に少しだけ屈んで貰う。私は掠めるように唇を合わせた。

「また…明日ね」

そう言って私はホームに下りた。途端にドアが閉まった。

ゆっくりと電車は進みだす。彼は顔を真っ赤にしたまま私を見つめている。

そんな彼に私は小さく手を振ってこたえた。



今日は私の方が焼きもちを焼いていたみたいだ。

だって、正門の前で待っていたらクラスメートの女の子といい雰囲気だったんだもの。

彼は気付いていないみたいだから、敢えて聞かなかったけどね。

彼は優しいから…彼に好意を持っている人がいると思う。

だから…たまには私から彼にマーキングしておかないと。

こんなことを言ったら…また私はお仕置きかしら?それでもいいや。

私はニヤリと笑って改札口に歩き出した。



また…明日ね…私のマイダーリン

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