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妖怪のいない異世界で百鬼夜行をどうすんだ? ――描くたび俺が削れる妖怪ブック  作者: 雪ノ瞬キ


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34/35

34話

 夜域の森はいつになく明るい。

 月光が勝手に俺を照らす。


 勝手に、じゃねぇな。

 俺に合わせてる。

 明るさが変わる。

 影の濃さが変わる。


 夜域が、

 俺を中心に回っているみたいだ。


 ……違う。


 回ってるんじゃない。

 “寄ってきてる”。


 俺の状態に、

 引っ張られている。

 

 ――七。


 その意味が、

 少しだけ分かる気がした。


 ああ、

 なんだかな。

 俺はスターじゃねぇよ。

 裏方一筋だな。


 それにしたって

 ひりつく空気が今は心地いいぜ。


 俺と白の戦い。

 まだまだ倒れる訳にはいかねぇんだよ。


 アイツらの生きる場所がここなんだ。

 だから、俺は倒れてやらねぇ。

 お前が引くまではな。


 俺と白の衝突後。


 爆風。


 霧が吹き飛ぶ。


 森が抉れる。


 遅れて、

 空気が戻る。


 戻りきらない。


 歪んだまま、

 形を保っている。


 音が遅れる。


 光がズレる。


 空間そのものが、

 元に戻るのを拒んでいる。


 ……やりすぎたか?


 いや、

 まだ足りねぇ。


 空中。


 俺と白が距離を取る。


 俺は、

 犬神装着状態。


 息を必死に吸い、荒い作業のように吐き出す。


 体に異変。

 クソついにきたか。


 味覚。

 おかしい、

 消えている。


 血の味が

 分からない。


 痛み。

 あるはずだ。

 なのに

 遅れてくる。


 指先。

 何故かピタリとやんだ

 震えない。


 力を込めても、

 反応が薄い。


 握っているはずの拳が、

 遠い。


 腕が、

 自分のものじゃないみたいだ。


 ……切り離されてる。


 感覚が、

 一つずつ消えていく。


 削れている。

 確実に。


 戻るかどうかは、

 分からねぇ。



◇拠点


 その頃雪たちは


 雪(遠く)

「あの様子は」

「……削れが進んでいます」


 凛

「お頭、やめてくれ!」

「雪姉、なんとかならない?」


 雪

 首を振る。

「止まりません」

「零さまが望んだこと。

そして零さまが敗北したら……

私たちの生きる場所を失うということ」


 カワも焔も、そして他の妖怪たちも言葉を失う。

 ただ、水盤を息を殺して見つめていた。


 誰も声を出さない。

 出せない。

 止める術がない。


 割って入ることもできない。

 見ているだけ。

 それしかできない。


 ……違う。


 見届けるしかない。


 あれはもう、

 誰の戦いでもない。


 零だけの、

 領域の話だ。



◇夜域


 犬神の声。


 ああ、なんなんだ。

 俺は今、俺と作戦会議中なんだよ。


 低い。

「噛み砕け」

「主ならば」

「すべてを」

「喰らえ」


 奥歯に力を入れた後言う。

「黙れ」


 今は、狂ってる場合じゃねぇんだよ。


 犬神

「主か」

「器か」


 両方ともさっき言っただろうが。

 めんどうなヤツだ。


 腹の底から伝える。

 なら、今度はどちらでもねえ。

「俺が是だ」


 返事がない。


 だが、

 静かになる。


 抑え込んだんじゃない。


 受け入れた。


 境界が、

 一段薄くなる。


 ……近い。


 もう少しで、

 混ざる。


 どこまでが俺で、

 どこからが犬神か。


 分からなくなるのも、


 時間の問題だ。


 黒い呪印

 妖呪王権はまだ持続している。


 クソまだだ。広がれ。

 妖呪領域を再拡張。


 夜域が共鳴してきやがった。

 遅せぇんだよ。

 まあ、いいけどな。


 白いやつもやりやがる。

 聖域展開。


 空中に浮かび上がるのは、白銀だ。

 輝く円環は、巨大聖印か。


 空間固定。


 しかし


 黒い紋様が

 侵食。

 白

 を

 黒に変えた。


 感触がある。

 初めてだ。


 “通った”。


 弾かれていたものが、

 届いた。


 食い込んだ。


 確かに、

 あいつに触れた。


 ……だが、

 浅い。


 致命には遠い。


 それでも、

 ゼロじゃない。


 ここからだ。


 白は、目を細める。

「……侵食」


 俺はガムシャラだ。

 突っ込む。


 爆速踏み込み。

 鍵爪で穿つ。


 白

 聖印刃。


 交差。


 一瞬。

 白の肩。

 黒い刻印。

 血がしたたる。


 白

 初めて

 止まる

 ほんの一瞬。


 止まった理由が、

 分からない。


 ……読めない。


 だが、

 一瞬でも止まった。


 それだけで、

 価値はある。



◇拠点


 凛

「……入った」


 焔

「当たった」


 雪

 静かに言う。

「初めてです」



◇森上空


 白

 肩を見る。


 黒い刻印。

 消えない。


 白

 低く言う。

「呪印」


 少しの間。


「主の証か」


 俺は

 全身黒い雷。


 竜油

 妖呪

 犬神

 三重強化。


 体が軋む。

 骨が鳴る。


 内側から軋む。

 

 支えきれていない。

 

 出力に、

 器が追いついていない。


 押し広げられる。

 削られる。


 このまま続ければ、

 確実に壊れる。


 ……それでも、

 止める理由がねぇ。


 犬神

「喰え」

「壊せ」

「王ならば」


「うるせぇ」


 俺は再び踏み込む。

 黒雷。


 空間が裂ける。


 白

 両腕を広げる。

 最大の聖域。

 巨大聖印。


 夜域が歪む。


 白

「ならば」

「測ろう」


 俺は受けて立つ。

「来い」


 引けない。


 ここで止まれば、

 全部終わる。


 森も、

 あいつらも、

 全部持っていかれる。


 だから、

 ここで決める。


 削れてもいい。

 残らなくてもいい。


 勝てば、

 それでいい。


 俺は激しく衝突。


 黒雷

 vs

 聖光


 爆心。


 衝撃波。


 森が抉れる。


 地面は陥没。

 霧は吹き飛ぶ。


 爆煙。

 静寂。


 煙の中。


 二つの影。

 まだ――

 立っている。


 崩れない。


 姿勢も、

 呼吸も、

 乱れていない。


 肩の刻印だけが、

 変化の証だ。


 ……あれだけか?


 こっちは、

 削れている。


 あいつは、

 変わっていない。


 ――上がある。


 音がない。


 風も、

 霧も、

 止まっている。


 世界が、

 結果を待っている。


 どちらが、

 残るか。


 その一瞬だけ、

 すべてが静止する。


 ……次で、

 決まる。


 時間が伸びる。


 一瞬が、

 やけに長い。


 呼吸一つに、

 やけに間がある。


 ……遅い。


 いや、

 周りが遅いんじゃない。


 俺が、

 速くなりすぎてる。


 世界とのズレが、

 広がっている。

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