変わってしまった君
いつもと変わらない朝、
私はいつもと変わらない目覚ましの音を聞いて目を覚ました。
ピピピピ…ピピピピ…
「…んーっ」
午前7時、
私、佐伯優奈起床。
「ふあぁぁぁぁ…」
私は家から徒歩30分くらいにある市立高校に通っている。
そして3:7の割合で男子率が高い。
女の子にはうってつけな高校だ。
まぁ、私はそんなの関係ないけど。
私が家から近い高校を選んだのは
家から近いからとか、男が沢山いるからではない。
理由はただ一つ…
私の幼なじみ、帝雅空
奴と同じ高校に通うためだ。
空は全く気づいていないみたいだけど(まぁ言ってないしね)。
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中3の二学期…
秋が終わり、冬に差し掛かろうとしていた。
「はぁ…」
「あんたさっきっからため息ばっかついてるよ?」
私と友達の神田和花は、高校受験のことで頭がいっぱい?だった。
和花とは中学入学当初から仲が良い。
入学当初、席が前後だった私達は、すぐに仲良くなった。
今では私の一番の親友だ。
だから和花は、私がアイツのことを好きなことも知っている。
「どーせまた帝雅のことでも考えてたんでしょ?」
「なっ!・・・別にそんなんじゃないし」
「もうちょっと素直になりなさいよねー、今だに高校も決めないで」
「・・・・・っ」
「帝雅に聞けばいいじゃん。高校何処いくの?って」
「そんな簡単に言わないでよ」
「あんたらいつまでそんな関係でいるつもり?」
私だってそんなことは分かってる。
いつまでもこのままではいけないって。
でも・・・
変わってしまった君に、
どう言葉を伝えればいいか分からないんだよ・・・?
ねぇ・・・
どうして君はそんなにも変わってしまったの?
誰が君をそうさせたの?
分からないんだよ・・・
考えても考えても、
見つからない答えに、
見つからない想いに、
どうすることもできないのかな?
そんなの、
そんなのっ、、、
「・・・・・な!」
「・・・ゆうな!!」
─────ハッ!!
「アハハ・・・ごめん、ごめん、何?」
「何じゃないでしょ・・・」
「優菜ってたま~にフリーズするよね?」
「え?そうかな?そんなこと無いと思うけど」
「自覚なしかい・・・」
「・・・?」
「まぁ何でもいいけど、さっさと高校決めなよ?」
「・・・分かってる」
私達は、いつもそんな話しで休み時間は持ちきりだった。
その日の帰りは珍しく一人だった。
いつもは和花と一緒だけど、用事があるからと言って先に帰ってしまったからだ。
だからと言って寂しい訳では無い。
わりと一人でいる時間は好きだ。
最近は特にそう思う。
高校のこととか、空のこととか。
とにかく今の私には、
色々と考える時間が必要だった。
「・・・はぁ。」
乾いた空気に思わずため息が漏れる。
自分でも自覚する。
最近の私はため息が異常に多い。
そんなことを考えながらいつもと同じ帰り道を歩いていた。
「・・・・・・あ。」
思わず声が溢れた・・・。
・・・空?
空が一人なんて珍しいな。
空は無愛想になってしまったけれど、必ずいつも誰かは隣にいる。
これは、
・・・・・偶然?
それとも、
・・・・・必然?
私は一人で、空も一人。
いやいや、たまたまだよ!
そんな考えを振り払うように、左右に首を振った。
・・・・・・・どうしよう。
そんな時、
ある想いが頭を過った。
・・・あ・・・れ・・・?
私・・・
どうやって空に話し掛けていたんだっけ・・・?
最後に話したのは
・・・・・いつ?
半年前?一年前?
もっとずっと昔?
あぁ・・・
忘れるくらい前か・・・。
空は目の前にいるのに
どう話し掛けたらいいのかわからない
そんなことを考えていたら
「・・・ハハッ」
乾いた空に思わず声が漏れる。
空が振り向く
分からないけど
涙が溢れた
空が私を見てくれている
ただそれだけなのに。
「・・・ゆうな?」
空は私が泣いているのに気づき少し驚いた表情をしている。
何年振りに名前を呼ばれただろうか・・・
名前を呼ばれた瞬間
沢山の涙が頬を伝う
空が心配したように、私の近くまできて顔を覗き込んできた。
「・・・どした?」
「・・・ヒック」
どうした?
・・・全部全部空のせいじゃんか
空が変わってしまったからじゃんか
・・・・そうだよ・・・空のせいだ。
「・・・ヒック」
「・・・黙ってたらわかんねぇよ」
「・・ゥック・・・何でもなぃ」
「はぁ?」
空は呆れたように顔を歪ませた。
「泣いてんのに、何でもねぇ訳ねーだろ」
「泣いてないし」
そう・・・これは、私なりの強がり
「・・・あっそ。じゃ、俺先行くから」
そう言って空は背中を向けて歩き出した。
私は一体何を期待したのだろう・・・
空にとって私は
他の女の子と変わらないんだ・・・
幼なじみなんて言葉だけ、
何の意味もない言葉。
空が一歩歩くたびに私との距離が遠く離れていく、
背中が小さくなっていく、
私は空に
声を掛けられただけで
私を見てくれただけで
こんなにも胸が締め付けられて苦しいのに・・・
君は何も感じないの?
・・・・・遠いよ。
「・・・・・・・空っ!!!」
考える前に叫んでいた、
後悔はしたくないと思った、
遠くにある背中が私の声に反応してピタリと止まる。
空は振り返って私を見つめる。
呼び止めたのはいいけど何て言えばいいのか分からない。
鼓動が異常なくらいに速い。
頭が真っ白で言葉がでてこない。
静かで長い沈黙が流れる。