何人目
こいつの中には100を超える人格がある
俺は刑事。連続殺人事件の容疑者を取り調べていたところだ。
今回は中々手のかかる奴らだ。
なぜ複数表現にしたかって?それは容疑者のこいつ、仮にAとしよう。Aは多重人格者なのだ。
それもただの多重人格者じゃないようだ。この5日間、ほかの人格を呼び出し続けているもののキリがない。演技だろうと思って色々試したが、どうやら本当に違う人格らしい。
多重人格は二つか多くて四つだと思っていた。今のところAの人格は600を超えた。あまりに前例がない。頭の中にタワマンでもあるのか。
出てくる人格全てが、久しぶりにシャバにでることができた、と言っている。主導権のことをシャバって呼んでるのか?
事件当時の人格を呼び出せないかって?それは最初にそうしたさ。でも、あまりにも多い人格ゆえ、人格同士が疎遠らしい。
東京の希薄な人間関係かとツッコミたくなった。
こうなったらしらみ潰しに行くしかない。そうして今に至るわけだ。今は後輩に任せてタバコ休憩。連日の取り調べでガタがきているが、Aのことに興味が無いわけじゃない。
表向きは正義の為、本音は子供じみた好奇心だ。
取り調べ室に戻った。人格の数は700を超えたようだ。ここまで全て日本語なのがせめてもの救いだ。
俺はまた名前を尋ねた。何百回と繰り返しているのですんなり言葉が出てくる。
するとAはAと答えた。当たり前のように見えるかもしれないが、俺はその時雷に打たれたような気分になったね。
ようやっと出会えたAだ、このチャンスを逃すてはない。質問攻めにしてやろう。
その時だった。
「やっと番が回ってきた」
Aはそう言った。なんのことだか分からなかった。
「俺は多重人格じゃない、これは呪いだ。俺の前にいた奴らの人格は、いまからお前に乗り移る。もちろん、俺の人格も一緒だ。だからお前は、俺を捕まえることはできない。あいつを殺した時、人格たちが俺に乗り移りやがった。災難だと思ったが、体を乗り移っての旅も悪くないかもな。」
何を言っているのかわからなかった。ということは次は俺に乗り移ろうとしている?
「そうだ、最後に教えてやろう。お前で、778人目だ。」
ここで目の前が真っ暗になった。
…で、今に至るってわけだ。
いやぁ〜久しぶりのシャバだ。
改めて悪いな後輩。色々迷惑かけて。
Aの体はどうした?病院?植物人間状態か、やっぱりな。もう戻らないよAは。俺の中にいるから。いや、もう違うな。
最後に一つだけ。
お前で779人目だ。




